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新たなはじまり(2)
「…恭吾…」
幻覚の中の恭吾は…
薬が切れた状態の僕を見て、笑っていた。
「…お願い…早く…ください」
「おい、郁…」
そのとき僕の前にいたのは、もちろん圭だったが、
僕には彼が、恭吾に見えていたのだ。
まさに…あの日の光景だった…
恭吾は黙って立ちすくんでいた。
「はぁ…はぁ…お願い…助けて…」
僕はまさに、泣いて彼の足元に縋った。
「僕をイかせてくれなきゃ…あげない」
「…?!」
「僕を勃たせて…挿れさせて…イかせて」
僕は震える身体で起き上がり…
幻覚の中の恭吾…
いや、現実の…圭の足元に縋り付いた。
「…!?」
突然の出来事に驚いて、呆然と立ち尽くんだ圭を…
僕は思い切り床に押し倒した。
「か…郁…ちょっと待てよ…おいっ…」
僕はそのまま、圭の股間に口付け…
勢いに任せて彼のズボンを引きずり下ろした。
「郁…やめ…」
恭吾は、こうしなければ、注射してくれなかった。
僕は震える手で、圭のモノを握り…
それを口に入れた。
「…んんっ…」
あまりに突然の出来事に…
圭は呆然と…なすがままになっていた。
「はぁ…あ…」
彼のモノは、段々といきり勃ってきた。
それを確認すると…
僕は朦朧としながら、自分のズボンを脱いだ。
「…か、郁…?!」
そして圭の上に馬乗りになり…
彼のモノを、自分の中に差し込んだ。
「はっ…あ…あ…」
「…なにっ…あっ…あ…」
彼のそれが…
僕の中に、生暖かいものを吐き出すまで…
僕は、腰を動かし続けた。
「…んんっ…あ…」
その感触を確認すると…
僕は彼の上に、バタッと倒れ込んだ。
「…はぁ…はぁ…」
「…おい、郁…大丈夫か…」
その、圭の声は…
もう僕の耳には届かなかった。
震えが治った途端に、
今度は身体中がどんどん熱くなって…
訳も分からず…そのまま僕は、意識を失った。
「…郁…郁っ?!」
ピンポーン
そのとき突然、玄関のチャイムが鳴った。
ピンポーン…ピンポーン
何回かのチャイムの後…
ガチャっとドアの開く音がした。
圭は急いで立ち上がり…
自分のモノを拭いて、ズボンをはいた。
「誰かいませんかー」
弘真の声だった。
圭は、そっと部屋のドアを開けた。
1階をドタドタ歩き回る音の後に、
トントンと、階段を上る足音が聞こえた。
圭は急いで部屋の外に出ると…
慌てて後ろ手でドアをバタンと閉めた。
「あ、よかった居たのか…車が無かったから、留守なのかと思ったわ」
「あ、ああ…一輔と尚人は、買い出しに行ってる…」
「ふうん…郁は?」
弘真は訊いた。
「…えっ…あ、あの…郁は…」
圭はすっかり動揺しながら言った。
「ちょっと具合が悪くて…な、中で寝てるから…」
「ホントかよ、大丈夫なのか?」
弘真は驚いて、ドアに近寄った。
圭は、ドアの前に立ちはだかった。
「あ、待って…あの…今寝てるから…」
「何だよ、どけよ…」
「ダメだ…ダメ…」
圭は必死にドアの前を塞いだ。
「…何か…あったのか…?」
弘真はそう言うと…圭の肩を思い切り掴んで、
彼の身体を横へ押しのけた。
「…痛っ」
圭は、軽々と吹っ飛んだ。
そして弘真は、ドアをバタンと開けた。
「…!!」
部屋の真ん中に…僕はうつ伏せで倒れていた。
シャツは乱れていたし…
下半身は何も着ていなかった。
「郁!!…おい、郁!しっかりしろ…」
弘真は僕に駆け寄り、僕を抱き起した。
そして、その様相を見ると、
振り返って圭を睨みつけた。
「お前…何をしやがったんだ…」
「…お、俺は…」
圭は動揺して…震えながら言った。
「郁が、具合が悪そうだったんで…2階に一緒に、連れてこうとしたら…途中で、倒れて…」
「それで?」
弘真は、僕の身体をベッドに移した。
そして、服をちゃんと着させた。
「…それから、何かコイツ変になっちゃって…何だかワケの分からないこと言い始めて…」
「…何て言ってた?」
弘真は、僕に毛布をかけ…
額に手をあてながら、冷静な口調で訊いた。
「…きょうご…とか、お願い…ください…とか…」
「…!」
弘真はそれを聞いて…
ピクっと一瞬、動きを止めた。
「…それで…あの…」
「…なるほどね、逆レイプされたってわけか…」
「…えっ」
圭は弘真の言葉に、驚いて顔を上げた。
そして…ゆっくり頷いた。
「…急に、俺の足に抱きついてきて…そのまま…」
「…はぁ〜」
弘真は大きな溜息をついた。
圭の証言を聞いて…
少し前にここで何が起こったのか、
彼には大体の予測がついた。
「体温計ある?…あと何か頭冷やすやつ…」
弘真は冷静に、圭に言った。
「え…あ、たぶん…ちょっと待ってて…」
圭は、バタバタと走って下へ降りていった。
郁…
弘真は僕の顔を撫でながら…思いを巡らせた。
おそらく…発熱前の症状が、
ヤク切れのときの症状とリンクしちゃったんだな…
俺の知らないところで、
こんな事が他でも起きていたんだろうか…
彼は手を止め…
また大きな溜息を、ついた。
悔しいけど…
あの人にも、言っといた方がいいんだろうな…
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