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気持ち悪いですよね
久しぶりに先輩と飲みに出た日。
僕は最近の不満を漏らしていた。
「もうなんなんですかね。
みんな、ちょっと見た目が変わっただけで、急に態度変えてきて」
「おまえ、ちょっと飲み過ぎじゃないか」
珍しく止める先輩を無視してぐいっと焼酎を煽る。
確かに今日は少し飲み過ぎかもしれない。
でも、飲まずにはいられない。
「僕はずっと前から先輩が好きだっていうのに」
「……深谷?」
先輩の声に、我に返った。
一気に酔いが醒めていく。
僕はいま、一体。
「忘れてください、いま云ったこと」
「忘れていいのか?」
「え?」
思わずまじまと先輩の顔を見つめてしまう。
先輩も、眼鏡の向こうから真剣に僕を見てた。
「でも、気持ち悪いですよね、男が好きとか」
「まあな」
うつむいた視線の先、酔ってるせいか世界がぐるぐる回ってる気がした。
「正直、そういうのは理解できないと思ってた。
でも、おまえになんやかんや世話を焼かれるのは好きだ」
「意味わかんないですよ、それ」
ぼりぼりと困ったように先輩はあたまを掻いている。
お陰で、せっかく朝セットした髪が崩れていく。
「俺、たぶん深谷が好きなんだと思う」
「多分ってなんですか」
僕が苦笑いすると、先輩も同じように笑った。
「なんていうか、おまえに一生、世話焼かれたい」
「まるで、プロポーズみたいですよ」
「悪いか」
酒で赤くなっている顔をさらに赤くして、すっかり温くなったビールを先輩は口に運んだ。
「じゃあ、これからもずっと僕が、先輩のお世話をしてもいいですか?」
「ああ、そうなるだろ。
結婚、したら」
照れを誤魔化すかのように怒って残りのビールを一気に煽った先輩に、僕は限界を迎えそうだった。
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