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黒い編入生(5)

次の日、律也たちが目を覚ましたのは、 もう日も高い、昼近くになった頃だった。 「…何か、いつの間にか寝ちゃって…悪かったね」 「全然、僕も今まで寝てたし…」 恭吾は何事も無かったかのように答えた。 そして、ようやく彼らは恭吾の部屋を後にした。 律也と弘真は、並んで階段を降りた。 「おかしいなーあんなんで寝落ちる筈ないのにな」 弘真が信じられない風に呟いた。 「最後の高いヤツが効いたんじゃないの?」 「いや…高いヤツほど、悪酔いしない筈なのに…」 「まーしょうがない…次回は気を付けよう」 「うん…」 「じゃあね」 「ああ」 2人は部屋の前で別れた。 弘真は最後まで、釈然としない表情だった。 部屋に戻った律也は、僕が居ないのを確認して、 ああ、帰っちゃったか… 悪い事したな… くらいにしか思わず… またすぐに、自分のベッドで寝入ってしまった。 その後…僕はもちろん、律也を避けた。 一体どうしたらいいのか分からなかった。 週末の予定の口実を作るために、 学院の中にある、軽音のサークルに入ってみた。 「郁、今週も忙しいの?」 「う、うん…友達にどうしてもって言われてるからサークル休めないんだ、ごめんね…」 「しょうがないなー。じゃ、中間試験の最終日…ならいいだろ?そこなかサークルも休みの筈だし」 「…あ、うん」 「絶対空けとけよ、今から約束!」 「…わかった…」 いくらなんでも不自然だよな… と、自分でも思ってはいたが… 律也に何て言えばいいのか、 どんな顔して一緒に過ごせばいいのか、 僕には分からなかった。 そりゃあ以前の僕だったなら、 誰としようが、そんなの全く気にならなかった。 でも今は違う… 真剣に律也とつき合っているつもりだし… 彼を好きだし… 出来ることなら彼を裏切りたくなんかなかった。 でも、現実に…こうなってしまった。 律也に知られたら… 律也はどう受け止めるだろうか… 僕はずっと思い悩んでいた。 そして約束の日… 試験終わっても、すぐには律也の所へは行けず、 僕は雅己と2人で夕食のための食堂にいた。 「何かまた最近、落ち込んでない?」 雅己が僕に訊いてきた。 「…そんな風に見える?」 「うん。それにこの頃、日野さんともあんまり会ってないでしょ」 「…うん、まあね。でもほら、僕サークル入ったからさ、忙しくなっちゃって…」 「日野さん、心配してたよー。昨日会ったとき、何か変わった事ないかって、訊かれた」 「ホント?そりゃーごめんね。かえって迷惑かけちゃったねー」 なんて話していると、ちょうど向こうから、 律也が近寄って来るのが見えた。 「郁ー!」 「あっ…律也」 僕は少し気まずい表情になったが… すぐに取り繕って言った。 「ごめんね、食べ終わったら行くつもりだったんだ。待ってた?」 「そうか…わかった。じゃ、待ってるわ」 律也は、僕の頭に手を置いて続けた。 「絶対…来いよ…」 「…ん」 そして律也は、雅己に軽く手を振り、 食堂を出ていった。 「なんだ、今日約束してたんだ…」 「うん…そう」 そして夕食を食べ終え…食器を片付けてから… 僕は雅巳と別れて、1人で律也の部屋に向かった。 …どうしようか…言うべきか、隠し通すか… でも、あのとき奴がビデオカメラを回していた事が ものすごく気掛かりだった。 ぐるぐると考えを巡らせながら… 重い足取りで、律也たちのへやのある棟へ入った… そのとき… 「…!!…」 突然、目の前に人影が立ちはだかった。 「何…うわっ!?」 プシューーッと、 急にスプレーのようなモノを吹き付けられた。 スプレーの霧の向こうに、 薄っすらとその人物の顔が浮かんだ。 「…黒岩…!!」 それが、あの恭吾である事が分かったときには、 僕はもう、そのスプレーを吸い込んで 意識が遠くなりかけていた。 「…」 そしてその場に崩れそうになった僕を、 恭吾は素早く抱きかかえ、 そのまま階段を駆け上り、自分の部屋に連れ込んだ。 僕が気が付いたときには… 今度は恭吾の部屋のベッドの上だった。 既に服は脱がされ、 恭吾が僕の身体の上に覆い被さっていた。 薬のせいで、身体の自由が効かなかった。 僕は、かろうじて動く口を開け…精一杯叫んだ。 「…ひ…きょうもの…!」 「何とでもどうぞ。これが僕のやり方なんで…」 「…んっ」 そして恭吾は、僕の口を塞いだ。 ひとしきり僕の口を舐め回してから、 くちびるを離れた恭吾は、僕を見下ろして笑った。 「今日は縛ってないからね…嫌だったらいくらでも逃げられる筈だから」 そう言って彼の手は、僕の乳首を弄った。 「…んんっ…」 逃げられなかった… 手も、足も…動かなかった。 「可愛いな…こんなお前が、僕の手の中で気持ちよくなってくのを見れるって、すごく幸せ…」 僕はゾッとした… そんな狂気じみた台詞を… 過去にも聞いた事があった。 こいつは危険だ。ちょっと狂ってる… そう思ったところで、 今の僕にはどうする事もできなかった。 窓の外で… ピカッと何かが光ったような気がした。 でも、そんな事はどうでもよかった… 薬で動けない身体のまま… 僕は再び、恭吾に犯された。 何度も、何度もイかされながら…

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