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爽やかな冬休み(1)

あっちの2人が仲良く、 ラブラブな冬休みを過ごしてる真っ最中… 暮れも押し迫った頃… 僕は、結城の自宅マンションに来ていた。 出勤はしないものの、 やはり色々と仕事が残っているらしい結城は、 自宅のパソコン前で、過ごしている時間が多かった。 大晦日の日… 昼過ぎになってもパソコンに向かっている結城に、 僕は言った。 「ちょっとスーパー行ってきていいかな」 「…何で?」 「暇だし…料理でもしようかなと、思って…」 「構わないけど…1人で行けるのか?」 「大丈夫、ちょっと行ってくるねー」 「ああ」 スーパーに1人で行けないのは、 結城さんくらいだよなーなんて思いながら… 僕は、近所のスーパーに買い出しに行った。 ああ…スゴい年末感… 正月のお節料理や、 年越し蕎麦がいっぱいな、 スーパーの賑やかな売り場を目の当たりにして、 僕はとても久しぶりに、庶民の感覚に戻った。 結城さんは、こういう文化を知ってるのかなー 年越し蕎麦…作ってみようかな… そしたら、同じつゆでお雑煮もできるかな… とはいえ、普段料理をしない結城の家に、 あんまり食材を残しておくワケにもいかないし… ゆで蕎麦と… つゆの素は、いちばん小さい瓶を選んだ。 小松菜は1束あっても大丈夫かな、 ネギも、いちばん少量の小ネギにした。 天ぷらは…絶対あすこでは出来ないな… 仕方なく、惣菜売場にあった海老天を選んだ。 お餅は… みんなでっかい袋だなー …と、横に鏡餅コーナーがあるのに気付いた。 あ、これでいいか。 中身ちょびっとしかないし、 飾りにもなるから一石二鳥だ。 鏡開きには全然早すぎるけど、まあいいよね。 僕は、小さめの鏡餅セットを選んだ。 お節っぽいのも、 明日のつまみに少しあってもいいかなー 僕はお節売り場に移動した。 かまぼこと…数の子とか 数の子、処理するのはめんどくさいから、 味付きのでいいかな。 それでいいか、お雑煮もあるし… 僕はレジに並んだ。 まだ昼過ぎだというのに、割と長い列ができていた。 待ちながら…僕はふと思った。 そう言えばあの家…鍋あるのかな… 待っている間中、散々悩んだ末に… 僕はそのスーパーの2階のキッチン用品売り場で 蕎麦が茹でられるくらいの大きさの鍋を買った。 買い物、楽しかったな 結城さんちにいるときは、いつもそうしよう。 もし無かったら、フライパンも買ってもらおう… そんな事を考えながら、僕はマンションに帰った。 「ただいまー」 「んー」 結城は、まだパソコンに向かっていた。 僕はキッチンで、買ってきた物を開けた。 そして何よりもまず先に… そこら辺の戸棚をバタバタと開けて、鍋を探した。 …やっぱり無かった。 買ってきてよかったー そしてまたハッと気付いた。 そして下の方の戸棚をバタバタと開けた。 …かろうじて、レモンとかを切るための、 ペティナイフは、あった。 包丁は、無かった。 まな板も無かった。 ザルもある訳ないよなー ま、いっか… 最低限、鍋さえあれば、なんとかなるだろう… まずは小松菜を洗う。 鍋にお湯を沸かして、さっと茹でた。 ザルに上げたいところだが…無いので… 氷トングで小松菜を抑えながらお湯を切った。 で、水で冷ます…を繰り返して、 ようやく手で触れるぬるさになった。 これじゃまるでサバイバル料理だなー なんて思いながら… 茹だった小松菜の水気を絞り、皿にあげて… 皿の上で、ペティナイフで切った… 続いて、蕎麦も茹でておく。 同じように、鍋にお湯を沸かして… 茹だったら…小松菜同様にお湯を切る… うーん… 細いから押さえきれないなー 何本も流れてしまった… で、また気付いた… 蕎麦用のどんぶり的な器なんて、 この家にあるのか?! 僕はまた、食器棚を漁った。 奥〜の方に、なんと、良い感じの器が発見された。 ほぼ使われた形跡はなかったが… ちゃんと2つ揃っていた。 僕はそれを引っ張り出して、よく洗った。 そして、茹だった蕎麦を分けて盛った。 もしかしたら、 食器ごと備付けのマンションなのかもしれないなー いやでも、だったら鍋もあってもいい筈か… そんな事を考えながら… また同じ鍋を洗って、蕎麦のつゆを作った。 と言っても、 お湯を沸かしてつゆの素を入れるだけだが… ネギも…平たい皿の上で切った… あとは、食べるときに、 小松菜とネギと、海老天を乗せて… つゆを温めてかければOKだ。 かまぼこも切っておこうかなー 蕎麦にちょびっと乗せてもいいし… かまぼこも皿の上で切った… 「何作ってんだ?」 仕事がひと段落着いたらしく、 結城がキッチンを覗きにきた。 「あ、結城さん、年越し蕎麦って知ってる?」 僕は訊いた。 「知ってるさ。赤とか緑とか、あるヤツだろ?」 「は?」 結城さんのお母さん… ちょっとこの子、世間知らずにも程がありますけど 大丈夫ですかねー

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