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2どめのなつやすみ(3)

翌日の朝には、船は島に着き、僕ら団体様は上陸して、去年と同じホテルに向かった。 そしてまた同様に、休む間も惜しんで海辺に出ていった。 1年前と同じ、真っ白い砂浜と、真っ青な海が、目の前に広がっていた。 「うーん…やっぱり綺麗だなぁ…ね、ね、冬樹!」 「うん…」 あまりの綺麗さに、冬樹は言葉を失っているように見えた。 僕らはしばらく、その美しい風景に見入っていた。 「入ってみる?」 「うん…」 「そーいえば、冬樹って…泳げるの?」 「ばーか 当たり前だろ」 なんて言いながら、僕らは静かに海に入った。 そして並んで、泳ぎ出した… 「うわっ もう足つかねえっ」 「あはははっ…大丈夫?」 僕は、ふと思い出して言った 「下見る余裕ある?すーごく透き通ってるんだよ」 「…」 僕に言われて、冬樹は海面に顔をつけた 1年前と同じく、深い海の底まで見渡せる、美しい海中の景色が広がっていた。 「すっげえ…」 冬樹も感動してる風に見えた。 それから僕らは、どんどん…どんどん泳ぎ続けて… やがてブイの所までたどり着いた。 「はあ〜」 ブイに掴まって…僕らは、更に広がる水平線の向こうを見渡した。 「…地球ってデカいんだな…」 冬樹が呟いた。 僕は、嬉しくなって笑い出した。 「なんだよ…」 「くっくっ…だって冬樹…去年の僕と、全く同じこと考えてるんだもん」 僕も、海の向こうを見つめながら言った。 「去年…ちょうどこんな風にブイに掴まって、同じような事考えてるうちに…やっぱり冬樹がいいって、なんかスッキリ解決しちゃったんだよねー」 「…そーだったのか…」 冬樹も、向こうを見つめながら…言った。 「この景色に感謝だな…」 そしてゆっくり僕の方に近付いてきて…僕の手を、海中で、しっかり握った。 僕も力を込めて握り返した。 寄り添いながら…自然と僕らは顔を近づけ… ちゃっとだけ、キスをした。 そんな僕らの様子を、 茂樹は遠くから目で追っていた… その日も、次の日も… 泳いでいるときも、浜で休んでいるときも… 夜、散歩に出るときも、ホテルにいるときも… 冬樹は片時も僕の側を離れなかった。 けれども、どんなときも… 茂樹の影が、僕らの背後に見え隠れしていた。 不安がないと言えば嘘になった。 そして迎えた最後の夜… 冬樹が言い出した。 「俺さ、ちょっと了さんに聞きたいことがあるから、ちょっと行ってきていい?」 「え?うん…いいけど、一緒じゃダメなの?」 「うーん…身内がいると、全部喋ってくれないかもしれないからな」 「あいつのこと?」 「…うん」 「わかった。行ってきて」 そう言って僕は、ここへきて初めて、冬樹と離れた。 もちろん、ホテルの部屋の鍵はもちろん、窓の鍵も厳重に閉めた。 コンコン… しばらくして、扉をノックする音が、聞こえた。 「なんですか?」 僕は鍵は開けず、大声で言った。 「フロントの者です。頼まれた物を持ってきました」 いや何も頼んでないなと、思って言い返した 「間違いだと思いますー」 「でもついさっき、倉田さんて方から言付かったんですけど?」 「えっ?ホントですか…」 それを聞いて僕は、うっかり鍵をそっと開け… ホントに少しだけ、ドアを開いた。 と、突然… 「あースイマセン、ありがとう。それ俺が頼んだんです」 と言いながら、従業員が持っていた物をに奪いとり、ドアを力付くこじ開けて部屋に入り、 乱暴にドアをバタンと閉めて…鍵をかけた… あっという間の出来事だった。 茂樹だった…

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