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第5話

「幼馴染の墓に供えてやりたいと思ったんです」  墓ということは既にカルセドの幼馴染はこの世を去っているのだろう。  落ち着いた言葉遣いに、落ち着いた青灰色の髪と瞳をしたカルセドだが、そこそこ年をとっていても、精々、20代前後という年齢だ。そんな彼の幼馴染も同じくらいの年ならあまりにも短い生涯だとベリルトは思った。 「幼馴染はシラーと言って、アールヴの研究をしたいと常々、沢山の本を読んでました。私も彼の体調が良い時はアールヴの話を聞いていたものです」 「……」  在りし日の幼馴染の様子を淡々と話すカルセドに、ベリルトは黙った。  そして、カルセドも黙り、小屋にはしんとした静寂が訪れる。  もうカルセドの怪我もほぼ完治している。どの道、カルセドは小屋を去り、ベリルトはまた1人でこの小屋で暮らすことになる。 「君もアールヴについて知っているのか?」 「え?」  先程、カルセドは幼馴染のシラーにアールヴの話をよくしていたと言っていた。  ベリルトはさらに、言葉を続ける。 「君はアールヴをどんな存在だと思っている?」  それは真面目な問いだった。  別に、今までのベリルトの接し方が不真面目だった訳ではない。だが、飄々とした言動を繰り返していた彼を思い返すと、ちぐはぐとした感覚がカルセドを襲う。 「一般的にはリョースとディクの2種類のアールヴがいるらしいですが、リョースアールヴは美しい容姿に気高い精神を持っていると言いますね」  美しい容姿は魅了の一種だと書かれている書物もあったが、人間とさほど変わらない容姿をしていて、人間とも友好を結べる種族だともシラーは話してくれたとカルセドは続ける。 「ただ、私はそうであるとも、そうではないとも言えると思います」 「それは……見たことがないから? アールヴの霊薬と同じように」 「ええ、それに人間だって善人もいれば、悪人もいるでしょうし、容姿の美醜さえも違うでしょう? 同じ人間という種族だったとしても」  カルセドはそこまで言うと、明日にはこの小屋を出て行く予定で、アールヴを探す予定だと言う。 「本当にベリルトさんには良くしていただいて、嬉しかったです。ありがとうございました」  ベリルトと過ごす日々は優しく穏やかで離れがたいと笑い、美しく頭を下げるカルセド。  すると、カルセドの予定を黙って聞いていたベリルトは口を開いた。 「なぁ、もし、目の前のヤツが人間じゃないって言ったらどうだ?」

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