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歌舞伎町の夜(2)

そのドアを開けると… 狭い廊下を挟んで、 両側にいくつかの部屋がならんでいた。 「ここって、泊まれるの?」 僕は彼に訊いた。 「そうよ、泊まれるし…ちょっと休憩もできるの」 彼はその、いちばん奥の部屋のドアを開けた。 おそるおそる中を覗くと… 大きなダブルベッドが目に入った。 「…やっぱり…そういう店なんだ」 僕は呟いた。 「そうよ」 そう言いながら可淡は… 後ろ手でカチッと部屋の鍵を閉めた。 その音に反応して振り向いた僕を… 彼は思い切り、抱きしめた。 「…!」 「郁ちゃん…あんた、とっても可愛いわ…」 そして彼は、 僕の顎を右手で掴み…くちびるを重ねてきた。 「ん…」 彼が僕の口の中に舌を絡ませてくると… 僕はそれを受け止めて、吸い付いてみせた。 ゆっくり口を離れながら…彼は言った。 「あんた…初めてじゃないわね」 彼はそのまま…僕をドアの横の壁に押し付け… 再び口付けしてきた。 そしてゆっくり…僕のシャツのボタンを外した。 「…ん…」 彼の指が、僕の胸に滑り込んだ。 僕はそれに反応して、身体を震わせた。 彼はくちびるを滑らせ…僕の首すじに吸い付いた。 そしてもう片方の手で、 僕のズボンのファスナーを下ろした。 「…んんっ…」 僕の身体は…小さな刺激でも、ビクビク反応した。 可淡は、そんな様子を冷静に見ながら、 僕のズボンを、下着ごと、膝まで下ろし… 僕のモノの前に、跪いた。 「郁ちゃん…きれいね…」 そう言いながら… ゆっくり僕のモノを、口に含んだ… 僕は、身を捩りながら…思わず呟いた。 「…んっ…きれいなんかじゃ…ない…」 可淡は、口はそのまま… 目線だけ、僕の顔を見上げた。 「ここに来る前だって…何人もと、何回もやった…」 「…」 彼は、何も答えず、口はそのまま… 両手を、僕の乳首に這わせてきた。 「んっ…ああっ…」 流石に手慣れた風の、可淡の愛撫に… 僕は身を捩りながら、ビクビクと喘いだ。 「あっ…あっ…もう、出ちゃう…」 そう言いながら…僕はイった。 そのまま身体の力が抜けて… 僕はガクンと膝をついた。 「はぁ…あっ…はぁ…」 彼は、そんな僕の身体を抱きしめた。 「感受性が強いのね。心も…身体も」 その優しい言葉と腕に、僕は甘えて身を任せた。 しばらくして、顔を上げて言った。 「…すごく…気持ちよかっ…ん…」 彼は、すかさずまた僕の顎を掴んで口づけ、 僕の言葉を遮った。 可淡のくちびるが、ゆっくり僕から離れてから… 今度は僕が、彼のスキをついた。 「…えっ…?」 予想外の流れに、戸惑う彼の股間に… 僕は自分の顔を近づけ、 彼のズボンのファスナーを下ろし、 彼のモノを引っ張り出した。 「まだちゃんと付いてるんだ…」 そう言って、僕は彼のモノを口に咥えた。 「あっ…やだ…」 僕もおそらくきっと…彼と同じくらい、 いやもしかしたら、それ以上に… 経験値を積んでいたかもしれない。 いつものように…舌を絡ませて、 僕は彼のモノを、丁寧に舐め上げた。 「ああ…あん…あああっ…」 可淡は、まるで女の子のように声を上げた。 そして、ほどなく…僕の口の中で、果てた。 ゆっくり僕は顔を上げ… 彼に向かって、ニコッと笑って見せた。 「あんた…只者じゃないわね…」 「…あなた程じゃないと思いますよ」 「ふふっ…」 その後、可淡は僕を抱き上げ、ベッドに寝かせ… 自分も服を脱ぎ捨てた。 「いつも、どつち?…まあ下って感じよね」 「下が多いけど…どっちもイケる…」 「まあ、器用なのね〜。心強いわ…」 彼は僕の上に覆い被さり… 僕の身体にくちびるを這わせながら言った。 「じゃあ、今はどっちの気分なの?」 「…んんっ…あ、あなたのお好きな方で…」 彼のくちびるの愛撫に、 また身体を震わせながら僕は答えた。 「わかったわ。あたし、上、久しぶりなの…」 そう言って可淡は… ひと通りの愛撫を済ませると、僕の両足を開いた。 そして、再び脈を打ち始めた自分のモノを、 僕の中に挿入した。 「ん…ああっ…」 「あっ…あっ…郁…ちゃんの中、気持ちいい…」 可淡はまた、女の子のように喘ぎながら… でも、男らしく、激しく腰を動かした。 そんなギャップ萌えも… また、僕のテンションを上げた。 僕のモノは、また勝手に、寸前まで上り詰めた。 「あああっ…あっ…んん…」 彼は僕の中でイき…そのまま僕の上に倒れ込んだ。 そして、僕の両乳首を力無く弄った。 「あっ…ああ…」 上り詰めていた僕は、その乳首の刺激と、 彼の身体に挟まれた感触で…イってしまった。 そんな僕を見下ろして、可淡は言った。 「あんた凄いのねー。ね、行くとこ無いんでしょ?」 「…う…ん」 僕は目を閉じた。 もう、眠くて眠くてたまらなかった。 「そしたら、この店で働かない?」 「…ん」 「あんたなら凄く稼げると思う」 「…ん…」 「うちは、そんな変なお客さん来ないし…」 「…」 「ねえ、聞いてる?」 「…」 僕はもう、すぐに寝落ちてしまっていた。 「ふふっ」 可淡は微笑んで、僕の身体に毛布をかけた。 そして自分はベッドから下り、服を着て… その部屋を出ていった。 彼が、店に通じるドアを開けると… 他の店員たちは、一斉に彼の周りに集まった。 もう、客は1人もいなかった。 「ねえ、どうだった?」 「可愛いいじゃん。ズルいよ、可淡ー」 「で?で?…どんなだった?」 可淡は、ゆっくり歩いて、カウンターの席に座った。 そして、マスターに向かって言った。 「もの凄ーく…良かったわよ。ちょっとかなりいい拾い物したみたい…」 「それはそれは…」 そう言いながらマスターは、 水割りの入ったグラスを、可淡に渡した。 それから彼は、僕との一部始終を、 他の店員に話して聞かせた。 長い1日だった… あまりに色々なことが、あり過ぎた… 僕はすっかり疲れ果て… ぐっすり、眠っていた。

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