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ぼくらのふゆ(3)

数日後の放課後のこと、因があの連中に呼び出されたことを聞いて、僕は急いで音楽準備室に向かった。 準備室には鍵がかかっていたので、隣の教室から入って、ベランダの柵を乗り越えて、窓から忍び込んだ。 そして、ヤツらの死角から、そっと様子を伺った。 「…」 「なんでちゃんと聞き出してこなかったのかなー」 「よっぽど痛い目に遭いたいんだね」 ヤツらに囲まれ、因は既に2〜3発殴られたんだろうか、顔が赤く腫れていた。 「何をされても、僕は知らない。僕は何もしない…」 「なにい?」 そういう事だったのか… こいつら、因まで巻き込んで… 僕の中に、ヤツらへの怒りが込み上げた。 浅岡が、因の頭を持ち上げて、右手を思い切り振り上げた。 「待て!」 僕は思わず躍り出た。 一斉にヤツらが振り返った。 「あんたら、まだこんな事やってたのか…」 浅岡が、ニヤっと笑った。 「こーれはまた、ご本人のお出ましとは…」 「因を離せ。因には何も関係ない」 「こいつはね、ちゃんと仕事をしてこなかったんだ。ちょっとくらい痛い思いをするのは当然だと思うんだよね」 「仕事って、何?」 「はははっ…滝崎くんに、倉田くんとの交友関係の悩みを聞き出してきてくれるはずだったんだけどね、残念ながらやってきてくれなかった」 因は黙って顔を背けていた。 僕は、思わず言ってしまった。 「…言えよ、因、言っていいよ」 「…郁…」 「君はちゃんと聞き出したじゃん。何で言わないんだよ」 「郁!…だって…」 「…いいんだよ、言っちゃえよ」 「へえーこれはビックリだ。美しき友情ってやつ?」 浅岡は笑いながら、僕の方へにじり寄ってきた。 「滝崎、お前は幸せ者だなぁ、身体を張って守ってくれるお友達がたくさんいて」 僕は浅岡をの目を睨みつけた。 「…因を離せよ」 「まだ離せないなー だって、知ってんなら喋ってもらわなきゃ、なあ」 「嫌だ!」 因が即答した。 因を押さえていたヤツが、また右手を振り上げたのを見て、僕は、思わず叫んでしまった。 「…僕が喋る」 「えっ?」 「…それで、いいんだろ?」 「そりゃあ、俺らとしては、ご本人から聞いた方がよっぽど都合がいいけどな」 浅岡は、僕の目の前に顔を近づけて、囁くように言った。 「…倉田くんと、何があったの?」 「郁…」 因は不安そうな顔で僕を見ていた。 「要は、僕がなんで冬樹を避けてるかって話をすればいいんだろ…?」 僕の身体は、若干こわばってきた。 「そーいうこと」 「…」 しばらくの沈黙のあと、僕は堅い口を、少しずつ開いた。 「…僕と冬樹は…両想いでつき合ってた…けど」 は? みたいな感じで、浅岡の表情が変わった。 「僕が冬樹を避けてるのは…」 言いながら…やっぱり僕の身体は、僕の意思に関係なく、ガタガタと震えだしてしまった。 「…夏休みに、他のヤツに犯られたから…」 ついに言ってしまった… 浅岡たちは、あまりに突拍子な話に、しばらくは理解に苦しんでいるように見えた。 「わかった? これでいいんだろ、因を離せ」 しばらく黙って考えていた浅岡が、ニヤリと笑いながら言った。 「そうか、こいつが女だと思えばいいんだな。こいつと倉田がつき合っていて…で、こいつが他の男にレイプされたっていうなら、そりゃあ倉田に合わせる顔がないってことだな」 浅岡の、単純明解な解説が… 現実として更に僕の心に突き刺さった。 「しかも倉田は知らないのか…」 他のヤツらも、だんだん事態が飲み込めてきたようだった。 僕の震えは止まらなかった。そして怖くなった。 勢いとは言え、喋ってしまったことを、後悔した。 「早く因を離せ!」 浅岡が合図をした。 因を押さえていたヤツが、手を離した。 「…郁…」 「早く、行って、因…」 因は泣きそうな顔で、部屋を飛び出して行った。 