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第9話 身体の奥を揺さぶるもの

………………え? 何が起きたんだ。一瞬なんだか、飛んだような、意識を失った……? 未知の感覚を前に、体はすっかり怯えて小刻みに震えているのがわかる。 「ああ、やっぱここか。でも気持ちいいって感じじゃねぇな。快感と繋がってないってやつなんかな」 1人で快感とか言ってる所悪いけど今はお前の話に耳を傾ける暇はないんだ。こんな一瞬でも意識吹っ飛ぶのが怖いのが気持ちいいとか俺はそんなマゾヒストじゃないぞ。まあ確かに吹っ飛んだ後の、余韻?みたいなのは感じだ。奥が、もっと言うとさっき真田に強く押されたところがモヤモヤというか、ムズムズというか、そんなものは感じる。でも気持ちいいかと聞かれると首を捻る、そんな感触。 「強くやりすぎたか?その、慣れてなくて悪い。ちょっと待ってろ、もうちっと優しくする」 まだまだコレを続けるつもりらしい。俺を気持ちよく? させるために頑張ってくれているのはわかった。でも慣れないことをわざわざ無理してやらなくても、エッチなことをは他にいくらでも出来る……って別にそんなにエロい事やりたいって意味じゃないぜ。まあここまでくれば期待してしまう自分もいるはいる。 そんな風に1人で自問自答をしていても、真田はそんなの知るはずもない。さっき俺の意識が飛んだあの場所をもう一度、今度は優しく押してきた。なんだか熱が広がるような、気のせいか? 「梓、どうだ?」 「ムズムズというか、くすぐったい感じだけど……」 感覚を正直に答えた、熱が広がる事以外は。この感覚覚えがある、あの初めてダンスを踊った時と同じ熱だ。あの脳が溶けそうになる程の熱が再び俺の身体を回ろうとしている。それはちょっとというか……かなり怖い。 「おい、そんなにいじらなくても。な?」 「駄目だ。気持ちよくしてやるって言ったろう」 足を強く持たれた。引く気はないってか。とその前に足を広げ過ぎだ、踊り子になったせいか体が柔らかくなってるけど、元の俺だったら多分だけど関節外れるぞ。 優しくその場所をフニフニとされるのは変な気分だった。さっきみたいにブッ飛ぶ心配はないけど、身体が中に浮くような、そんな錯覚がある。 でもそんな物を気にならないほどにさせるものが一つ。熱い。外気温じゃあないぜ、俺の体温がものすごく熱い。体毛が無くなったショックで取り戻していた正気をここにきて粉砕しようとしている。例の謎の発情が全身を回ったら最後、もう俺にはこいつを受け入れるというたった一つの選択肢しか無くなってしまう。 「んっ……ちょっと、そんなにしなくてもいいだろう」 「嫌だ、続ける。ようやくお前も感じ始めたみたいだから」 ここにきて強情になってきてやがる。いらない、その頑固さは今はいらない。今の俺には攻防を続ける精神力もない。ハッキリ言ってもう全身に熱が回り始めている。体の奥の得体の知れない物をフニフニとする手の動きが敏感に感じ取られて、一々反応してしまう自分が恥ずかしい。割とさっきからずっと思ってた。 「くうッ…そ、それ!なんなんだよ!」 「俗に言う前立腺って奴だ。俺も原理知らんけど、押したら気持ちよくなる」 なんの返答にもなってないけど。ふわふわした言葉で末恐ろしいこというな。体があの時のような、もしかしたらそれ以上にもなりそうな、マグマの様な熱さに晒されそうになっている。奥の方が、もう言い方に拘らずに1番近い表現を使わせてもらうと、その、あれだ……キュンキュンしているんだ。 「そろそろ強めに押してみる。痛かったら言えよ」 俺を心配してくれているのか、もう片方の右腕で抱き寄せられた。気が付いたら中指も合わせて2本も入っている俺の中を行くぞと一言って強く押す。やめてと言う暇もなく、俺の体の自由は奪われることになった。 「ああぁあアァ!ヤめて!ま、って〜!」 もう体は言うことを聞かない。身体の神経の全てが脳から独立した。今までは確実に制御出来ていると、少なくとも自分は手の中にあると思っていた自意識が、欲望が、自ら立ってみせた。

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