131 / 149
穏やかな情交(2)
楽しいクリスマスを終えて?
僕は学院に戻った。
弘真が車で送ってくれた。
「じゃあ、また来年ー」
「うん、良いお年を」
そんな感じで僕らは別れた。
弘真はこの後の冬休みを利用して、オーストリアへ行くらしい。
他の3年生は、受験で大変なのになー
僕は、今年の年末年始は、
また結城さんの自宅で過ごす事になっていた。
今日戻った連絡と、数日後の外泊届のために、
僕はいったん事務局に寄った。
と、たまたまそこに、富永がいた。
「あ、先生…」
「おう、お前、まだ居るのか」
僕の手続きが終わるのを待って、
富永は、僕と一緒に事務局を出た。
「いつ帰るの?」
「僕は…年末ギリギリまでいます」
「そうなのか…悪いが俺は、とりあえず今日これで、来年までは休みだ」
「そうなんですねー」
彼は、何やらソワソワと…
何か言いたいことがありそうだった。
…仕方ないので、僕は訊いた。
「藤森さんと、どっか行くんですか…?」
富永は、パァっと目を輝かせて答えた。
「そーなんだよー…っていうか、あいつが俺んちに、来ることになってるんだ」
あーはいはい
ノロケたかったんですねー
「それは楽しみですね、よろしく伝えてください」
「ああ、伝えとく」
そして彼は、若干含み笑いながら…続けた。
「お前ネタも、まだ使ってないからなー」
「…」
「じゃあね、また来年」
「あ、はい…楽しんできてくださいー」
そう言って僕は、富永を見送った。
きっと楽しくお仕置きするんだろうなー
ちょっと羨ましいな。
まいっか…
僕も、また結城さんに楽しいプレイをしてもらおう…
なーんて思いながら、僕は自分の部屋に戻った。
学院を出た富永は、車で都心に向かっていった。
1時間ほど走って…
藤森の自宅近くの、とある駅前に車を停めた。
(ちょっと早かったかな…)
思いながら彼は、煙草に火を付けた。
藤森は自宅から、もっと都心の大学に通っていた。
彼が卒業してからというもの…
2人が会える機会は、限られていた。
夏休みなどの、長い休み以外は、
せいぜい月に1度…
会えるか会えないかっていう感じだった。
それから20分くらい経っただろうか…
車のサイドミラーに、藤森の姿が映った。
富永は、わざと気付かないフリをして
前を向いていた。
コンコン。
藤森が、車の窓を叩いた。
「おう…」
それはそれは嬉しくてたまらなく気持ちを抑えて、
富永は冷静に、ドアのキーを開けた。
「先生…久しぶり…」
藤森がドアを開けて、助手席に乗り込んだ。
「元気だった?」
「…うん」
富永は…抱きしめたい気持ちを必死に堪えて…
そっと彼の頬に手を触れた。
藤森は…その富永の手を…両手で握りしめた。
「…」
富永は、必死に堪えた。
「…とりあえず、いったんウチに行くか」
そう言って彼の手を離し…
富永は、急いで車を発進させた。
「クリスマスはどうしてたの?」
車を走らせながら、富永が訊いた。
その年のクリスマスは平日だったので、
僕らとは違う、働く職員な先生たちは、
普通に出勤だったのだ。
「…サークルのクリスマス飲み会ってのはあったけど…イブの日は、普通に家族で食事だったなあ…」
藤森は、特に気にしない感じで答えた。
「…来年こそは、一緒に過ごしたいな」
「そう?…まあ、休みが合えばでいいんじゃない?」
「えー?クリスマスとか、特別な日に、一緒に居たくない?」
「うーん…別に…」
「えー何で?」
「…だって…別に敢えてその日っていうのが、僕はあんまり分からない…」
あーたまにいるよね、
そういう…記念日とか、全くどうでもいい人…
藤森は、続けて…呟くように言った。
「クリスマスの日なんかより…今…今日の方が、僕にとっては特別なんだけどな…」
「…」
車がちょうど信号で止まった。
「奏の言う通りだな…」
そう言いながら富永は、
左手で…藤森の太腿を撫でた。
奏…藤森も、彼の手の上に…自分手を重ねた。
それからまた1時間くらい走って、
ようやく車は、学院よりもう少し先の、
隣の県境に近い、富永の自宅マンションに着いた。
車を降りて、2人はエレベーターに乗り…
そして、富永の部屋に着いた。
鍵を開けて…部屋に入った途端に、
我慢の限界を超えた富永は、
勢いよく、藤森を抱きしめた。
「…会いたかった…奏…」
「…先生…」
藤森も、力強く抱き返した。
「顔よく見せて…」
しばらくして富永は、藤森の顔を両手で押さえた。
「…」
そして、思い切り…彼に口付けた。
「…んっ…」
そのまま2人は、何度も何度も…
お互いの温もりを確かめ合いながら、
くちびるを求め続けた。
ともだちにシェアしよう!