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第2話

ガロは器に入れられたひまわりの種を、顔を突っ込み、夢中で食べ、隣にある水も、顔をつけ、舌を出してぺろぺろ飲んだ。 「....余程、腹、空かせてたんだな」 嫁が見かけによらず、なかなかな大食らいで飼われていた頃からも、ひもじい思いをしてきたこと、人間になり、3日食べてないことを早口でガロは説明した。 「....にしても、食べ方や飲み方、間違ってるぞ」 ガロが器から顔を上げた。 「水はこう、右手でグラスを持って飲め。ひまわりの種はこう指を使って手で食え」 身振り手振り、青年が教える。 些か、間違っているが。 「なるほど」 ガロは指でひまわりの種を摘み、口に放り込んだ。 隣の青年も同じく。 「名前、なんて言うんですか?」 「....聞くのか、それを」 青年の顔が強ばった。 「名前がわからないと呼びようがないので」 しばらく、間を置いた後、青年は呟いた。 「....まろん」 ガロが目を丸くした。 「見た目によらず、可愛らしい名前ですね」 「ば、馬鹿にするなよ、勝手に飼い主が付けたんだ。で、お前は?」 「馬鹿にしてはいませんが....僕の名前はガロです」 今度はあどけないガロをまろんは目を丸くし、凝視した。 「....ガロ?見た目によらず、厳つい名前だな」 「でも、どうして、まろんさんは人間に?やっぱり罰ですか?」 「いや、俺は人間に興味があったから。人間になったら、どんな景色かな、とかさ。で、うさぎの神様に頼んだ」 そう言うと、まろんは正面を向いたまま、ひまわりの種を放り込んだ。

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