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2どめのなつやすみ(6)

「…郁っ!…」 慌てて部屋に入ってきた冬樹は、その光景を目の当たりにして、一瞬固まった。 上着を開かれ、両腕は後ろ手にテープ縛られ… ぐったりとしていた僕に、冬樹は駆け寄った。 「…くそっ…あの野郎…」 「…」 後ろ手のテープを力強くで破って、冬樹は僕の身体を思い切り抱きしめた。 「…ごめん…ホントにごめん…」 「…冬樹…僕の方こそ、ごめん…」 僕を抱きしめる冬樹の腕に、どんどん力が入ってくるのが伝わってきた。 「…あいつ、殺す…」 僕はビックリして、冬樹を見た。 僕の肩に埋まって、その表情は見えなかった。 「…ごめん、冬樹…大丈夫だから…僕が悪かったんだ。冬樹の名前出されて、うっかり油断した…」 冬樹は顔を上げて、僕を見た。 僕は続けた… 「大丈夫だから…怖かったし…犯られちゃったけど…冬樹がいるから、大丈夫だから…」 「…かおっ…」 言葉にならない風に… 冬樹は再び僕を思い切り抱きしめた。 それから僕らは浴室に入った。 冬樹は丁寧に、僕の身体を洗い流してくれた。 濡れた身体をバスタオルで拭かれながら、僕は言った 「お願い…抱いて…ください」 茂樹に犯られて…僕の身体は疲れていた。 それでも、言わずにはいられなかった。 「…だって、お前…」 「…」 黙って僕は、冬樹の腰元に縋り付いた。 「…わかった」 裸のまま、冬樹は僕の身体を抱き上げ… ベッドに運んだ。 そして、僕の上に覆い被さった… 「どんな風にされた」 僕は俄かに悲しくなった。 気がつくと、ボロボロ涙が溢れ出した。 「…全部やって…全部、きれいにして!」 「…」 僕は両手を冬樹の首に回して、思い切り彼に抱きついた。 「…全部、冬樹で塗りつぶして…」 そう言いながら僕は、冬樹の頭を両手で押さえて引き寄せ、口付けた。 そして、さっきやられたみたいに、冬樹の口の中に自分の舌を入れた。 「…んんっ…」 冬樹もそれに応えて、自分の舌を僕に絡ませてきた。 それこそ、唾液が滴るくらい、僕らは吸いあった。 口はそのまま、彼の両手は、僕の首から肩からを…その感触を確かめるように撫でていき… 両方の胸に落ち着いた。 冬樹はそっと口を離れ…今度はくちびるを滑らせて感触を確かめていく… 時々強く吸い付かれる度、乳首を愛撫される刺激と混ざって、僕の身体はビクッとなった。 「…あっ…ふ…ゆき…」 彼のくちびるが、乳首まで降りてきた。 今度はそこを口で愛撫しながら、両手でその下を撫でていった。 「…あっ…ああ…」 そして彼の両手は、僕のモノを捉えた。 「手でされた?」 冬樹は少し怖い口調で訊いてきた。 「…う…うん」 「口でも?」 「…ん…」 と、彼は勢いよく、僕のモノを口に入れた。 そして、両方の乳首を愛撫しながら、いつになく激しく口を動かした。 「あっ…あああっ…」 僕のモノが硬くなってきたところで冬樹は、口を離し、僕の両足を広げた。 「…挿れるね…痛いかもしれないけど…」 また少し強い口調で… 僕の返事を待たずに、冬樹は僕の中に入ってきた。 「…あっ…う…」 ゆっくり突きながら…僕のモノを扱きながら… 彼は僕に口付けた。 「…んっ…んん…んっ…」 喘ぎ声を、冬樹の口に塞がれながら、僕はイった。 それを確認した彼は、そっと口を離れ、両手で僕の顔をしっかり押さえた。 そしてそのまま、冬樹は、自分が終わるまで、腰を動かしながら、僕の目をじっと見つめていた… そのとき僕は、自分がどんな顔をしていたのか分からないが… 少なくとも冬樹は、ちょっと泣きそうな、悲しそうな目をしているように、僕には思えた。 身体をきれいにして、横になった彼は、また僕をしっかり抱きしめてきた。 「…ありがとう…」 僕は呟くように、彼に言った。 「僕は…もう、大丈夫だから…」 確かに、再び茂樹に犯られたことへの悲嘆や絶望感はあったのだが… 冬樹がいてくれることで… 不思議とそれらの感情は、去年のあのときに比べて、自分でも驚くほど軽かった。 「…」 冬樹は黙って僕の頭を撫でた。 そのとき僕は分かっていなかった。 だからといって、僕がどんなに言ったところで… 冬樹の方のそれは、軽くなる筈はなかったのだ。

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