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新たな出逢い(5)

もうちょっと長引くかなと、思っていたのだが… コトが終わると、園部先生は、 さっさと僕を、隣の防音室に連れていった。 そして…レッスンが始まった… 「両手を前に出して…片足を後ろに上げて…」 「…」 僕は言われる通りにした。 「身体は、前に倒さない、真っ直ぐ…」 「…っ」 背中が痛いー 「で、はーって声出してみて」 「…はー」 「もっと、上に向かって」 「はー」 …そんな感じで… 発声から、滑舌から、ソルフェージュまで… 園部先生は、とても本格的なレッスンを、 僕に施してくれた。 「はぁ…はぁ…ありがとう…ございました…」 「…こちらこそ、悦い思いをさせて頂いたからね」 そう言って、園部は… 僕の肩を抱いた。 「僕は、芸術家っていう自負があるが…おそらく君も、同類だと思う」 「…」 「君のセックスは、とても芸術的だった」 「…」 そーいうもんなんですかねー そこまでの自覚は無いですけど… 「よかったら、またレッスンさせて欲しい」 「ホントですか?…是非よろしくお願いします」 それを聞くと園部は… 僕を自分の方へ抱き寄せ…口付けた。 「次回も…レッスン代を払って頂けるのかな…」 「…もちろんです…」 僕はそう答えて… 今度は僕の方から、彼に口付けた。 そんな感じで… 僕は、2〜3日おきに、歌のレッスンを受けた。 もちろんな物々交換なので… その度に、園部にご奉仕させて頂くわけだが… ゴールデンウィーク前の土曜日… 僕は弘真に、それを打ち明けた。 「えええーマジかー」 「…うん、でもおかげで、ちょっと声が出るようになった気がする…」 「まあ、お前がいいならいいんだけどさー」 弘真は、若干拗ねたような表情になった。 そして、続けた。 「今日は…練習終わったら泊まる」 「そう…」 「あーもうー何でつき合ってくれないんかなー」 弘真が、若干ふてくされた感じで言った。 「…だってさー」 僕は、運転中の彼の太腿に手を置いて、言った。 「弘真のこと本気で好きになったら、ヤキモチ妬きすぎて死んじゃうかもしれないからね…」 「……」 弘真は、何も言い返せない様子だった。 その日のスタジオ練習後、 一輔は、メンバーそれぞれにCDを手渡した。 「これ、一応新曲だから、聞いといてくれる?」 やっと既存の曲を覚えたばっかりなのに、 これ以上新曲が増えるのか… とても不安になった僕に、 彼は追い討ちをかける事を言い出した。 「郁、よかったら歌詞つけてくれない?」 「ええええー?!」 「あはは、まあ、どーしてもダメだったら仕方ないけど、一応チャレンジしてみて貰えないかな」 「…わ、分かりました…」 解散して、 僕はいつものように弘真の車で、学院に向かった。 僕は、彼に言った。 「あのさ、新曲のCDかけていい?」 「どーぞー」 弘真は、この後僕の所に泊まるのが、 楽しみで仕方ないような口調で答えた。 僕は、カーステレオに、 もらったCDをセットして、再生ボタンを押した。 「…」 「なんだこれ?」 それは、今までの音楽CDとは全然違って、 ドラムマシンと、ギターだけの音源だった。 「…これに歌詞つけるって…素人にはちょっと難し過ぎると思わない??」 僕は思わず、力強く弘真に言った。 「…まあ頑張れー」 弘真は言い捨てた。 学院に着いて… 弘真も一緒に、僕は部屋に戻った。 いつものようにソファーに座って飲みながら… 僕はまた、その難しい音源を聞き続けていた。 「…うーん」 「…」 「何にも浮かばないなー」 「もーいいじゃん、今日は…」 業を煮やした弘真が、 そう言って僕をソファーに押し倒した。 そして手を伸ばして、 デッキの電源を、ブチっと切った。 僕は一瞬、あーっと思ったが… 思い直して…弘真を見上げて言った。 「ごめんね…」 「…」 「弘真と一緒に気持ちよく眠れたら…明日になったら良い歌詞が浮かんでくるかもしれないよね…」 それを聞いた彼は、 また若干拗ねたように言った。 「…お前、また営業用の顔してる」 「…バレた?」 僕は、わざとらしく肩をすくめて答えた。 「本気に、なるまでイかせてやる…」 弘真はそう言って… 僕に口付けながら、僕のシャツのボタンを外した。 「…んん…うん…本気にさせて…」 僕はそう言いながら… 彼の首に、両手を巻きつけた。 本気の… そう…あのとき、体育館で聞いたような、 本気の歌詞を… いつか、本当に本気で書くことが、 僕にできる日は、果たして来るんだろうか…

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