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ぼくらのふゆやすみ(2)

僕らは、近くの駅から始発の電車で帰った。 その途中で、冬樹が切り出した。 「なあ…郁」 「ん…なに?」 「お前…そろそろバイト辞めれば?」 「…えっ なんで?」 「高校…受験…」 「えええー? なんで〜?」 「いや、やっぱ高校行っといた方がいいよ」 「なんでー?いいよー今更…」 そして冬樹は、お父さんのように続けた。 「いや、ダメだ。いいか、世の中学歴社会だからな。大学出てるヤツだっていっぱいいるんだから…その中で生きていくためには、せめて高校は行っとかないと」 「じゃあ…冬樹は?」 「俺は…今はいけない。それはお前がイチバンよく知ってるだろ?」 「…」 「だから、俺のためにも行って欲しい…将来俺を養ってもらうためにも」 「ふふっ……でも…」 「とりあえず、俺が教えられる事は教える。だからもうバイトは辞めて、勉強に専念して欲しい」 まさか冬樹がそんな事を言い出すとは、思いもよらなかった。 でも確かに… 冬樹の言うことは最もだと思ったし… 僕自身も、高校…そりゃあ行けることなら行きたいと思っていたので… 彼の言う通りにしようと、心に決めた。 「…うん。わかったよ…」 それに、いつまでもこんな生活続けてちゃいけない。 「でさ、お前のその会社の社長…信用できそうな人なんだろ?」 「…うん」 「その人に、いろいろ頼めないかな…」 「…何を?」 「いや、ホントにいろいろ…普通は高校受験ったら、中学校から色々書類とか用意しないといかんからね」 「へーそうなんだ…」 「うん、そればっかりは、俺もお前もどうにもできないからさ…でも、その社長だったら、そーいうの無しで受けられる学校とか、心当たりあるんじゃなかろうかと、思って…」 「…わかった…訊いてみる」 そういったわけで… 僕は休みが終わってすぐに、 結城に直接会って、事情を話してみた。 結城はまさかの、とても快く引き受けてくれた。 「そうか…冬樹くんは流石だな…」 「ホントにすいません…ご迷惑をおかけします…」 「いや、全然、いいんだ。っていうか、実は冬樹くんに言われなくても、私がそうしようかと思っていた」 「えっ?」 「うちの系列に学校法人があるから、そこ、どうかなって、お前に勧めようと思ってたんだ」 「…そう…なんですね」 なんでそんなに、この人、僕のこと気にかけてくれるんだろう… 「何も気にしないで大丈夫。仕事も入れない。だから安心して勉強しなさい」 「…ありがとうございます…」 僕は、深々と頭を下げた。 結城は僕の頭を撫でた。 「でも、私は…君のことも大事だが、万一の場合には、2人を庇うことはできない。それだけは頭に入れておいて欲しい」 「…はい。わかってます」 結城は、優しそうな… 少し心配そうな目で、僕を見つめた。 「じや、後は任せて、頑張って」 「はい…ありがとうございます。失礼します」 なんでそんなに? は置いといても… こんなにありがたいことはない。 結城さん、無事高校生になったら、もっといっぱい仕事するからね! そんなことも考えながら… 僕は、勉強に励む日々を送り始めた。 結城が、その学校の過去問題集を揃えてくれた。 僕はそれを解き、わからない部分は、夜、冬樹に教えてもらった。 冬樹は思ってたより、ずーっと頭が良かった! 教え方も、上手だった。 書類や手続きなど面倒なことは、 全て結城が上手くやってくれたらしい。 受験票だけが、僕の元に送られてきた。 そして僕らは… いろいろな意味での、 運命の日を迎えるのだった…

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