「あいつ、倉田んとこに行くんじゃん?」 「いいさ」 「むしろ倉田には、ここに来てもらわないと困る」 言いながら、浅岡は、じっと僕を見据えた。 「この話、倉田にバラすだけでも十分だけど…」 浅岡のその目が…だんだんと、僕が最も恐れる目つきに変わってきた。 「こいつを犯っちやえば、もっと効果的なわけだ」 「で、でも浅岡、こいつ男だよ?」 「女だと思えばいいじゃん?しかも、いい話のネタになるしね」 他のヤツらも同意した。僕を取り囲む全ての目が、恐ろしい『男の眼』になった… 僕は、恐怖でガクガクと震えた。 「手を押さえろ」 浅岡が、ダーッと僕を押し倒した。 もちろん僕は抵抗した。 「ちゃんと押さえてろ!」 両側から左右の手を押さえられた。 浅岡が、僕の上に馬乗りになって、僕のシャツのボタンを外し始めた。 「…や、やめろ、離せ…」 はだけられた胸の、両方の乳首に、浅岡の指が触れてきた。 「女にするみたいでいいのか?」 「…う…ああっ」 浅岡の愛撫に反応して、僕の身体は勝手にビクビクと震えてしまった。 「へえーそんなになるんだ。お前、ちょっとここ、続けといて」 上から別のヤツが、乳首を触ってきた。 そして浅岡は、僕のズボンを一気に膝まで下ろした。 「…や…いや、やめて…」 僕は、恥ずかしさと恐怖で、弱々しく泣き叫んだ。 浅岡の手が、僕のモノを掴んだ。 僕はまたビクッと身体をのけぞらせた。 どんどん息が荒くなっていった。 「はあっ…あ、いや…」 「やばっ…すげー興奮するじゃん、勃っちゃった」 浅岡の息も荒くなってきた。 周りのヤツらも同様、半裸で泣き喘ぐ僕の姿に挑発され、目を見張りながら唾を飲み込んでいた。 「イかせちゃう?」 「うん」 浅岡がニヤニヤと僕を見下ろしながら、僕のモノを扱いた。 両手を押さえていた2人も、我慢できずに、僕の胸やら首やら、あちこちを弄り始めた。 「はあっ…ああっ…」 身体のあちこちの感触が、とにかく全部混ざり合って…僕の身体はまた、あの時のように自分の意思ではどうにもならなくなっていった。 「…ああっ…ううっ…」 イってしまった… と、脱力感とともに、ドっと涙が溢れた。 そしてとうとう浅岡が、自分のズボンに手をかけた。 そのとき ガターン!! 皆が一斉に、僕の身体から顔を上げた。 「…!!」 冬樹だった。 ものすごい勢いで冬樹が飛び込んできた。 「…はあ? なんなの、これ…」 この光景を前に、彼の中に、どれほどの、どんな感情が湧き上がったのかどうかは分からない… 見た目は割と冷静に、ズカズカ近寄ってきて 僕の身体から、次々とヤツらを引き剥がしては殴り飛ばしていった。 最後に浅岡に掴みかかり、何度も殴り飛ばした。 項垂れる浅岡を壁に叩きつけ、冬樹は僕に駆け寄った。 「郁、ごめん、遅くなった」 「…冬…樹…」 冬樹の目の前で、こんな恥ずかしい姿を晒した。 大好きな人に、他の男に弄ばれた所を見られた。 僕はもう、悲し過ぎて、冬樹に縋り付くことさえできなかった。 「大丈夫か?」 「…う、うん」 冬樹は僕の身体を起こした。 僕は覚束ない手つきで服を着直した。 うずくまっていた浅岡が、ゆっくり顔を上げた。 「へっ…残念ながら俺らは挿れそこねたけど…」 冬樹は振り返った。浅岡は続けた。 「俺らより前に挿れたヤツがいるみたいよ。倉田とつき合ってるくせに、他の男に犯られたって〜」 「…!」 「そりゃあ、お前に合わせる顔ねーよな…」 「…」 僕は、もうダメだった… もう、何も言えなくなって、冬樹にお礼を言うことも忘れて、フラフラと部屋を出て、その場から走り去った。 「郁!」 「くっくっくっ…」 その後、浅岡たちがどうなったのかは、知らない。 ただ、それから先、連中が僕らにちょっかいを出してくることは二度となかったな…

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