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第69話 健吾との約束
俺のせいで始まったのに、あまりの熱量で部外者と感じてしまうほどの、熾烈な心理戦と運試しの成果がこれだ。
Aチーム
藍沢琴吹
浅野奏
枝元祐一
梅田総一郎
姫咲藤村
梅雨明
野良英智
山下聖
Bチーム
獅子王前多
瀬戸未来
轍洋次郎
夏目博
七海大河
猫田昌幸
大和総司
和田陽綺
Cチーム
小川喜助
飯田橋希望
岸峰界人
鈴鹿悠木
次田真司
咎目雄星
二家本譲治
長谷部晴雄
Dチーム
蒼樹大輔
縁元
柿原健吾
時雨高松
高林暁彦
錦織清志
藤屋勝
百田蓮舫
Eチーム
鳳あきら
真田仁←仁ここ
田村大智
留辰巳
羽原薫
巳陽梓←俺ここ
明治成
夢野幸一
結果:真田仁大喜び
「よっしゃ!ザマァ見ろってんだ!」
天高く拳を上げてガッツポーズをする仁は、俺が名前呼びしてもいいかと尋ねた時に引けを取らないほどの満面の笑みだった。勝ち誇ったその笑いは、それだけで周りの敗北感を確かなものにしていた。
周りからの殺意、やり直しの声が多数上がっているけどそんなの見向きもしないその姿は、ある意味尊敬に値する、ある意味。
「真田ばっかりずるい……」
「は!どうだ負け犬どもが!」
中指を立てながら俺を肩に抱くその様は、俺が思い描いていた魔王のイメージに見事にドンピシャだった。さっきまでの疲れはどこはやら、兎に角にもウッキウキ。
「……まあ真田はともかくとして、これにて班決めは終了だ。この通りにするのは明日からだから、今日はゆっくり休んでくれ」
文句の声は絶えなかったが、喜助はなんとか宥め続けた。物理組は疲れたからと、今日は魔法組のみんなが夜回りをしてくれるらしい。さっきまでそれはそれは、はしゃいではいたが疲れには勝てなかったようで、それぞれの部屋の布団に崩れるように眠った。
……俺とアイツを除いて。
♢
この船は相当なデカさだ。個人の部屋に飯が食えるロビー、キッチン医務室は勿論風呂もトイレもなんでもある。俺は明日何もないが恐らく腰の痛みに耐えながら船を回るので時間を使い切ってしまいそうだ。しかも特別な作りなのか、乗り物酔いしやすい方の俺でも船酔いは全くしない、ものすごい快適だ。
そんな中、ドアを控えめにノックする音が聞こえた。喜助って感じじゃない、喜助は思ったよりも容赦のないノックをする。仁でもないな、あれはもうノックとかしない類だ。
「梓、入っていい?」
声の主は健吾だ。声変わりしたんだろうけど高いタイプの声はすぐにわかる、なんとなく舌足らずなのも年下のような錯覚を覚えてちょっと可愛い。
「どうぞ、鍵は空いてるぜ」
「失礼しまーす……」
健吾はゆっくりとドアを開けて音を立てるのを避けているようにゆっくりと入ってきた。何かあったのか? 最初はどうせ健吾だと油断していたが、鍵をガチャリと閉められた時は驚きで心が縮むような感覚を覚えた。
「ど、どうした……?」
言いようの無い恐怖でたじろぐも、それを無に消すほどの早歩きで此方に迫ってくる。
「なあ梓、僕と……僕に……」
俺は思い出した、健吾も男だと言うことに。そして健吾は欲情した仁や明と同じ顔をしていることも。
「ねえねえ、勃起教えて!」
…………ん?
何が起きたんだ? 目の前の男は可愛く顔を赤くして、やった言えたと、そんなことを一人でしゃべっていた。
「その、僕に勃起教えてくれるって……」
遠慮しがちに言われてハッとなった。あー確かにグルーデンにいた頃そんなこと無責任にしてしまった覚えがあるな。あの後すぐにステージで踊れってことになって、俺はすっかり忘れていたが、健吾は覚えていたようだ。
「えっと勃起を教えるってのは……具体的に何を?」
「えっと、僕のおちんちんが大きくなっちゃったから、揉み方教えて欲しいんだ!」
せっせと脱いだ健吾にビクッとしたが、更にその中心を見て驚いてしまった。勃起してやがる、準備万端にも限度があるだろう。しかも予想よりもおっきい、勃起してるから本来はもう少し小さいのだろうし、大きいと言っても仁や魔王ほどでは無い。まだ常識の範囲内の大きさだ。
「……教えてやるけど、その前に。なんでもう勃起してんの?」
こんなこと他人に教えるのは勿論初めてだ。しかし、男とはいえ健吾は俺よりかなりの体格差があるしそんなことしないと、ある意味油断とも取れる算段で、とりあえず許可をする。ありがとうと言いながら、裸のままでぴょこぴょこしている。そんな健吾をこちらに来るように促した。
でもその前にそれは知りたい。なんで勃ってんのか聞くのはちょっと変態くさいなと一人で恥ずがしがっていたが、健吾はそんなのに気付かずに、高らかに教えてくれた。
「えっとね、寝る前に梓のダンス思い出したらこうなっちゃった」
「……そうか」
やっちまった。こんな絵に描いたような自滅で顔を赤くしている己は当代までの恥だ。間違ってもこんな凡ミス次世代には繋がないつもりだが、そもそももう自分でも認めるぐらいにはホモになってしまった俺には次世代はないのかもしれない。
「梓? 僕に教えてくれないの?」
「あ、いや、ちゃんと教えるから。うん」
俺一人が少し恥ずかしさでムズムズするなか、真夜中の勃起指導ともい2人っきりの性教育が始まった。
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