115 / 206

第115話 本音

「梓可愛い。もっと声出してもいいよ」 「オレのと梅雨の、どっちが気持ちいい?」 2人によってもたらされる熱により、脳みそは溶けてしまった。今はこの2人の言う通りに動く1匹の雌といったところだろうか。両方とも嬉しそうな顔をするもんだから、俺の変な勘違いもとい愛されているという願望はさらに肥大化するばかりだった。 決して壊れるほどめちゃくちゃにするわけではなくて、俺の体を労るようにやんわりと刺激を重ねて、少しずつギアを上げているようだ。こんな事しないで慰み者のように嬲ってくれて構わなかったのにとは思いはしたけども、今ある幸せを手放しても良いのかと聞かれたら否定してしまいそうだ。自分で言うのもなんだが、程度をしらないどころか烏滸がましい出過ぎた真似だ、わがままにも限度があるな。 「ぃ、い、うぅ……」 「なんかもう喋ってないんだけど、これヤバくない?」 「……確かに、じゃあ2人とも出したら開きにするか。ごめんな、後もうちっとだけ我慢してくれ」 仁にそっと頭を撫でられた。心地の良い、ちょうどいい力加減だった。この優しさと快楽の、ちょうどいい瀬戸際は居ていて気分がいいと言うか、幸せを感じると言うか。2人に甘え殺されたい、事の善悪はこの際しばらく置いといて沢山セックスしたい。俺をこんな状況に追い込んだ元凶とも言える思考が、いよいよメッキを剥がして現れた。 今更被害者面は出来ないしするつもりもない。一時でもいいから愛して欲しかった、この錯覚を大事にするためなら一夜限りでもいいかななんて。だからこそ、こんな風にグズグズになるまで愛されるのは辛かった。自分が愛されているのではと期待をするのが嫌だった。俺がいない方が早くすんなりと魔王退治ができるなんてのも、これ以上は考えたくない事だった。 「や、やめて、嫌だいやだ、、」 「なんで?」 「やっぱ流石に二輪は辛かった?」 限界寸前で泣きながら拒否をするのは、二輪を決め込んで話を聞く様子もなかった流石の2人でも焦るらしい。豪快に虚取りながらオロオロと俺に手を添えて心配している。ほらまたそうやって俺を甘やかす、そう言うところだぞ2人とも。そんな事するから調子に乗るんだよ、俺がな。 「甘やかされ、る……いやぁ」 「え……やっぱ真田に調教されてキツめじゃないと耐えられないように?」 「なわけあるかい。いたって健全なお付き合いだったぞ」 これ以上安心するのは嫌なんだ、後になってその安心感が虚栄だとわかって、傷付くのがわかってるからこそいやなんだよ。もう手を伸ばすことすらもしたくはない、掴み取ってくれるその手を疑ってしまう俺はもうお終いだ。 「ごめん、ごめんっなさい……俺もう、誰も信用できねえよぉ」 「梓……」 「こ、来ないでくれ!」 手を差し伸べてくる明の手を反射的に跳ね除けてしまう。信じられないような顔をしている明の目を見て、またやってしまったと言いようのない後悔は先に立たつはずもなく、今になってギュッと首を締めてきた。差し伸べられた手に疑いしかなかって、それを振り払ったらまだ新しい疑いがやってくるんだ。 必死にごめんなさいを連呼して許しをこうその姿は、2人にとって決していいものには当たらなかっただろう。ひょっとしたら奇妙に、気持ち悪く見えてしまったかもしれない。だから仁の両手を見た時に、俺に向かって広げられる両手は凶器のように見えたのは、本当にどうしようもないことなんだ。 「大丈夫だ、ほら泣くな」 「嫌だぁ、! くるなぁ〜……」 向きを仁の方に変えられてゆっくりと抱きしめられても、体の震えは止まらない。無抵抗の仁をバシバシと叩いているものの、微動だにしていない。背後にいる明の顔をわからなかった、何も喋らなかったから余計に恐怖を煽った。 「……ごめん、ちょっとエロい事した過ぎて調子に乗っちまった。おい梅雨、もう終わりだ。欲求不満ならトイレで抜いてこい、俺が後処理がてら梓と風呂入るから」 「いやそれは譲りたくない。俺も風呂入る、寧ろお前がトイレ行けよ俺より性欲凄いんだから」 2人のいがみ合いは聞こえてはいたのだが、圧倒的なああ終わったぞと言う気持ちによってそれは遮れる。……シャワーを、浴びたいです……

ともだちにシェアしよう!