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第124話 第2の質問

俺たち選んだのは第2の質問は、少し足早というか、気が早いものだった。それほどにみんなが薄々楽しみにしていたことでもある。ズバリ、「元の世界に戻ったら、職業の能力はどうなるのか?」。魔法もそうだ、元の世界に戻っても使えるものなのだろうか。 さっきまでの葬式みたいな静かさは払拭できていないけど、顔がワクワクしてるのがバレバレだ。そうだな、元の世界に帰ってもこのチートが通用するなんて夢のようだ。俺だったら確実に無双する。まあ肝心な能力は男を寄せ付けるだけの馬鹿みたいな能力だから、生かすに生かしきれない。電車とか怖くて絶対乗れないもん、いや男に痴漢する阿呆はどこ探してもこのクラスメイト達だけだろうな。 「そういえば、能力については詳しく話していなかったな。結論だけ言えば、その職業は謂わば其方達の能力。元の世界に帰っても使えるものじゃ」 「「「よっしゃー!!!」」」 ここまで気合の入った喜びの声を聞いたのは初めてだ。俺としては複雑だったけれど、魔王倒すなんて偉業をしたのに能力剥奪はちょっとどうかと思うしな。俺としては複雑だけど。どうしよっかな……異世界から帰っても男ハーレムが確定してしまったわけだけど、元の世界に帰るまでに辰巳や仁辺りに護身術習っとこ。 「しかし勿論弊害もある。なにしろ異世界特典がなくなってしまうわけじゃからな」 ベルトルトさん曰く、能力自体は使える。異世界に来ても歩いたり走ったりできるのは、自分自身にその能力が備わっているから。だから与えられた能力はたとへ世界が変わっても使うことはできるんだ。でも異世界特典、つまり能力を強化する特典がなくなっているからある程度の弱体化はあるらしい。 弱体化のバリエーションは千差万別。シンプルに威力が下がるのもあれば、威力はそのままだけど代償が大きくなったりもあり得る。あとはスキル方面での能力の低下もあるらしいが、それでも魔王も魔物もいない世界では不便したりはしないだろう。それがベルトルトさんの会見だった。 「すげー……」 「こんな能力あったら元の世界でスーパースターじゃん」 「魔法使いはマジシャンになれるよな、武闘系は……オリンピック選手?」 「やったな喜助、お前占星術師だから予言者なれるじゃん!」 「あ、ああ……父さんが許可してくれるかはわからないけどね」 弱体化なんて嫌な話はなんなその。全員まだ戻れる見込みもないのにいざ帰ったらだのの話題で大盛り上がりだった。個人的にさっきの話は嬉しかった、主に弱体化するのあたりの話がだ。どうしようめっちゃ嬉しい、最悪全世界の男に尻を狙われることすらも想定していただけに、スキルの弱体化は嬉しすぎるいい報告だった。 今の将来の夢や目標は特にないけど、まあ出来ることなら仁と暮らしていきたいなーとかは思ってる。……でも魅了が弱くなったら仁は俺のこと嫌いになるかも……リーさんがそれはないと言ってくれはしたけど、やっぱりまだ不安だ。そうなってしまったら最終的に1番傷付くのは本気で恋した俺の方だからな。そんな事を考えていると、後ろから仁に肩をポンポンされた。どしたんだろう、こんなタイミングだから1人はしゃいでるもんだと思ったた。 「やったぞ梓。どうやら俺の能力は消えないみたいだ」 「そうだな、お前のサムライの力は凄いからいい事尽くめだし。だけど喧嘩には使うなよ?」 嬉しそうな表情を隠す事なく、キラキラした目を見せている仁。こんな素直で人の良さそうな顔できるんだから、喧嘩なんかしてたらもったいないと言うのも付属して言うと、仁は深く頷いてくれた。 「わかってる。この力で俺は梓を守る。もう誰も殴ったりしねえよ、正当防衛と梓を守ることはするけどな」 「あ、ありがとう」 「……この力で俺は、警察官になるよ」 ん? ちょっと待て。いまとんでもないこと聞いた気がする、まさかと思って聞き返してみた。 「俺は警察官になって、今まで傷つけてきた分人々や家族を守る。勿論、その中に梓も入ってるよ」 「その、人々のところに?」 「いや家族のところに」 「……そうですか」 さっき魅了弱くなったら嫌いになるかもと心配していた数分前の俺よ、安心して数分後を迎えるといい。そんな弱体化の件よりも、安心する話をしたところで、仁の後ろに何やら気配を感じた。明だった、忍者の気配わかるとか俺もだいぶ成長したな。 「すげー真田お前公務員なる気かよ」 「そうだよ。俺はそのあれだよ、工作員? になるんだよ」 「なるな真逆の存在だぞ」 そんなわけで、これから散々公務員になる気かよと笑われる仁。怒る気持ちを抑えて、暴力などをしないように耐えるその姿を見た。俺も早とちりながら、将来を、優しい仁との将来を考えてしまった。

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