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第98話 驚愕の事実
また大河に土下座して腰痛を治してもらおうと考えながら、さっさと服着て風呂場へ向かった。この状態でみんなに会うのは控えめに言って恥ずかしすぎる、大袈裟に言って自殺を考えるレベルの羞恥を伴うから、こそこそ隠れていた。もう大きい男2人が隠れながら風呂場へ駆け込むのを想像してほしい、うん多分はたから見たら絶対面白い。
高校生なんてまだ子供だから図体ばかり大きくなったと言われても反論のはの字も出ないけど、言い訳のけの字まで言う方が恥ずかしいからここはその通りですとでも言っておく。昼間の風呂場は誰もいないから、ちょっと泳げるかなとワクワクしてしまうが、今は泳いでる場合ではないなんてこたぁちゃんとわかっている。早いうちに風呂に入ってしまおう。
「浴場にも人は居ねえみたいだぜ、泳げそうだな」
「俺と同じこと考えてんのか」
高校生にもなって大浴場で泳ぐなんてみっともないこと考えてんのは俺ぐらいだと思っていた。でも意外と一般的な思考なのではとワクワクを隠しきれない表情の仁を見ていたらふと思った。やんわりと泳ぐのをやめるように促して、とりあえず一服したいと思いながらテキパキと服を脱いだ。メイド服というよりスカートは股がスースーして落ち着かない。中学の時の女の子も同じこと考えていたんだろうか……?
「うお……」
「ん? どしたん?」
「なんか、そんな簡単に服脱いで良いのかとおもってさ。なんというか、感無量……」
「変態」
「ゴメンなさい」
俺の変態に予想の倍近く傷ついている仁。確かに今まで散々セックスしていた相手の前で、なんの躊躇いもなく簡単に服を脱ぐのは警戒心がない行動だった。気休めにしかならないけど、タオル巻いとくか。勿論胸に巻くんじゃないからな。腰に巻くだけだぞ。
「さあ行くぞ」
「おい上半身隠してねえじゃねえか」
変態とまた声に出しさんになったけどなんとか堪えて、それは恥ずかしいから嫌だと穏便に話を進めようとした。人生で上半身隠せって男に言われるのは多分これっきりだろう……仁と同棲することになったらどうかは分からんけど。
「まあ恥ずかしいのは分かるけど。なんというか、上半身曝け出してる梓見て正気でいられる自信がないんだ。……恥ずかしい思いして無事でいるのと、そこ格好で俺に襲われるの、どっちが良い?」
「胸から巻かせていただきます」
ギラギラとした目に逆らえすはずもなく、恥ずかしい気持ちをグッと堪えて、タオルを巻かせてもらった。腹筋があるからワンチャン女の子に見えなくもない……と思っていたけどそんな事はなく、やっぱり自分ではこの身体の何処がエロいのかいまいちわからない。端的にいえば対してエロくも可愛くもなかった。
だが仁と俺の視界というより世界は、何処か根本的にずれているようだ。そんな俺を見ても嬉しそうな顔をしていた。俺は一体どうするべきなのだ。
「やっぱりそっちでもエロいな……」
「お前の悪い癖を教えてやる、思った事を後先考えずに言ってしまう事だ」
仁相手にここまで強く出られるなんて俺も強くなったな、いや違う仁が俺に対して弱くなったのか。俺が先々と風呂場へ向かうと、後ろからついてくる足音が聞こえる。そうだ、ようやく浴場なんだしアレを聞くか。俺の中に出された精子はどうやって後処理してるんだ? 今までした事なかったから、この際仁に教えてもらいたい。
「後処理な。初めてセックスした時に気が付いたんだけどさ、梓が気を失った後に中に入ってんの掻き出そうとして……ちょっと中指入れたんだよ」
「それはいい。元々俺が勝手に気絶したのが悪いんだから」
「でも結構探してみたんだけど、何処にも見当たらなくてな。それこそ腹の中で消えてるみたいに」
「……それってもしかして腸とかに入ったってことか? どうしよう薬とか必要なんかな、腹痛とかの心配は?」
思わずゾッとした。俺の身体にまだ仁のどころかふじやんのとか健吾のとか、それが残っているのかもしれない。どうしようどうしよう、なんか自然と出てくるのかもとは考えたが、そんなの出たことないからそれは無いと思うけど……
「ベルトルトさんに教わったんだけどよ、梓の尻穴は常時清浄されているみたいなんだ」
「……洗浄のこと言ってんのか?」
「そうそう多分それだ。淫魔の力もあるから、ある程度の時間が経つと精子も消えるらしいぜ。ついでに腸内洗浄もされて健康的だってのも話してた」
ああこの世界は本当に、俺の予想を遥かに超えるなと軽く目眩を起こした。マジでそんなことあるんかい、いや起きとんのか。俺の身体いつからそんなマジカルパワー手に入れたんだ。もっと竜巻起こしたら雷落としたりかっこいい能力が欲しかった。
「ごめん、ちょっと湯船に入って頭冷やしてくる」
「梓、風呂は暑いから頭の温度も上がるぜ」
「……じゃあシャワーで滝行してくる」
後ろでたきぎょう? ってなんだと質問責めを喰らう。頭痛くなってきたころ、俺はなぜか落ちていた石鹸で転んで頭を打った。
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