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生還(2)

それから数日後… 僕は結城に送られて、学院の寮に戻った。 「結城さん、ホントに色々ありがとう」 「身体に気をつけて…無理はするなよ」 「うん…結城さんもね」 「はは、わかった…あ、正田くんにも、くれぐれもよろしく伝えておいて」 「わかった」 そして結城の車を見送り… 僕は自分の部屋に戻った。 結局やっぱり荒れた夏休みだったなー でも、無事に戻れてよかった。 今年は雅巳に怒られることもないだろう。 自分の部屋で、新学期の準備を簡単に済ませてから… 僕は、弘真の部屋を訪れた。 コンコン。 「はいー」 ガチャッ… ドアが開いて、弘真が顔を出した。 「おおー郁、戻ってきたかー」 彼はとても嬉しそうに、僕を出迎えてくれた。 「まー入って」 「…うん」 僕は促されるまま、ソファーに座った。 「もう身体、大丈夫なの?…飲める?」 「あ、うん…大丈夫」 そして冷蔵庫から、 冷えた缶ビールを2本取り出してきて、 僕に1本渡した。 「じゃあ、全快祝いだな」 そう言って弘真は、僕の向かい側に座ると、 缶ビールをプシュッと開けた。 「乾杯ー」 僕も、空けて…ゴクンと、飲みながら、 彼に言った。 「弘真…本当にありがとう…僕が今、こうしていられるのは、君のおかげだよ…」 「ははっ…別にそんな大袈裟に言うほどのことじゃないよ…ただ単に、お前の事が好きでやっただけ…」 そしてまた、缶ビールをゴクゴク飲んだ。 「結城さんも、よろしく伝えてって言ってた」 「あーあの人ね…」 弘真は、ちょっとだけ、複雑な表情になった。 「…退院してから、ずっとあの人の所に居たの?」 「…うん」 「どういう関係なの?あの人とは…」 「うーん…」 「あ、別に言いたく無ければいいよ」 「いや全然、そうじゃなくって…何ていうか、説明が難しいっていうか…」 結城と僕の関係を… 他の人に、どう説明したらいいものか… 「…たまたま…出逢った…人…かな…?」 「何だそりゃー」 「でも、他に説明しようが無いなー…たまたま出逢って、それで、仕事とか紹介してもらうようになって…そのままズルズルお世話になっちゃってる感じ?」 「ふうーん…」 分かったような、分からないような… そんな顔をしていた弘真だが… 所詮似たような人種であることは、 自分でも薄々は気付いていたのだろう… 結城が、僕にそこまでする気持ちを、 彼は妙に納得できる節があった。 そしてまた、弘真は改めて言った。 「いやでも、ホントに…元のお前に戻ってよかった」 「…うん」 「辛かったよなー」 「まあね…」 僕もまた、ゴクンと飲みながら、続けた。 「二度とあんな思いはしたくない…」 僕は少し下を向いて…呟くように言った。 「…」 弘真はそれを見て…あの、病院での… 僕が拘束された場面を思い出していた。 「…俺も…もう二度とあんな思いはしたくないな…」 「…」 「去年…面白がって軽い気持ちで、薬使って遊んだ事も…今では後悔してる…」 「…」 彼は、続けた。 「…俺は…お前を、守りたい」 「…えっ」 缶ビールをテーブルの上に置き… 弘真はじっと、僕の目を見た。 そして、真剣な表情で言った。 「俺と…つき合ってくれないか?」 僕は、少し驚いた。 あの遊び慣れた弘真から、 そんな風に真っ直ぐな台詞が出てくるなんて… 「…」 でも僕は…表情を変えなかった。 冷静に、何事も無いかのように…答えた。 「ありがとう…弘真…今回のことは、本当に感謝してるんだ…でも…」 「…」 「今のは…聞かなかった事にする…」 「…えっ」 「だって…君みたいな遊び人の、そんな台詞を信じられると思う?」 弘真は…失笑した。 「ははっ…そっか…そうだよなー」 笑いながら、弘真は…僕の隣に移動してきた。 「…でも、友だちではいてくれるのか?」 そう言って彼は、僕の肩に手を回した。 「…何、どんな友だち…?」 「まーその…こういう…お友だち…」 弘真は、ゆっくり僕に顔を近づけてきた。 彼のくちびるが…僕のくちびるに触れる寸前で、 弘真はピタッと止まった。 そして言った。 「返事は?」 「…よろしくお願いします」 僕は答えながら…両手を彼の背中に回した。 そして、僕の方から、彼に口付けた。 そっとくちびるが離れると… 僕はまた言った。 「弘真は僕の命の恩人だから…君からはお金は取らない事にする」 「…っ」 弘真は一瞬、目を丸くした。 「…ふっ…あはははっ…」 そして笑って言った。 「すげーな、完全復活かよー」 彼はそのまま…ソファーに僕を押し倒した。 「そう言う事なら遠慮なく…」 弘真は、僕のシャツのボタンを外しながら言った。 「一生…身体で払ってもらうわー」

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