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第123話 第1の質問

俺たちが話し合った結果決めた2つの質問。一つ目は、「俺達がいなくなった後の現実世界はどうなっているのか」だ。 いや別に俺達は世界の中心じゃないし、言ってしまえばたかが高校生40人が居なくなっても大した打撃にもなってないだろう。でも一瞬にして消えた怪奇事件みたいな、神隠しのような扱いを受けているのではと心配になっているのは本音だ。人によっては家族を心配している人もいるだろう……俺の親は俺がいなくても痛くも痒くもないだろうし、弟は危機感のない兄貴がいなくなってせいせいしてるだろう。強いて言うなら去年から心臓が悪くなった婆ちゃんが心配だった。 「うむ……元の世界の話か……」 項垂れるベルトルトさんを前に不安な思いがよぎる。まさかまさかと思っていた最悪のシナリオが頭をよぎったが、それ以上の思考の行使は繁盛が許さなかった。たくさんの思惑が入り乱れていただろう一瞬が終わった。ベルトルトさんの口の動きが妙に遅く感じた。 「ハッキリ言って、お前達の世界がどうなっているのかはわからない。実を言うと兄弟世界であるにもかかわらず、互いの世界を見るのことは出来ないのじゃ」 そうきたか。まあ確かにそうだよな。そんなことできるんだったら、優しいベルトルトさんの事だ、直ぐにでも俺たちに元の世界にいる家族や友達を見せてくれるに違いない。これに関してはこの人への信頼ですごい納得してしまう部分がある。 「じゃからこれから話すのは、あくまで《《この世界から見た彼方の世界》》の話、いや考察とも呼べないただの憶測じゃ」 こう言う話になるといちいちスケールがデカ過ぎてついていけなくなる。でも今回は不思議とすんなり頭に入った、良心的と言うか異世界ものにはありがちな展開だったから。世界にはそれぞれ時間ある。時差ではなく、時が経つ速さそのものが違うのだ。極端な話をすれば、この世界で少しうたた寝をするだけの間に、人間の一生が終わってしまうような世界もあるのだ。千差万別な時の経つ速さ、それでも時間はそれぞれのスピードで前へ前へと進んでいる。 この異世界は、俺たちのいる世界に比べて時間が経つのが早い。簡単に説明すれば、異世界の1日は、元の世界の1時間だと思ってくれればいいのだ。因みにだったら魔王倒すのに手間取って何年かかかった場合、元の世界に戻ってもその間たったの数ヶ月とかもあるわけで。それなのに俺たちだけ成長して、早死にするんじゃないのかと心配する声が上がっていた。それ俺も思った。 「大丈夫じゃ、お前たちは異世界特典を持っているじゃろう。それは異世界に座を持っているから、異世界特典と呼ばれておる。つまり、体内の成長はすべて元の世界のペースじゃ。お前達はあくまで、お客人の域を離れることはないぞ」 「「「あーよかった!!!」」」 こんな時ばっか行きあうな俺らは。その中に俺も入っていたからそれまでだけど、兎に角支障がなさそうで何よりだ。……俺達がこの世界に来て大方2週間は経っているのだけれど、ベルトルトさんのていで行けばおそらく…… 「……14時間。俺達は、向こうの世界で行方不明になって14時間経ってるってことか」 「まあ言って仕まえばそうじゃな。長いか短いかは人それぞれ、どう思ってもらっても構わない」 短くそう言われた。14時間、9時近くの朝会からと考えると、今元の世界では夜の11時ぐらいか。俺は自分の家族とあまり仲は良くない方だった、何というか弟に注意される役ぐらいしか自分に居場所がなかった。そんな俺でも、もし家族が学校や仕事に行ってそのまま行方不明になって、夜遅くになっても帰って来なくなったら心配はするだろう。 むしろ夜の11時とは、図らずともちょうど心配を誘う時間だ。もう捜索願いとか出されてんのかな、いやそれは気が早過ぎだろう、でもクラス全員で消えたんだから警察とかが動いてもおかしくないなやもしれない。結構な難事件になること間違いないだろう、なにしろ異世界に飛ばされたんだから手の施し用がない。 「そ、その……やっぱり家族に会うことは出来ないんですか?」 「言い切ってしまうとできない。ワシの魔術 を持ってしても難しい……すまないな、いきなりこの世界に連れてきてしまって。改めて申し訳なかった」 前から思っていたけど、ベルトルトさんは悪くないとかでもすぐ謝るよな。この世界を救えるのは俺たちだけだと判断してくれたから、こうして俺たちは勇者になったわけだ。なんだかちょっと前の俺を見えるみたいで、もどかしいようなそうでもないような。 次の話は楽しくなりますようにと、第2の質問を投げかけた。

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