33 / 149

ぼくのひみつ

「…昨日はホントにごめん…」 次の日の夕方…帰ってきた冬樹は、申し訳なさそうな表情で言った。 「バイト先の人に捕まっちゃって、ちょっと飲んじゃったら…うっかり寝ちゃって、気付いたらもう朝だったんだよ…」 「そう…だったんだ」 あの女ひと…僕があの現場を見たってことは喋らなかったんだな… 「連絡しなくて、ホント悪かった…」 「…ううん…ちょっと心配だったけどね…」 もちろん僕にも後ろめたい気持ちがあったので、あまり冬樹を問い詰めることはしなかった。 ただ、その後冬樹が…力いっぱい僕を抱きしめて、いつになく強引に僕を抱いたとき… 彼の自己嫌悪の念が、なんとなく伝わってきて…それが、少しだけ不安になっていた僕を、安心させた。 僕はといえば… なんというか…たかが外れてしまった。 冬樹に申し訳ない…という、自己嫌悪よりも、 冬樹を金銭面で少しでも支えたい…という気持ちが先に立ってしまったのだ。 まあ、結城の口車に、まんまと乗せられてしまった感もあるが… 僕が再び結城の元を訪れたのは、それから1週間も経たないうちだった。 ホテルの部屋のソファーに向かい合って座り…結城は事務的な口調で言った。 「…とりあえず昼間の短時間にしておこう。彼より先に余裕持って帰れた方がいいだろ?」 「…はい。」 「面倒なヤツは選ばないようにしておくから…その辺も心配しなくて大丈夫だよ」 「…」 「あ、ちなみに言っとくけど。こないだの金額は期待するなよ。あれは私の個人的な財布だからな」 「…あっはい。もちろんです…」 「じゃあ早速、来週から、ぼちぼち入れさせてもらうね」 「…はい」 僕は少しだけ、震えていた。 結城は立ち上がり、僕の頭を撫でながら言った。 「嫌になったらいつでも辞めていいから…」 「…」 僕はあまり知らなかったが、結城さんの会社は、幅広く色々な事業を手がけているらしい。 その分、取引先やらつき合いやらの数も半端ない。 そんな大口顧客の重鎮の中には、他人には言えない性癖の持ち主も多く、表の取引を円滑に進めるために、それらのニーズを裏で支えることも、結城さんの重要な仕事の一環らしい。 そんなわけで、彼にとって僕は、格好の人材だったようだ。 そうして僕は…まだ見ぬ恐ろしい世界へと… 足を踏み入れることを選んでしまったのだった。 初出勤の日… 僕は、指定された駐車場の…指定された車の助手席に乗り込んで、待っていた。 バタン 時間通りに、その人が運転席に乗り込んできた。 「やあ…はじめまして。よろしく」 「…こんにちは。よろしくお願いします…」 管理職風の、白髪まじりの小綺麗なおじさんだった。 僕は、俯き加減で挨拶をした。 その人は車にエンジンをかけ、アクセルを踏んだ。 車はゆっくり走り出した。駐車場を出て、割とすぐに高速道路に入った。 「今日初めてなんだって?」 「…あ、はい」 「水揚げか。嬉しいねえ…」 「…?」 その人の言ってる意味は分からなかったが、とりあえずその人の口調がとても穏やかだったので、僕は少し安心した。 30分ほど走ったところで、車は高速道路を降り、インターのすぐ側のホテルへ入っていった。 ひとつひとつ壁で仕切られた車庫に車を止め、僕らは車を降りて部屋へ向かった。 そこはいわゆるモーテルで、部屋はそれほど広くなく、ただ、大きなダブルベッドがドーンとあって… いかにも『さあ、してください』っていわれてるみたいで、ちょっと嫌な感じだった。 その人はドアに鍵をかけ、上着を脱ぐと…すぐに僕をベッドの側へ手招いた。 「…ちょっと震えてる?」 もちろん、僕は緊張していた。 その人は、いきなり僕を抱きしめた。 「…あっ…」 「そんなに怖がらないで…優しくするから」 優しく僕の髪を撫でながら、その人は僕に口付けた。 そしてゆっくりくちびるを離すと、僕を床に座らせ、自分のズボンのファスナーを下ろした。 それがどーいう合図なのか、僕には分かった。 僕は、ファスナーの中から、その人のモノを探り出し、跪いてそれを口に含んだ。 それが硬く大きくなってくると、その人は僕の口から離れ、僕を立たせた。 そしてゆっくり、僕のシャツのボタンを外し、ときどき乳首に触れながら、両側に開いた。 僕はその感触に、ビクビクと震えた。 「…んっ…」 「かわいいね…」 と、その人はいきなり、僕の身体をベッドに押し倒し、貪るように僕の服を脱がせた。 そして息を荒立てながら、僕の乳首にしゃぶりついた。 「あっ…ああっ…」 僕の身体はどんどん熱くなった。 乳首を愛撫しながら、その人は僕のモノを優しく握った。 少しかさついた指の刺激が新鮮で… 僕の身体は更に熱く… 僕のモノもビクビクと昇り詰めていった… 「…ああっ…気持ち…いい…」 僕は、若干大袈裟に喘いだ。 「…挿れていいかい?」 「…あっ…はい…挿れて…ください…」 ああ、冬樹との小芝居経験が、こんなところで役に立つとは… そしてその人は、僕の腰を持ち上げ、僕の中へ挿れてきた。 腰を激しく動かされ、かさついた指で愛撫されながら…僕はやがてイってしまった。 そのすぐ後に、僕の中でイったその人は、そのまま僕の上に覆い被さり、しばらく、はぁはぁと息を荒だてていた… 僕はふと冷静になった。 知らない男の人が、僕の上に乗ってるって、なに? そうだ、僕はもう… 後戻りは出来ないのだ…

ともだちにシェアしよう!