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生還(1)
車は結城のマンションに着いた。
僕らは車を降りて、
エレベーターで結城の部屋に戻った。
彼の後についてリビングに入り…
僕はソファーに座った。
「少し…飲むか?」
結城が訊いてきた。
「うん…あ、僕がやるよ…」
そう言って僕は立ち上がり…キッチンへ行った。
アイスペールに氷を入れて持ってきた。
結城は、リビングの戸棚から、
ウイスキーの瓶とグラスを取り出した。
僕らは並んでソファーに座り、小さく乾杯した。
結城は、僕の髪を撫でながら…
しみじみと言った。
「ホントに…元気になってよかった…」
「…」
僕は黙って微笑んだ。
「もっと早くに気付いてやれなくてすまなかった…」
「ううん…」
僕は首を振った。
「僕が隙だらけだったんだ…」
そしてくちびるを噛み締めて、続けた。
「もっと強かにならなきゃダメなんだな…」
「…前向きだな…」
「いい勉強になったよ…」
「命懸けだったけどな」
「…ふふっ」
と、結城は急に…
僕の身体を自分の方へ引き寄せた。
「お前を失わなくて…ホントによかった…」
「…」
結城は…あの夏の、プールの中のように…
力強く僕を抱きしめた。
久しぶりの結城のぬくもりが…
ひしひしと伝わってきた。
僕は、小さな声で言った。
「結城さん…」
「…ん?」
「甘えても、いいですか…」
「…いいよ」
「…また、僕を…抱いてくれますか…?」
それを聞くと彼は、ゆっくり身体を離れて…
僕の顔をじっと覗き込んだ。
「…むしろ逆に訊きたい」
「…」
そして僕の顎をくいっと掴んだ。
「抱いていいのか?」
「…」
僕は思わず、両手を伸ばして、
それを結城の首に絡みつけて、言った。
「…ごめんね、結城さん…僕、都合の良い時ばっかり結城さんに甘えてる…」
結城は、黙ってそっと僕に口付けた。
そしてそのまま…ソファーに僕を押し倒した。
口を離れ…僕を見下ろして、彼は言った。
「俺を求めてくるときのお前を…抱きたい…」
「…」
「俺は、いつでもそう思ってる」
俺って言ってる…素の結城さんだ
めちゃくちゃ気持ち良くさせてくれる…
僕の大好きな結城さんだ。
僕はまた、両手を伸ばした。
そして彼の頭を掴んで、僕の方から口付けた。
僕の方から…結城の口に舌を入れた。
「…んんっ…」
お互いに舌を行き来させ…何度も絡ませた。
身体の芯から、
ゾワゾワと何かが湧き上がってくるような気がした。
そして結城は、僕のシャツのボタンを外した。
彼は両方の手で、僕の乳首をゆっくり弄った。
「…んっ…」
そのときの僕の身体は…
まだ何となく、霧がかかったような感じで…
以前のように敏感に感じることが。
実は、出来なくなっている気がしていた。
結城はそれを察していたんだと思う。
彼は、僕のズボンを下着ごと脱がせた。
ゆっくり…ゆっくり…
僕の身体に、少しずつ指を這わせ…
そして例のあの異様な舌で、
身体の隅々までの、あちこちを刺激していった。
それは、僕の身体にかかった霧を…
少しずつ取り払っていった。
「…んんっ…あっ…」
やがて僕は、声を上げた。
結城の舌が…僕の中の快感を呼び覚ました。
「あっ…ああっ…」
「…感度が戻った?」
「…あ…んん…ん…気持ちいい…」
僕のモノは、徐々に小刻みに震えだした。
結城は、そっと…それに触れた。
「…ああっ…」
それはビクッと震えた。
それを確認すると、結城は立ち上がり…
僕の身体を抱き上げた。
そしてそのまま、隣の寝室に入っていき、
ベッドの上に、僕の身体を横たえた。
結城は、僕を見下ろしながら、服を脱ぎ捨てると…
自分もベッドに上がり、
僕の身体の上に覆い被さった。
結城の肌のぬくもりが…僕の肌に密着した。
これ以上ないくらいの、快感と安心感だった。
僕は、彼の背中に手を回した。
ひとしきり抱き合った後に…
結城は身体を起こし、僕の両足をゆっくり開いた。
そして、僕の秘部を…指で確認した。
「…んんっ…」
それから彼は、自分のモノを、
またゆっくりと…僕の中に押し込んだ。
「…あ…んんっ…」
懐かしくて、とても気持ちの良い…
結城のモノが僕の中の、奥までいっぱいになった。
「はっ…ああ…」
それはまた、ときどきビクビクっと脈を打ち…
そのたびに僕は声を上げた。
「あっ…あっ…」
僕のモノは、いきり勃った。
結城は、ワザとそこに身体を押し付けながら…
自分の腰を動かした。
「はあっ…ああっ…あっ…」
結城は、揺れながら…僕の顔を撫でた。
僕はもう、目を開けていられなくなった…
「あっ…ああ…結城…さん…」
彼の名を呼びながら…
僕は絶頂を迎えた。
結城もまた…
身体を震わせ、僕の中に出した。
「はあ…ぁ…」
「はぁ…はぁ…」
僕の中に溢れる、
結城のぬくもりの心地良さを感じながら…
僕は余韻に震えていた。
結城はそのまま…僕にそっと口付けた。
そして、言った。
「お前の身体だ…どう使おうと構わない…」
言いながら、
彼は僕の、首から肩の辺りを撫でた。
「この身体を使って、お前がいくら金を稼いでくれても構わない」
そして、結城は…
僕の目をじっと見つめて、続けた。
「…でも…どうか、大事にして欲しい…」
「…わかった」
僕は少し微笑みながら、小さく頷いた。
「…結城さん…ありがとう…」
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