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もうひとつのであい(2)
気付いたときは、僕はベッドの中にいて、辺りはすっかり明るくなっていた。
あれー?
昨夜はどーーうしたんだっけ…
起き上がって辺りを見回すと…
ソファーで律也が眠っていた。
僕はゆっくり起き出し…彼の側へ近寄っていった。
途中、テーブルの上の時計を見ると…
ちょうど10時を回ったところだった。
「律也…」
「…うーん…」
彼は眠そうに横を向き…タオルケットを頭までかぶってしまった。
昨夜…僕はどうしたんだろうか…?
律也とキスして…それから…
別に今更…しようがしまいが、どっちでもよかった。
まいっか…とにかく早くお礼だけ言って帰ろう…
「…律也、おほようー」
僕は彼の耳元で囁いた。
「昨日は色々ありがとう。もう帰るね、バイバイ」
そして僕は、昨夜投げ捨てたゴミ箱の中から、ズボンだけは拾い出し…パンパン叩いてシワを伸ばして…それをはいた。
みっともないけどなー
流石に素足を晒して帰るわけには…いかないからなー
そして、ちゃんとドアから…出ようとした。
「…おい」
後ろから声がした。
「あ、起きてた?」
彼はムックリ起き上がり…煙草に手を伸ばした。
「もう行くのか?」
「うん、自分のベッドでもうひと眠りしたい…」
「ん、そっか…」
「ありがと…またねー」
「そーだ、来週…よかったら一緒に遊び行かない?」
「…そうだね、いいよ」
「じゃ、そんとき…また…」
「うん。バイバイ…」
そして僕は彼の部屋を出て…
なるべく誰にも会わないよう、コソコソと自分の部屋まで急いで帰った。
自分の部屋の自分のベッドに座って…
僕はハッと思い出して、ズボンのポケットから3万円を探り出した。
あーよかった…捨ててなくて。
って…何だか僕って貧乏臭いな…
律也とは比べ物にならないなー
そして僕はその金を、自分の机の1番上の引き出しにしまった。
代わりにその引き出しから、昨日の注文書を取り出し、ビリビリに破いた。
そのままゴミ箱に捨てると雅巳に見つかるかもしれないと思って、僕はそれを小さく丸めてティッシュペーパーに二重に包んで、ゴミ箱の下の方に押し込めた。
それから僕は、どっかりと自分のベッドに倒れ込み…目を閉じた。
昨夜の出来事を、最初からゆっくり思い返してみた。
体育館に向かったところから…
富永たちに身体を弄られたところも、ひとつひとつ、その感触を思い起こしていった…
「…」
ふと気付くと…
僕の身体は、
なんだか熱く、疼いてきてしまった…
僕はそのまま、リアルな回想を続けながら…
そして、その回想シーンの中で、藤森のモノを口に入れたシーンでは口を開け…
胸を弄られたシーンでは自分で自分の乳首を弄り…
手で握られたシーンでは自分で自分のモノを…快感に任せて擦った。
そして…
「…んんっ…」
声を殺しながら…僕は自分でイってしまった。
自分のモノをティッシュで拭いてから…
再びベッドに横になり…
今度は頭まで毛布をかぶった。
なにやってんだ僕は…
自己嫌悪の念で頭がいっぱいになった。
なんなの?誰でもいいの?
気持ち良ければいいの?
あんなに嫌だった富永でも?
全然素人なゲイクラブのヤツでも?
冬樹じゃなくても…いいの?
僕は、くちびるを噛み締めながら思った。
冬樹さえいれば…
そうだ…冬樹が戻ってくれさえすれば、もうこんな事はしない。
冬樹がいないから、身体がちょっと変になってるんじゃないかな…
そうやって自分を納得させて…じっと目を瞑った。
冬樹…
会いたい…
爽やかな風が窓から入ってくるのを感じながら…
僕はそのまま眠り込んでいた。
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