17 / 206

第17話 お手伝い

されるがままに城下町へ。でもこれはただのデートではないと分かった。希望が大きなリアカーを引き連れている。城から借りたらしい、これでも折り畳んでいる状態らしいから、広げたらどうなるのか楽しみだ。隙間から中身がチラチラと見える。見えた中には綺麗な宝石や装飾品が沢山乗っていて、太陽の光にあたればキラキラと輝き、とても綺麗だった。 連れて行かれた先は市場のような、露天商が多く目立ち、それでもお金を持ってそうな人が多い高級感ある商店街。地図を見ながら、リヤカーを押しながら、ゆっくりと向かった。周りからの視線を感じる、やっぱり異世界でも俺の衣装は珍しいようだ。超恥ずかしいから、ついつい傍に隠れてしまう。 「大丈夫か?」 「ああ、うん。平気。でも隠れさせて……」 手頃な場所でリアカーを止めて、ようやく俺に説明をしてくれた。 「ここらで俺の職業《クラス》の力を見たいんだ。ちょっと手伝ってくれ! デートって言うんじゃないけど……」 「いやいいよ。そっちの方がいい」 成る程。たしかこいつの職業《クラス》は商人だった。ここらでその力を確かめてみたいんだろうな。いいぜ、デートよりもハードルが低い分安心できる。俺も看板娘?ぐらいはやってやりたい。それにしてもこの服着替えられないんか?こんな局面でしか使えねえぜ。後でベルトルトさんに相談だな。 「さあ、商売するか!まあ何したらいいんか知らないけど……適当に呼び込むか!」 リヤカーを広げて沢山の宝石、装飾品が姿を表した。隙間から見えた時とは比べ物にならないほどキラキラしていて、見るだけでもゴージャスな気分になれる。 「さあさあ、王宮グルーデン証のアクセサリーだ!超レアものだぜ、今日は特別に安くしてやる!」 「お、お安いですよ〜」 クラスでも静かな方だった希望が、信じられないぐらい大きな声で呼び込みを始めてまもなく。少しずつ客が集まっているのがわかる。みんな王宮からきた宝石ってだけあってお金持ちが多い気がする。まあ服でしか判別できないからあくまで何となく。 「ほら梓、こいつ近くで売り込め!」 渡されたのは、木で出来た手提げ付きのバスケット。中には露天で並んでいるものより小さめだが、指輪やピアスなどが入っている。 「ほら、ベルトルトお爺さんの受け売りの紙だ。俺も今朝知ったやつ」 紙も貰う。紙には達筆な字(お爺さん系の達筆)ずらりと書いてあり、おお、となった。俺よりずっと綺麗だ。内容は長くなるから要約するとこうだ。 ・お前達には特別な加護があるから、言葉が違くてもこの世界の文字も読めるし、字の読み書きも問題ない。 ・この世界の貨幣は共通で、紙幣、銅貨、銀貨、金貨の順で高価になる。 ・紙幣10枚で銅貨、銅貨10枚で銀貨、銀貨10枚で金貨になる。市民で使われるのは銀貨まで、大体の民の月給は銀貨3枚から5枚。 ・後この世界に女性と呼ばれる種族は存在しないぞ ベルトルトさんは本当に俺たちを気にしてくれているようだ。こんなことまで教えてくれるのか。俺が考えてた異世界転移って、もっと丸投げなもんだと思ってた。ってか女の人いないの?え?そんなんあり?……いやもう考えるだけ無駄か。 「ほら、この巾着に金入れろよ。お前可愛いから、宝石なんてきっとすぐ売れるぜ!」 「え?でも、怖い人とかいたらやだな……」 「大丈夫だ、俺たちが守ってやるから」 俺たちの意味がわからず、周りの気配を見ると、その答えが出た。奥の路地裏から仁が見ている、ただの詩歌いのふりして奏が紛れ込んでいる。ほかにもわらわらと良く知る気配がする。他人の視線に敏感な踊り子の俺だから分かるが、全員が隠れた闇の力的なのを感じる。希望が平然としてるのが不思議で仕方がない。 「じゃ、じゃあ行ってきます」 「いってらっしゃい! 笑顔忘れんなよ!」 少しづつ前へ進んだ。離れるのは流石に怖いから近くにしよう。笑顔笑顔……希望の言うとうりだ、笑顔じゃないと接客は務まらないよな…… 「少しいいかい?可愛い踊り子さん」 まさか呼び込む前に声をかけられるとは思わなんだ。ビクッとたが、何とか耐え忍ぶ。よしよしいけるぞ。振り返ると、見た目で貴族とわかる男性がいた。 「はい、どうしました?」 「そちらの綺麗な宝石を私に下さりませんか?」 籠の中の1つ、紫色の綺麗なペンダントを所望みたいだ。貴族の男性の手には、銀貨が6枚も握られている、そんなにもらってもいいのだろうか。是非とも受け取ってほしいと言われ、銀貨とペンダントを交換した。 「そうだ。もしよろしければ、こちらもどうぞ」 手を握られたかと思えば、隠すように渡された、金貨3枚。市民ではまず手に入らない大金だ。 「こ、こんなに貰えません!」 「いいのですよ。私も久しぶりに可愛らしい踊り子さんをみて、目の保養になりました」 そのまま帰る暇もなく貴族さん行ってしまった。紳士な人だったな、可愛いと言う思いだけで下心は感じられなかった。 ……しかし周りは違った。俺への熱視線を感じる。……いやだ、また体が熱くなる。人混みの波に、衝動に、流される。

ともだちにシェアしよう!