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動乱の2学期(1)
「ちょっと郁!いい加減にしてよ!」
ある日の朝…
日頃から僕の行動にイライラを募らせていた雅己が、ついにキレた。
2学期に入って、もう1ヶ月半以上が過ぎていた。
僕はといえば、相変わらず1人では眠れない状態で、
ほとんど毎晩、誰かの部屋に転がり込んでいた。
たまに帰ってくる夜も、
ボロボロになるまでやりまくって、
疲れ果てて寝るだけの状態だった。
そんなわけなので、朝早くなど起きられる筈もなく、
雅己は毎回、僕を起こすのに苦労していたのだ。
大概は彼が負けて…
結局僕は遅刻するか、
あるいは1日サボってしまうことも少なくなかった。
「もうー全然授業も出ないし…いつも先生に文句言われるのは僕なんだからね!」
「う…ん」
「それに何だよ、約束が違うじゃないか。ここでは誰ともつき合わないって言ってたのに…毎晩何やってんだよー」
「…」
「郁が居ないときだって、知らない先輩が訪ねてくるんだから。それ、いちいち断んのだって、もう…やってらんないよ」
「…う…ん」
僕はゆっくり上体を起こした。
毛布からはだけた僕の…肩にも胸にも…
赤い痕が、いくつも付いていた。
それを見た雅巳は、更に呆れて言った。
「な、何だよそれ!?…もう、僕知らないからね!」
大きな溜息をついて、雅己は部屋を出て行った。
僕はガンガンする頭を押さえながら…
再びベッドに倒れ込んだ。
雅己ごめん…
ホントに、ごめんなさい…
心の中で呟いて、僕は目を閉じた。
そのうちに、雅己に申し訳ない気持ちが湧いてきて…
僕は頑張って、もう一度上体を起こした。
そしてベッドから下り…
ノロノロと支度をして、部屋を出た。
その日は遅刻はしたものの、
何とか授業は全部出席した。
でも雅巳は、他の連中の輪の中に入っていて
僕の方は見向きもしなかった。
授業が終わっても、何だか部屋に戻り辛かった。
僕は中庭に出た。
そして、芝生の上に座った。
と、そのときたまたま…
遠くを通りかかった律也が、僕の姿を見つけた。
彼は一目散に駆け寄ってきた。
「…郁!」
「…あ、律也…」
僕らが2人で会うのは、
あの夏休み最後のとき以来だった。
僕はもう、他の約束で手一杯だったし…
律也もそれを手をこまねいて、
機会を待つしかなかったのだ。
彼は真面目な顔で訊いてきた。
「今夜は…空いてる?」
「うん…たまたま空いてる」
僕は、力無く笑いながら答えた。
そして律也は、
そのまま僕を、自分の部屋に連れ込んだ。
夕食の時間が近づいていたが、
今はとにかく僕を外へは出したくなかった。
「夕食、ここでいいよね。つまみ…あるし」
「うん」
彼はすぐに、僕にビールを勧めた。
僕は、勧められるがままに飲んだ。
律也が切り出した。
「最近は、どうなの?」
「どうって?」
「やっぱり…毎晩やってるの?」
「…まあ…ね」
「どうして…そんなに、するの?」
「…」
彼は2本目の缶を僕に渡した。
僕は黙って、それを開けた。
「お金…取ってんでしょ」
「うん…大体は」
「あのさぁ…」
律也は2本目の缶を飲み干して…言った。
「お前、好きな人がいるっていってたじゃん」
「…うん…」
「その人に…悪いとか、思わないの?」
「…」
僕は残りのビールを一気に飲み干した。
「なあ、郁…」
「なんで…関係ないって言ったじゃん」
僕は律也に食ってかかった。
彼は冷蔵庫から、更に2本を取り出し、
テーブルの上に置いた。
「夏休みの間に、何があった?」
そう言いながら、彼は僕の肩に手を置いた。
「俺のこと好きでなくてもいいよ。でも友だちとして…お前の悩みを聞くことは、できない?」
僕は黙って、3本目のビールを開けた。
それを口につけたとき…
「冬樹って人と…何があったの?」
律也が、ついにその名前を出した。
「…!!」
その途端僕は…
まだ中身の入っているビールの缶を、
机に思い切り叩きつけた。
そして勢いよく立ち上がった。
狼狽える律也を尻目に、
僕は黙ってドアの方へ向かった。
もうそんな話に…
僕は耐えられなかったのだ。
「郁、待って!」
律也は僕を追ったが、
僕は彼の目の前でドアをバタンと閉めた。
「郁ー!」
律也はドアを開けて、僕を呼び止めた。
「お願い。もう、僕に構わないで!」
キッパリ言い捨て、僕はくるっと振り返った。
そのとき、隣のドアが開いた。
「何の騒ぎー?」
そう言いながら顔を出したのは、正田だった。
「あれ、お前こんな所で何してんの?」
そして白々しく続けた。
「暇だったら、寄ってけばー?」
「じゃあ…お邪魔する」
僕は二つ返事で、正田の誘いに乗った。
そして律也の見ている前で、僕は正田に肩を抱かれて部屋に入っていった。
「か、おいっ…郁!」
バタン。
律也の目の前で、ドアは閉められた。
郁…
どうしたら俺は…
お前の心を癒やしてやれるんだろう…
律也は下を向き…くちびるを強く噛み締めた。
正田の部屋で…
僕はまた、彼に勧められるまま、バーボンを飲んだ。
「よく飲むねー」
「そう?たまにはいいでしょ」
「いいよー、いくらでも酔っ払って」
そう言いながら彼は、僕の隣に座り…
僕の身体を弄り始めた。
僕のシャツのボタンを外し…
乳首に口付け…舌で舐めた。
「…んん、」
そして、バーボンをひと口飲んだ。
今度は両手の指先で、両乳首をいじりながら…
僕の口に…舌を挿れてきた。
「…んっ…ん…」
僕がビクビク震えるのを見て、
面白そうにニヤニヤ笑いながら…
また、バーボンをひと口飲んだ。
「お前をつまみに飲む酒は美味いなー」
僕は…
酔ってふわふわした頭で、思った。
ああ…やっぱりね
この人絶対、そっちの種類の人だよね…
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