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第63話 地獄からの救済

………… 真っ暗な小部屋で、俺は絶え続ける。魔王によってもたらされる快楽に抗い続ける。耳を揺さぶる水音も、甲高い喘ぎ声も、全て包容されるように抱きしめられる後ろからの抱擁は、ただただ俺の神経を蝕み続ける。何回イったなんてそんなの覚えていない、ただ耐えるばかりだ。 「どう?気持ちいいかな、我慢しないでいいんだよ」 「気、持ちいっよ……く、うなああっい!」 こっちが恥ずかしくなるような甘い言葉を連ねる魔王にチンコぶち込まれて、もうどれぐらいだろう。体感は1時間以上だけど、多分これは20分も立ってない気がする。仁に引けを取らない極太のそれを易々と受け入れる自らのケツにドン引きしながら、その絶対的な質量を胎で感じていた。 意味はないかもしれないけど、最後のブレーキとして罵倒を重ねる。気持ちいい、もっともっとと叫ぶもう1人の自分を押し込めて、無理矢理気持ち悪いと頭の中でサイレンを鳴らした。心読まれてるとはいえ、流石にこれは読まれていないと思うけど…… 「嬉しい。ちゃんと気持ちいいんだね、もっと素直になりなよ」 心読むの万能すぎる。無理して我慢したのが台無しだどうしてくれんだと、勝手に一人でキレてしまう。パンパンと打ち付けられる雄の塊は、たしかに俺を快感へ誘導していく。気持ちよくてたまらない、それは認めよう。しかし俺の心には仁の姿が、声が、匂いが、まだ消えていない。今でもその記憶をそっと撫でると、寂しさで身震いしてしまうほど。 回らなくなってしまった舌で、無我夢中に名前を呼び続けた。涙が止まらないのは俺がまだ堕ちていないからだと、とにかく前向きに捉える。そうでもしなければすぐにでも、この無慈悲とも言える快感の濁流に押し流されてしまいそうで。兎に角今は、さっきから前立腺を集中的に攻撃してくるこのチンコが魔王のものだとは、考えないようにした。 「……そんなに真田仁が好きなのかい」 「うん……うぅん……仁がぁい、いいよぉおっ!」 「……わかならいな〜、魔王じゃなくってそそんな暴力人間に一途なのは」 「やあだっ魔王は……いぃや、きぃら、いい……!」 流石の魔王も俺の執念に参り始めているようだ。まあその分俺のプライドとか羞恥心とからボロボロのバキバキだけども、そこはもういっそ目を瞑りたい。兎に角いいぞいいぞ、このまま時間を稼いでいつかは見つけてもらう算段で…… 「これはもうちょっと長期的に堕としていきたいな。僕の城まで連れていくから、ちょっと飛ぶよ。……僕のテレポートってチャージが必要なのが難点なんだよね〜」 そう来たか。それは嫌だ、嫌だ。仁に会えないじゃないか、クラスメイトが助けに来てくれないじゃないか。背後からの抱きしめと言う名の拘束を何とか振り払おうとジタバタするが、所詮は焼け石に水。そんな姿も可愛いと褒められるがちっとも嬉しくない。 何もできなかった。下半身から全身に伝う快感に反応して、無様に喘ぎで腰を振る妻というより愛玩奴隷のような姿を認める他なかった。 それでも、ようやく運が俺に回ってきたようだ。 「……そこまでだ、魔王。これ以上の仲間への陵辱は許さない」 背後から声がした。魔王じゃない、仁でもない。でも、今確実に俺を助けてくれる人だと確信した。魔王の動きが止まったこのタイミングで、なんとか逃げ出さねば、奴から距離を取らねば。 「離……せぇよぉ、う……うっうぅ……!んん!」 今離れるということは自分の力でチンコを抜くという意味だが、問題なく出来た。だらしのない声が助けてくれる人に聞こえてしまったが、それは心配は頭のどこにもなかった。今考えてるのは、救世主のことと、あとチンコ抜く時にめちゃくちゃ力が必要で、そんなに俺の体の吸引力は凄まじいのかとまた自慢できない特技が出来てしまったことへの申し訳なさだ。 「よしいいぞ梓、今助けてやるからな」 「貴様の名は……ほう、梅雨明か。どうやってここに入ってきた?しかも我の目を欺くとは、なかなかの手並みだ」 「どこから入っただ?魔王様は勇者、しかも忍者に対してそれを聞くのか」 救世主、梅雨明は魔王の首に苦無の刃を当てて、お前が魔王だよと言わんばかりの鬼の形相だ。それにしてもさっきまでの猫撫で声はどこへやら、急に魔王モードに入っている。多分こっちが普段のコイツなんだろうけど、俺は初対面が素だったせいで、こっちのが違和感がある。 「見たところ、貴様も我と同じ不満を持っているようだが……それでも此奴を助けるというのか?」 「黙れ。お前とは違う、俺は出会っていきなり嫁だの結婚なんだのは言わない、こう見えて紳士なんでな。そんなん仁と一緒だぜ」 仁と一緒。そう言われて一瞬ハッとした顔をしたが、直ぐに魔王モードに戻った。美しい顔で邪悪な笑みを浮かべる姿は本当に顔面だけはいいと俺に再確認させる。 「わかった、今回は引くとしよう。そろそろ他の勇者たちも来かねないからな」 高笑いと共に、周りがドス黒い瘴気に包まれる。物陰に隠れてなんとかやり過ごしていた俺に気が付いたのか、一言だけ、 「僕は諦めない。いつか君を真田仁から寝取って見せる」 明に聞こえない小さな声だった。さっき犯されていた俺の胎がキュンキュンと物足りなさそうに疼いている。それを知らないふりしてこちらも一言。 「……馬鹿野郎」 今できる最大限の拒絶だ。それでも魔王はなんだか嬉しそうにしている。魔王は瘴気と共に消えていき、部屋には俺たち2人が取り残されるように居るだけだった。

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