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第47話 勃起とちんちんと、時々王室
ベルトルトさんのもう1人の息子であり、グルーデンの現国王陛下とご対面する。口では簡単に言えるが、はっきり言ってかなり緊張している。こんな踊り子の服であったら失礼なのでは。そもそも2日3日とはいえ今まで散々この城で好き勝手やってたのに、今更初めての挨拶とか論外なのでは、と言った感じで、緊張を超えて不安に進化しつつある。
しかし、そんな心配してたのは俺だけだったようだ。
「ねえねえ梓、勃起って揉めば治るの?」
「ごめん、ちょっと何言ってんのか分かんない」
これはいざ王室へ行こうとしている緊迫した状況下での会話だ。健吾の曇りひとつない視線が苦しい、こう言うのってクラスメイトが教えて良いものなのか? 少なくとも俺は父親に教わったけど、お前の父親はどこに行った?
「ぼくお婆ちゃんと家政婦の玉子さんの3人で暮らしてるんだ」
そうなのか、というより家政婦雇えるってかなり裕福な家だな。自分以外男がいないのは確かに性教育が行き届いていなくても仕方がないのかも。といっても中学の時保健体育で習ったような気がするのだけど。
「わかんない。中学生の時はママとパパと一緒に色んなところ住んでて、行ってない」
つまりは転勤族だったよって事か。確かに学校によって勉強してるところが違うってのはよく聞く話だし、コロコロ学校が変わるとついていけなくて行くのを辞めてしまう子もいそうだな。よく高校受かったなって言おうと思ったが、思い出してみたらこの学校定員割れだった。そうだよな、そうでもなきゃ仁や奏なんかが通えるわけないもんな。
「明君に勃起ってなにって聞いたら揉めば治るよって」
「……おい」
聞き捨てらならねえな、中途半端な性教育を施すな。明の方に顔を向けても知らぬ存ぜぬと言った顔を貫いている。仁もついでに並んでいたが、これにも知らんぷりだ。
「どんな感じで揉めば治るの?」
「仁に聞け」
「おい」
そんな際どい質問答えられるわけもなく、パスしようとしたが、拒否された。不幸中の幸いか、長引く質疑応答のせいで少しずつ萎え始めている。健吾の性格も考えると、今度教えてやると言ったら押し通せるだろう。自分でも完璧に舐め腐ってると思ったが、案の定簡単に信じた。
「約束だよ!指切りげんまんしようね。 楽しみだなぁ、梓に勃起の治し方教えてもらうんだ!」
元気いっぱいな無自覚オープン下ネタに、2人も困惑していた。ツッコミどころが多過ぎるのに、笑顔が眩しくてなにも言えないって感じの顔だ。というより俺は健吾の口から勃起だなんてワード聞きたくなかった、なんかもっと可愛い言い方を教えてあげようか。と言いながらもそれ以外の言葉が思い浮かばない。ああそうだ、アレにしよう。
「健吾、勃起って言葉はお前にはまだ早い」
「そうなの?」
「ああ。人にはもっと似合う言い方ってもんがある」
いやそんな訳ないと自分に対して心の中で突っ込んだ。健吾も俺たちと同じく高校生だし、もっと言えば中学生でも勃起とか普通に言う奴はいる。純真無垢すぎてこの先の人生が心配になる。どんな言い方と激しくせがんでくるから、俺も恥ずかしい思いを堪えて勇気を出した。
「おちんちん大パニックだ!」
「おちんちん大パニック!強そう!」
うん申し訳ない。反省も後悔もしてるが、本人は喜んでるし、やっぱし健吾にはこの言い方が似合っている。しかし、俺たちの様子を遠巻きに見ていた仁たちが突然詰め寄って来られたから、それに関しては驚いた。
「いやその、ごめんなさい。後で俺から訂正しとくからさ……」
必死に弁明を企てているなか、2人がいよいよ口を開いた。許してくんねえかな、どうしても健吾って弟みたいな感じに扱っちゃうんだよ。
「梓」
「は、はい」
「おちんちん大パニックになった」
「俺も」
予想の左斜め上ぐらいにきた。そうかそうかそうきたか。二人とも顔がマジだから出来るだけ下半身を見たくない。これでもかと目を逸らしてやった。
「ごめん、梓がおちんちんとか言うから反応した」
「何もしないからもう一回言ってくれ」
それだけで勃起すんのかよ、あと何もしないからって、何もしないからホテル行こうと同じように聞こえるんだけど。今言ったら俺にも被害が及ぶから、意味がわからずに頓珍漢な顔をしている健吾を無理矢理おんぶして、俺は王室目掛けて走った。
「まて梓!」
「もう一回、もう一回」
後ろから勃起した男2人が超特急で追いかけてくる。実際に怖いし、字面にしても怖い。健吾はと言うと、俺におんぶされて速い速いと園児のように喜んでいた。火事場の馬鹿力ってやつなのか、思った以上に疲れない。この調子で逃げよう。
「ん、梓?」
「なんで走ってんの」
「というより柿原おんぶしてるよ」
やったぜ救世主発見。救世主は七海大河、野良英智、そして明治成だ。いつものように3人で話し込んでいたようだ。職業《クラス》は全部魔術関連、うちのクラスが誇るオタク三銃士に恥じないだろう。しかし数が有利とは言え、オタクに不良と問題児の相手をされるのは少し可哀想だ。やっぱり1人で逃げようか。
「遅かったな柿原、梓の部屋がわからなかったのか?」
「やっぱついて行った方がよかったな」
「お疲れ様です梓さん。僕達は国王様のお使いに来ました」
思わず足を止めた。さっきまでヤッてたとは思えないほどの過去最高のレベルで加速している中急ブレーキだったから、後ろにいる健吾は驚いていた。ここは廊下、そして気が付けば隣にいかにも王の部屋って感じの豪勢な扉がある。って事はここまでくればもう安心? 背後からまだ足音聞こえるけど……
「あいつらには俺らが説明しとく。もうお前ら以外は《《全員》》集まってるから」
話が全く見えてこない。健吾いわく呼びに行けと言われただけで、なんの話しなのかは全くわからないようだ。しかし3人は有無を言わせずに、俺を王室へ押し出すように入れた。
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