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第6話(R15)

「もし、ベリルト・レリプットなんて人間なんていなくて、それがヴェスヴィア森林地帯に住むアールヴだったら?」  ベリルトが自身のことを「それ」と称すと、カルセドにそんな問いをしながら、ベリルトを緑色の光が包む。  すると、小屋の中はみるみるうちに何千、何万もの草木が生え、緑が犇く住処になっていく。だが、小屋が潰れたり、自然に飲み込まれた訳ではないのか、最低限の生活感は残しつつ、色とりどりの魔法薬の瓶や木の杖がひとりでに中身をかき混ぜている大きな釜が現れる。 そして、ベリルト自身も癖のある茶色の短い髪が膝まで長い緑色の髪になり、さらりと伸びている。おまけに、ベリルトの目は若草色から黄金色に輝き、耳も横に尖っていた。 「ベリルト……さん?」  ベリルト・レリプットは偽薬ならぬ偽名だった訳で、その名前で呼ぶのに戸惑うが、カルセドとしてはベリルトと呼ぶしかない。 「我の名はヴェリル。ヴェスヴィアに住まうアールヴの管理者」 「管理者……」  管理者というか、森番に近いか……とベリルト・レリプット、いや、ヴェリルは答える。ヴェリルはアールヴではあるものの、アールヴを嫌い、人間も嫌い、ヴェスヴィア森林地帯に1人、住んでいるという。  ただ、だとすると、カルセドはあることに気がついた。 「どうして、私をこの小屋に置いてくれたのですか?」  カルセドは無意識にヴェリルから距離をとると、そう疑問を口にする。  すると、ヴェリルはカルセドをベッドへ押し倒して、カルセドの胸元に指を滑らせた。 「それはお前と初めて会った時に言っただろ? そういう気分だったのだと」 「ぅ、っ……」  カルセドはヴェリルの指に翻弄されるように小さく声を漏らす。乱暴な愛撫ではないが、ねっとりとした手つきで、カルセドを追い詰めていく。 「なぁ、お前はまだ霊薬(エリクシア)……アールヴの霊薬が欲しいか?」 「ぇ、うっ……」  ヴェリルの指はいつの間にか、カルセドの胸元から形の良い喉仏や細い顎に迫り、捕らえていた。  カルセドはヴェリルの目を見ると、まるで、純度が高いエメラルドに自分が映ったようで、すっかりヴェリルに魅入られていていた。 「私は……欲しい。アールヴの、霊薬が……エリクシアが……」 「そうだ、嘘はつかない方が良い。人間に本心を語らせることなんて我には造作もない」

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