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第11話 夢から醒めて

それからはもう本当に地獄だった。いや撤回する、ただの地獄の方がまだ良かった。地獄の炎は俺の中で燃え盛る。まるで熱いマグマのように俺の体にまとわりついて離れない。それはとても気持ちいい事だった。 「梓、こっち向け」 「うぅ、、も、うキスやめて……」 水責めみたいにされるキスは、次第に俺を酸欠にして思考力を奪われる。流れる水のように俺の抵抗を押し流す。苦しいはずだしそれはわかっていた、なのにこれも気持ちよかった。 「じゃあ……挿入れるぞ」 アレをあてがわれた、今までにないくらいの恐怖や背徳感を俺に植え付ける。背中から全身にかけてゾワゾワとする感触が瞬く間に広がる。悔しいけど穴が気持ちいいなんてのはもう知ってんだよ、そんなもん入れられたらどうなっちまうのかなんて正直考えたくない。 「や、やめて……」 それが多分夢の中での最後の、厳密には俺がちゃんと意識して言った言葉だと思う。まあそんな虫の息な命乞いは、こいつには聞こえなかったようだ。 穿たれたそれは、まるで針地獄。全身に大衝撃を与えて少しずつ、少しずつ、獰猛に俺の体の中を前進していた。自分の喉から信じられない喘ぎが聞こえる。この凶暴かつ乱暴な行為が、とてつもなく気持ちいい。痛みがないわけではないが、痛み以上の快楽が身体全体を襲うと言えばわかりやすいか。 「腰動かんてんじゃねえ。絶対イかせてやるから覚悟しろ」 自分でも気付かなかった指摘を受けた。俺はそんなに淫乱なことをしていたのかと真っ赤になったが、そんなの喘ぐしか能が無くなったいまではどうでもいいことだった。あいつ、嫌なら殴れとか抜かしていたけど、この状況で殴るとかそんな余裕ねえよ。 その猛犬はと言うと、俺という獲物を信じられないぐらい愛おしそうな目で見ている。どうかしてる。そしてその瞳が嬉しいと思ってしまう自分も、同じくどうかしている。やばい、多分そろそろ気を失う。失神する。この一心不乱に腰を振る獣は俺の手には追えない。 今日俺はめちゃくちゃ頑張った。いきなり異世界転移して、踊り子になったと思えば全員の前で強制発情して、挙句こんな夢を見ている。内容が濃すぎる。世界を股にかけるジャーナリストや戦場カメラマンにも引けを取らないだろう。 俺はおかしくなってしまった。このまま気を失う、いや多分目が覚めるのは少し寂しいと思った。夢の中の真田にせめてもの別れと、頰に口付けをした。獣みたいなあいつもこれには流石に動揺して動きを止めた。ああ、この方法があったか、愛してる、ざまあみろ。 俺は意識を手放した。 目が覚めると、麗かな日差しが俺を包んだ。やはり夢か、そうだよな、いくらなんでも急展開すぎる。そしてついでに言わせてもらうなら、踊り子の件も夢であればと死ぬほど願った。ふかふかのベットに寝ていた俺は、あいも変わらず例の踊り子衣装に身を包んでいた。手足の鈴も、体を隠す気がない薄手の布も、胸部と臀部を最低限守っている数少ない厚手の布。笑ってしまうぐらいそのままだった。 「おお、目が覚めたか」 綺麗な装飾の施された大きいドアから、1人のご老体、ベルトルトさんが入っていた。ここはグルーデン王国の城内、客人用の部屋らしい。あの後僕は真田の胸の中で気絶して、そのままここに運ばれてきたのだとか。 「いやはや、一晩で目が覚めてくれてよかった。済まなかったな、まさか踊り子の力がここまで強力だとは……」 「いいんスよ、爺さん悪くないし。……みんなは大丈夫ですか?」 「ああ。みんなお前さんを心配しておるよ。特に真田仁は眠れなかったそうじゃ」 真田仁。その名前を聞いてドキッとした。あの夢はなんだったんだろうか、流石にこんな質問したらベルトルトさんに変態だと思われる。……あれは異世界転移とはなんの関係もないただの夢だ、そう思おう。 「そういえば、お前さん以外にはもう伝えたが、職業《クラス》の事でまだ伝えていないことがあるんじゃ。少し話を聞いてもらうからな」 大切な話と釘を打たれて、俺も背筋がピンとなった。やっぱりこの爺さんには凄みのようなものを感じる、これがカリスマってやつだろうか。そしてこの話で、さっきまでの俺の疑問は八割方解決することになる。

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