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ぼくらの再会

それからすぐに、結城は僕の病室を訪れたが… 僕はすっかり眠り込んでしまっていて、 全然気付かなかった。 結城が静かに病室を出ると…冬樹が立っていた。 結城は小さな声で言った。 「今…よく眠ってる。顔…見てくるか?」 「…」 冬樹はゴクンと唾を飲み込んだ。 そして結城の目をじっと見つめ…小さく頷いた。 彼はそっと…病室のドアを開けた… 足音を立てないように… 僕を起こさないように… 冬樹はとても静かにゆっくり、僕に近づいてきた。 彼はそっと、僕の顔を覗き込んだ。 目を閉じた…その目尻に、少しだけ涙が零れていた。 冬樹は震える手を、そっと伸ばした。 そしてその指先が… 本当に、ほんの少し…僕の頬に触れた… そのとき… 「ふゆき…?」 そう呟きながら…僕は少しずつ…目を開いた。 「…」 「やっぱり冬樹だ…来て…くれたの」 冬樹はとても驚いたが… すぐに冷静に…僕の顔を撫でながら言った。 「ああ…律也にフラれて落ち込んでるんじゃないかと思って…」 それを聞くと、僕はたまらなくなった。 両方の目から、涙がこぼれ落ちた。 「…本当に…好きだったんだ…律也のこと…」 「知ってるよ…あいつだって、本当にお前の事が好きだったよ…」 「…うん」 「だからこそ、中途半端な気持ちでは、お前に申し訳ないからって、ハッキリと別れを選んだんだと思う」 「…うん」 「でも…やっぱり悲しいよな…」 「…うん…」 冬樹は優しく、僕の髪を撫でた。 そしてゆっくり…顔を近付け… ほんの少しだけ…僕にそっと口付けた。 「…冬樹…」 「…ん?」 「冬樹がいるのに…なんで、僕…律也のことなんて好きになったんだろう…」 それを聞くと冬樹は、クスッと笑いながら答えた。 「バーカ、だって俺はもう、死んじゃってるだろ?」 「…あ、そうか…」 僕も、そう言って笑った。 「おやすみ…郁…早く元気になれよ…」 「…うん…ありがとう…」 そう言って僕は、再び目を閉じた。 冬樹の手が、僕の手を… しっかり握りしめてくれているのを感じながら… 僕はとても安心して、 そのまま、また眠りについた。 僕が眠ってしまったのを確認してから、 冬樹は、また静かに病室を出た。 外に、結城が立って待っていた。 冬樹を見て…結城は黙って微笑んだ。 「…あいつ…俺のこと…忘れてなかった…」 小さな声で、冬樹は言った。 と、同時に…彼の両目から、涙が溢れた。 そんな冬樹の肩を…結城は優しく叩いた。 それからすぐに、 冬樹は1人で先に病院を出て、東京へ帰っていった。 その後、僕は1週間ほど、その病院に入院していた。 リハビリ等の治療を受け… 少しずつ、体力も戻ってきた。 退院の日は、結城が迎えに来てくれた。 残りの夏休み、8月の末まで、 僕は結城の自宅で過ごすことになっていた。 「今年はちょっと忙しくて、別荘の方にいってる暇がないんだ、悪いね…」 「ううん…そんな、結城さんちに置いてもらえるだけでもありがたいのに…」 「まあ体調も万全じゃないし…ゆっくり休むんだな」 「…うん」 それから結城は、少し心配そうに切り出した。 「律也のことは、大丈夫なのか?」 僕は目を閉じ…またゆっくり開いた。 そして答えた。 「大丈夫」 「そうか…正直、少し心配していたんだ」 「あ、また冬樹のときみたいに荒れるんじゃないかってー?」 「うん…まあね」 「あのね…実は…僕、冬樹に会ったんだ」 「…えっ?」 結城は少しドキッとした。 「夢だったのか…幽霊だったのか…はっきり覚えてないんだけどね…」 「…」 「律也と別れたあとに、とにかく冬樹が僕のところに来たんだ」 「…ふうん」 「冬樹に会わなかったら、立ち直れてなかったかもしれない…」 「…そうか…」 しばらく間を置いてから、僕はまた、結城に言った。 「いつか僕を、冬樹の眠っている所に連れてって欲しいな…」 僕は、窓の外の…遠くを見つめた。 「まだちゃんと、お別れをしてないから…」 結城は少し微笑みながら言った。 「ちゃんとお別れしたら、そんな風に出てきてくれなくなるかもよ」 「あ、そうか…うーん…どうしようかな…」 「ふふっ…まあゆっくり考えて」 「…うん」 そして、僕はそのまま車に揺られて、 ウトウトとしていた。 薄れゆく意識の中で… 結城が小さく呟いたのを…僕は聞いた。 「ちなみに…黒岩は潰したから…」 車を走らせながら、そのときの結城は… とても恐ろしい目つきに変わっていたが 僕はそれには気付かず、眠り込んでしまった…

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