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新年度に向けて(2)
卒業式が終わった。
そして3年生は、次々と寮を出て行った。
ついに律也も、学院を去る日がきた。
「やっぱり感慨深いな…」
律也は校舎を見上げながら言った。
「中等部からずっと…だったからね」
そして、見送りの友人たちと、
順々に握手を交わしていった。
最後に、律也は僕の前に立った。
「…郁…ホントにありがとう」
そう言って彼は、僕を抱きしめた。
「…」
僕も、彼の背中に手を回した。
それを見て弘真が、茶化すように言った。
「彼女に言い付けてやるー」
「あはは…」
律也はゆっくり僕から離れ、迎えの車に向かった。
「さよなら、律也」
「うん…みんな元気でね」
彼は車の窓から、いつまでも手を振っていたが…
やがて、見えなくなってしまった。
さよなら、律也…
僕はしみじみと、心の中で呟いた。
「さーて、俺も準備しないとなー」
弘真が言った。
そして僕らは…
僕の荷物と弘真の荷物が入り混じって、
とても雑然としている部屋に…戻った。
「本当に僕、今日からここで寝られるのかな…」
部屋の引き渡しは今日だったので、
既に僕の元いた部屋には、新しい住人が入っていた。
弘真も今日の夜には迎えが来る予定だった。
それまでに、何とか荷物をまとめないと…
「なにせ6年分だからなー」
「言い訳はいいから、手を動かしてください!」
なんで僕が…って気も、しなくもなかったが…
今夜から、ここで快適に過ごすために、
僕は必死に手伝った。
「ビデオとか、置いてっていい?」
「いや、たぶん観ないから、持って帰ってください」
「…なに、お前、なんか怒ってる?」
「…怒ってません」
「敬語になってるし…」
そう言いながら、弘真は…
後ろから僕に抱きついてきた。
「あーもう、そーいうのはいいから!」
僕は彼の手を振り解こうとした。
弘真は、無理やり…僕の顔を両手で押さえつけた。
そして、僕の目をじっと見つめた。
「充電したら動く…」
そう言って彼は、僕に口付けてきた。
「…んん…」
そして…
荷物に埋まって、足の踏み場にも困るような床に、
僕を押し倒した。
「…ちょっと…やめてよ、弘真っ…」
彼は、僕を見下ろして言った。
「…だって…最後じゃん」
「…」
そしてニヤッと笑って続けた。
「すぐ終わらせるから…」
弘真は、さっさと自分のズボンを脱ぎ捨てた。
そして僕のズボンも脱がせた。
それから僕のシャツのボタンを外しながら、
僕の乳首を弄った。
「…んんっ…あっ…」
僕がビクビクと感じてきたのを確認すると、
彼はその手で僕のモノを握った。
「…はっ…あ」
そしてそれを扱きながら、
僕の乳首を口に含んだ。
「は…あっ…あっ…」
僕のモノは、すぐにいきり勃った。
弘真はそれを見て、手を離すと、
僕の両足を開いた。
「ホントに感度いいよね、お前…」
言いながら彼は、自分のモノを、押し込んできた。
「あっ…はあっ…」
「早くしなきゃね…」
そう言って弘真は、すぐに腰を動かした。
激しく何度も、彼のモノが僕の奥に突き当たった。
「あっ…あっ…あっ…」
その度に声が漏れてしまった。
そして僕らは、ほぼ同時に…イった。
「はぁ…はぁ…」
僕は彼を見上げて言った。
「…充電…できた?」
「うん」
「じゃあ、頑張ってください」
「……はい」
夜までかかって、
ようやくだいたい片付いた荷物を、
弘真の家の関係の人達が、運び出しにやってきた。
それらが積み込まれて、
とうとう弘真自身も、ここを出る時間となった。
「郁…お前に、あげたい物があるんだ」
「…なに?」
「これ」
そう言って弘真は、
小さい銀色の携帯電話を取り出した。
「俺が、お前にかける専用の電話…」
「えっ…弘真ってば…ホントに夜這いに来るつもりなの?」
「当たり前だろー」
そして、ボタンを押しながら、続けた。
「メモリーNo.1が、俺の番号…」
プルルル…と、
弘真のポケットの中から音がした。
「そんで、これの番号は…俺だけの秘密…」
「…」
「他の誰かとのお喋りに使えないようにね…」
「悪いけど弘真…」
僕はちょっと考えて、言った。
「こっちからかけたら喋れちゃうんじゃない?」
「あっ!! そうかーしまった、気付かなかった…」
「あはははっ…」
そして弘真は、車に乗り込んだ。
「じゃあね」
「うん…元気でね」
車は走り出した。
手を振る弘真の姿が見えなくなってから…
僕は自分の部屋に戻った。
やっぱりちょっと…寂しいかな…。
僕は冷蔵庫から、
弘真が残しておいてくれた缶ビールを取り出した。
これから1年間…ずっとひとりなのか…
何不自由ない部屋よりも…
狭くても、雅巳がいた方がよかったかなー
そんな事を考えながら、
僕は缶ビールを開けて、飲んだ。
と、突然…
プルルル…
さっきの、弘真が置いていった携帯が鳴った。
「…はい…」
ボタンを押して…僕は小さい声で応えた。
「あ、俺ー」
電話の向こうは、もちろん弘真だ。
「早速だけどさ、明後日そっち行っていい?」
「…ははっ」
この分じゃ、
ホントに1人でいる時間の方が少ないかもなー
僕は、携帯を耳にあてたまま、
ゆっくりソファーに寝転がった。
この部屋で1年間…
楽しい学院生活が送れることを願いながら、
僕はビールを片手に、
弘真の声に耳を傾けていた。
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