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第127話 触手
「言っとくけど、僕の触手達は10本じゃないからね。まあ大元は10本で間違い無いけど、他の奴らは下っ端だよ。君の名前は……梓だよね。梓は下っ端触手で拘束できるから問題ないよね」
畜生。俺にもうちびっと筋力があれば、こんなもの違ってやったのに。しかも俺に気を遣ってんのか知らねえけど、大雨に濡れないように少し上の空中に幕を貼られた。これで濡れずに済むよね感謝してもいいよとかほざきやがって、大きなお世話だ。
そうこうしてると、いよいよ触手が服の中に入って、体を弄り始めた。意思があるのかこれもイカ野郎の仕業なのかは知らないが、ちゃんといい場所をわかってる。2つの触手が迷わず乳首を責めだしたのは流石に驚いた。メイド服つまり下半身が布巻いてるだけの超低装備だから、てっきり下半身に来ると思っていただけに、いきなりそこかよと容赦のなさを噛み締めることとなる。それでも耐えてみせるけど。
「気持ち良くなったらすぐに言うんだよ、なんなら今言ってもいいよ。そうだよね、この僕にこんな事されるなんて国宝級の悦び。本来ならめんどくさいけど今回は特別に許す、歓喜し泣き喚く権利をあげよう」
「誰がやるかイカ野郎! うぅ、ふ……そんな権利押し返してやらぁ!」
「うーん……せっかくこんなに可愛いのに勿体ないな。素直になったらもっと妃に相応しいのに、第一この世界の海が手に入るって言ってんのにどうして嫌がるのさ?」
やばい、声が出てしまう。こんな情けない声出したくない、特にコイツの目の前では絶対に。身体がビクビクと感じていて仕方がないが、まだしゃべる事が出来る。お前みたいなガキにはわからねえだろうけどな、……俺にはもう好きな人がいるんだよ、嫁探しなら他所を当たってくれ。
「餓鬼じゃないよ、キミと同い年さ! 好きな人……? この僕に言い寄られてもまだそいつが好きだなんて、ずいぶん我儘だね」
「我儘はどっちだよ、同い年だろうとガキはガキだ! お前なんてただ偉いだけの赤ちゃんだ。実際お前ば部下に任せて何もしていない、下を見てみろ、お前のために戦ってるクラーケン達がどんどん倒されてる! 《《自分のために頑張ってくれてる人》》の事見えてないなんて、同情するぜ」
まあ自分も一時期そんな感じだったけどな。でもこのイカ野郎は、俺を軽く超えている。感謝の気持ちはもちろん抱いていないのは気が付いてないだけ、それ以上にまずいのは、自分以外を全て下等だと見下しているところだ。最初から変だと思っていた違和感はここでハッキリした。
コイツは俺の方が好きなようだが、妃にしてやるだの権利をあげようだの、上から目線にも限度があるだろう。多分イカ野郎にとって他人ってんのは、何かをしてくれる存在でしかないのだろう。今までそんな人間や魔物としか出会うことができなかったのは不幸というべき悲劇だが、それでも人をこんな目に合わせてもいい理由にはならないってもんだ。
「ふーん。わかった、もう手加減しない。身体は綺麗なままで、でも心はズッタズタ。いいね。今のキミにはそれが一番お似合いだ」
どうやら地雷を踏んでしまったようだ、目に見えていたものとは言え、やはり不安が先行してしまう。でも大丈夫だ。俺は魔王からの責めにも耐えられた実績がある。触手が初めてとはいえ、なんかもうなるようになれと言うか、なんとかなるぜの精神だ。これを俗に精神論という。
「おら来いよ。ビビってんのか、ひゃあ!」
「誰がビビってるって? 徹底的に壊してやるよ、イキまくれ」
今まで手加減していたのか、おざなりだった下半身の責めが急に強化された。いきなり陰茎を触手で弄られた時は、肩どころか身体で全体がぶっ飛ぶような気がした。ヌメヌメした触手は思ったよりも器用かつテクニシャンな動きで遂に体全体を覆い尽くした。
「くぅ……や、めろ! ああ、いやぁ♡……気持ち悪い、、」
「気持ちよさそうだけど? 一思いに堕とすなんてしないよ。四肢を落とすみたいに、ゆっくりと気持ちいい事をして、プライドをこそげ落としていく。今決めた事だから」
やっぱコイツクソだな。そんな性格じゃあ一生奥さんなんて出来ねえよ、そう思いつつ、俺は精神崩壊いいぜ来いよな勢いで覚悟を決めた。
「あーずーさー!!! 助けに来たぜ!」
……ああごめん。精神崩壊はもうちょっとと言うか、無くなりそうだ。
「ん? オマエは?」
「真田仁。梓の彼氏、そして婚約者だ!」
彼氏から婚約者に昇格していた(俺は知らんかった)仁は、俺の元まで飛んできた。イカ野郎みたいに飄々と立つのではなく、必死に俺のところまで駆け上がってきた仁を見て、ゆっくりと手を伸ばした。
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