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ぼくの居場所(2)
僕はとりあえず…
ゆっくり、葉多の隣の席に移った。
場を盛り上げるために、何か喋らなければ…
と、思った。
「あ、あの…葉多さんは、よくこういうお店に来るんですか?」
あーなんてつまんない質問…
「いや…こんな、男の子ばっかりの店は初めてだよ」
「…そうなんですか」
じゃあこの人…男相手にし・た・こと無いのかなー
そしたら、無理に誘わない方がいいのかな…
話が終わってしまった…
と、葉多が、クスッと笑いながら囁いた。
「君さあ、やっぱり次に進まないと、上の人に文句言われるの?」
「えっ…あ、いや…そんなことはないですっ」
胸の内をすっかり見透かされた彼の言葉に、
僕は戸惑いを隠せなかった。
「くくっ…じゃあ一応、行くだけ、行こうか」
「そんな、いいですよー」
「でも今日、初仕事なんでしょ、いいよ、行こう」
そう言って彼は立ち上がり、僕の手を取った。
「マスター、奥いいですか?」
「どうぞどうぞ」
そして僕らは、奥のドアに入っていった。
マスターが親指を上げて、僕にウインクしていた。
「じゃ、こちらへどうぞ…」
僕は、並んだ部屋の1つに、彼を招き入れた。
彼は部屋に入ると、
すぐにベッドにどっかりと座り込んだ。
「ふう〜」
やっと落ち着いた…的な表情で、葉多は言った。
「俺、男としたことなんて無いんだよね。だから、どうしたらいいのか分かんないんだ」
そう言いながら、煙草を咥えた。
僕は、慌ててライターに火をつけ、差し出した。
彼はそれを吸いながら、続けた。
「せっかく金山さんに連れてきてもらったんだけど」
よし。
それだけ分かれば…
しかも、ベッドの上なら、こっちのもんだ。
僕はニコッと笑って、彼に言った。
「じゃあ、僕に任せてみてくれませんか?」
「…えっ?」
「別に、気持ち良ければ構いませんよね?」
「…」
「それとも、男相手は死んでもイヤとか?」
「あははっ…それはないよ。そこまで言うなら…お願いしてみようかな…」
僕は頷きながら、彼の前に立った。
そしてまず、自分のシャツのボタンを、
上からゆっくり…ひとつひとつ外した。
「ちゃんと…見ててね」
「…」
全部は外してしまわずに…半分だけ、
乳首が見えるか見えないか、くらいのところまで、シャツをはだけた。
それから、ズボンもゆっくり下ろし…
片足ずつ引っこ抜いて、
下半身は何もつけない状態にした。
そして、葉多の足元に跪き…
彼の股間に、ズボンの上から口付けた。
「…!!」
彼は驚いて、身を捩った。
「…動かないで…力を抜いて」
僕は、彼のズボンのベルトを外した。
「わ、わかった…自分で脱ぐ」
そう言って彼はいったん立ち上がり…
ズボンを脱ぎ捨てた。
僕は、その様子をじっと見つめていた。
「…なんか、恥ずかしいな…」
「ふふ…葉多さんって、なんか可愛いですね」
「…」
葉多は…顔を赤らめて、再びベッドに腰掛けた。
僕は下から、彼の顔を見上げて言った。
「もう容赦しませんよー」
「…」
そして僕は、彼の股間に顔を埋めた。
彼のモノを両手で包み込み…
優しく撫でながら、先端をペロっと舐めた。
「…うっ」
彼はビクッと震えた。
僕はまた…見上げて言った。
「我慢しないで、気持ちよかったら、声出して…」
そしてまた、彼のモノに口付けた。
「…ん…あっ…」
その先から、ヌルッとしたものが滲み出てきた。
僕は、それを吸い出すように…
彼のモノを口いっぱいに咥え、ゆっくり動かした。
それは、激しく脈を打つた。
「…あっ…あ…ああ…」
葉多は、僕に言われた通り、声を出しながら…
僕の口の中に、出した。
「はぁ…ん…あっ…」
僕はそれを、きれいに口で拭った。
そしてまた…見上げて言った。
「…気持ちよかった?」
「…はぁ…うん、すごく気持ちよかったよ」
彼は、息を上げながら、答えた。
「これで終わりにしますか?」
僕は、悪戯っぽく訊いた。
「それとも、もっと先まで体験してみます?」
「もっと先って…どうなっちゃうの?」
「葉多さんのを、もっかい勃たせて、僕の中に挿れてもらう感じです」
「マジかー」
葉多は、しばらく考えてから、言った。
「今のが凄く気持ちよかったからな…今日のところは余韻に浸っときたいな…」
そう言いながら、彼は僕の頭を撫でた。
「また今度…改めてお願いしてもいいかな?」
「…もちろんです!」
僕は立ち上がって…
葉多のくちびるに、軽く口付けた。
そして僕らは服を整え、部屋を出た。
店内を通り抜けて、店の外に出た。
「じや、金山さんによろしく言っといて、ご馳走様でしたって」
「伝えます。どうもありがとうございました」
「必ず…また来るよ」
「はい、お待ちしてます!」
「じゃあね」
「お気をつけて…」
僕は深々と頭を下げて、葉多を見送った。
彼の後ろ姿が見えなくなってから、
僕は店内に戻った。
戻った途端に…他の店員みんなに囲まれた。
「どうだった?」
「ちゃんとできた?」
僕はゆっくりカウンターに向かい…
マスターに報告した。
「あの人…男相手は初めてだったそうです。だから今日は口でして…先に進むか訊いたら、また今度改めてにするそうです」
「そうか、上出来だ」
そう言って、マスターは、
水割りの入ったグラスを、僕に渡した。
そんな感じで…
僕は、この店に住み込んで、
店員として働くっていう生活を、始めた。
部屋に入っちゃえすればね、
ホントに何とでもなるんだけど…
そこへ辿り着くまでの接客が難しいなー
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