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第111話 洗脳を覚えてしまった
「ぐぅ、、むりぃ……」
「う、キッツ……後で梅雨の相手もするんだよな? 俺としてはしなくてもいいとは思うけどよ」
「おい。梓は約束を守ってくれる。……はずだぞ」
無言の圧をかけてくる明を気にしながら、無我夢中に首を縦に振っていると少しずつその圧は無くなっていくのを感じた。代わりにドヤ顔を決め込んでいる明と、それに苛立ちを隠しきれない仁による、雰囲気だけで相手を尻込ませる脅かし合い大会を始めている。見てるこっちが不安になるぐらいには空気がピリピリとしていて、なんというか、俺には耐え難いほどの一触即発な雰囲気だった。
こりゃ堪らんと耐えきれずに声を出した。空気の辛さが耐えられなかったこもある上に、何よりこうやって挿入されている時に一人ぼっちにされると怖かった。今まで体験したことがない未知なる感情だったものだから、上手く表せないのが本音だ。少し誤解を招く言い方であっても許してほしいと思う。
「お、おい……わかったから、2人ともこっち向けよ」
「……わかってる。ごめんなヤキモチ妬かせちまって、俺たち似たもの同士だな」
「仁お前、俺の言葉何持ってんのか?」
「まああれだけヤキモチ妬きって言いまくってるといたずらしたくなるよな。俺も可愛いの見てるといじめたくなるし」
2人のおぞましい欲を受け止める気になれなくて、心の底から身震いをしてしまった。アレだろうか、好きな子を虐めたいという欲望の進化系だろうか。それを受ける側の俺としては迷惑以外の何者でもない上に、やめて欲しいことこの上ないというのが素直な感想だ。こんな時に限って意気投合しているようで、2人揃っていたずらっ子のような笑みを浮かべながらウキウキしている。
「あ、あの……」
「大丈夫だって冗談だよ。1人にしないしちゃんと動くから、まあ虐めないかは別として可愛がるつもりだ」
信憑性を自ら地に落としていくスタイルは嫌いじゃないけど、死にそうな俺に対してするのはやめるべきだと思う。俺じゃなくてもこんな男のチンコ入れてる満身創痍の男にするもんじゃないと思う。
「い、嫌だ……あうぅあ! 急に動いてんじゃ、ねえよ♡」
「こんな嬉しそうなのにそっけないな。梅雨もうちっとキツく抱いても大丈夫だぜ。こうなりゃヤケだ、お前の番になる前に素直になるよう調教しとく」
「……あんまり追い込みすぎるなよ」
俺を心配するようなことを言いながら、その手は俺をガッチリと掴んで離そうとしない。調教とは、これから俺は仁によって破壊されるのではと恐怖が一瞬だけ湧いた。今は大丈夫と言ったら嘘になるほどに背筋が凍った。その割には腰が次なる行動をしろと勝手に揺れているもので、思わず目を背けた。
「んんっっ……。おれは、ちがうん、だぞ、わかってんのかあっッッッ――!!!」
俺が淫乱なことを一番否定したいのは他でもない俺だった。自分がいやらしい事を誰やらわかっていたから、だからこそ否定の声が喉から沸き出て仕方がなかった。別に2人に責任転嫁したいわけでもない、だだこうでも言わないと俺の大事な何かが、壊れたそれが修復出来なくなると第六感が訴えて仕方がなかったんだ。
ドチュドチュという音が聞き慣れてしまっているこのままが忌々しい、その割には身体はいつまでも初心に反応し続けている。確かにある意味においては名器な気がしないでもないけども、俺としてはあまり喜ばしいことではなかった。
「ぃグゥ……おれ、出ちまう、まって……」
「いいよ。先に出せよ、オレのちんこで気持ちよくなってるとこいっぱい見てもらおうな」
甘い言葉だが、その意味は壮絶だった。嫌だと言いながら首を振る程度じゃこの仁の暴走は止められそうにない。こんなウキウキなのを見たのは……意外と最近の昨日だ。俺が落とされてチンコにぶっ刺さったあの時の笑みにそっくり、というより瓜二つ。
「明の番になる前に素直になったこうな〜どうだらちんこ気持ちいいだろ? 俺が中に出してもまだ明のが残ってるからな、いっぱい気持ちよくなれて幸せだな〜」
そんなことを耳元で言わないで。馬鹿になったIQ3の俺の頭が勘違いしてしまう、チンコを入れられることが気持ちいいことだって、幸せなことだって。まあ半分は俺が思い始めていることとはいえ、明の目前でそんなことを言われてしまっては状況が別という奴だ。
しかし俺の頭を蝕んでいるその言葉は、いよいよ俺の体を改造し始めた。性格に反して素直な頭は、恋人の話を正直に聞き続け信じ続けた。挙句極まりきったようで、遂にチンコが愛おしく感じるような、いつもよりも気持ちよく感じるほどの錯覚を覚え始めた。これは洗脳と大差ないのではとも思ったが、どうにもならない、俺の力ではどうにもならない。
「いぃ、ふぁぅ、気持ちいいよぉ……」
明の瞳には、俺はどのように映ったのだろうか。
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