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爽やかな冬休み(5)

年を越して、何度も情交を重ねたあと… 僕は結城の身体に腕を絡めてぐっすり眠った。 そして、彼の腕の中で、 気持ち良く、目を覚ました。 「…うーん」 見上げると、結城はまだぐっすり眠っていた。 僕は、彼を起こさないように… そっと彼から手を離そうとした。 と、結城がパッと目を開けて… 僕の腕を掴んだ。 「…ごめんね…起こしちゃった…」 「…」 結城は無言で…僕の頭を抱き寄せた。 「…ん」 そのまま僕らは、どちらからともなく口付けた。 「…何時?」 ゆっくり口を離れた結城が言った。 僕は起き上がって…時計を見た。 「あーもう14時だ…」 「そんなに寝たか…」 結城は呟きながら、再び目を閉じた。 「ふああ〜」 大きくあくびをしながら… 僕は、昨夜のことを思い出した。 酷くされても、大丈夫だったな… 途中で薬が欲しくなることもなかったし。 そして、目を閉じた結城の顔を見た。 ま、相手が結城さんだったから… なのかもしれないけどな… 「…ありがとう…」 僕は、とても小さい声で、呟いた…。 「…ん…なに?」 結城が聞き返した。 「なんでもない…先に起きるね…」 僕は少し照れ臭そうにそう言って… 布団から出た。 クローゼットの、僕のためのスペースの中から 適当に着替えを出し… それを持って、浴室に向かった。 途中、リビングに放置されていた衣服や、 そのままになっていたグラスも片付けた。 そしてとりあえず…シャワーを浴びた。 僕がちょうど脱衣所で身体を拭いているときに、 結城も、そこへやってきた。 「俺の着替えも出しといてくれる?」 「…わかった、なんでもいいの?」 「任せる…」 そう言って、結城も浴室に入っていった。 着替え終わった僕は、再びクローゼットに行き、 結城の着替えを見繕って、脱衣所に持っていった。 それからドライヤーで、少し髪を乾かてから、 また寝室にいって、 乱れたベッドを綺麗に整えた。 結城が持ち込んだグラスも片付けた。 「…」 そんなこまごまとした事をやりながら… 僕は昨夜の結城の言葉を思い出していた。 本当に…僕がずっとここで、 結城さんのお世話をしてもいいんだけどな… そんな事を考えながら、 僕はキッチンに入って、グラスを洗った。 ドライヤーの音が聞こえてきた。 僕は脱衣所に行った。 そして、結城の手からドライヤーを取った。 「座って、やってあげる」 「ああ…」 結城を椅子に座らせて、僕は彼の髪を乾かした。 長い髪をふわふわと風にあてながら、 何となしに僕は訊いた。 「なんで髪伸ばしてるの?」 「…いや、特に理由はないが」 その長い髪は、僕に懐かしい人を思い出させた。 「…切るのが面倒だから…かな」 「ふふっ…」 やがて髪が乾くと、 服を着て結城は書斎に向かった。 正月なのに、今日も仕事なのか… そう思いながら、僕はキッチンに入った。 終わったら、日本酒で乾杯できるように つまみとお雑煮の準備をしておこう。 僕は冷蔵庫から、かまぼこと数の子を出して、 適当な皿に盛りつけた。 そしてまた、鍋にお湯を沸かして、つゆを仕込んだ。 お餅はどうしようかなー 僕は玄関に飾った、鏡餅を取りに行った。 1日も飾っておかなかったな… なんて1人で笑いながら、そのパックを開けた。 真空パックの餅が5つ入っていた。 おおーちょうど良い量だったー 鍋もないようなキッチンだが、 ちゃっかり電子レンジは備えられていた。 お餅はこれで加熱できるな、よかった。 あとは、結城さんの仕事が終わるのを待つばかりだ。 僕はリビングに行った。 そして、自分の荷物の中から宿題を出した。 明日には寮に帰る予定になっていた。 少しでも、進めておかないとなー 僕はぼちぼちそれをやった。 結城が書斎から出てきたのは、 もうまた、日が沈んでからだった。 「あ、仕事終わった?」 「ああ」 「ごはんにする?」 「あるのか?」 「お雑煮あるよ」 「お雑煮…」 出た。やっぱり知らないのかー 僕はさっそく、仕上げに取り掛かった。 餅をレンジで加熱してる間に、つゆを温めた。 昨日の蕎麦のどんぶりに餅を入れ、つゆをかけ… 昨日の小松菜と、かまぼこを入れるだけっていう とてもシンプルなお雑煮と… かまぼこと数の子… そして日本酒で、僕らは乾杯した。 「あけましておめでとうございます」 「そうだったな、あけましておめでとう」 結城は、お雑煮を…また興味深々と眺めた。 「おぞうに…っていうのかコレ」 「そう、普通の家では、お正月にこれが出るんだよ」 「へえー」 「いや、ホントはもっと色々と具が入るけどね」 結城は雑煮を食べながら、日本酒を飲んだ。 「うん、日本酒に合うな」 そりゃーどっちも日本の伝統文化ですから。 「お前のおかげで、また良い経験させてもらった」 結城は、とても嬉しそうに言った。 そんな彼の姿を見るのが、僕もとても嬉しかった。

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