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第136話 体質悪化してない?
その男の人の胴体の中心、腰の下、太ももの上、臀部の前、ここは俗に股間と呼よばれる生殖器官が備わっている人体の急所があるのだけれど、その男の急所はどういうわけか膨れ上がっていた。理解するのに時間がかかり過ぎて論文のような、説明文のような言い回しになってしまった。
なんでこんなことになってるのかわからない、もっと順を追って説明してくれと言われるがまたもだが、俺は至極真面目に順を追っている。飛躍しすぎて俺自身が理解出来ずに暫しの間放心していたが、今なんとかありのままを伝えることに成功した。
「ご、ごめんなさい、斬首します……」
「いやいや、待ってください!」
神に欺いてしまった神父のような、それぐらいに使命感を感じる声で自殺宣言されてしまった。当然止めるほかない上に、罪悪感に塗れた顔を見るのはとても辛かった。多分原因は俺にあるんだよ、もっというと多分スキルのせいだ。
皇子様が魅了にかからないもんですっかり油断していた。そうだよな、皇子様やタマモは王族だったら獣人な上に子供だったり、兎に角普通じゃないから例外に決まってるんだ。いってことは俺は応援してくれる人に握手は勿論、挨拶すらも許されないってことか? それはいくらなんでもちょっと嫌だなぁ……
「やばい、俺もなっちまった……」
「勇者様に勃起するなんて、神の裁きが、」
「俺も腹を切らねえと」
国民が揃いも揃って訓練され過ぎている、確かに股間をよく見れば全員が勃起している事はわかる、でも懺悔のために腹や首を切ろうという発想にはならないはずだ。いやほんとになんでそうなった。そんなに勃起が嫌なら俺が今からでも全員分のチンコから搾り取って……いやいや俺もどうかしてるな、男に掘られすぎて倫理観が破壊しかけている。
しかしこう勃起チンコに囲まれるとゾクっとしてしまうこの性が憎らしい。冷静に考えて淫乱体質のせいだし一刻も早くその場をさるべきなのだけど、この快楽は中々抗い難い。全員罪の意識に苛まれつつも、耐え難い欲情のせいか熱の篭った目で俺のことをチラチラと見てくる。それだけでも十分に開発された俺にとっては快楽である。
「その、もしいいなら……ちょっとだけなら、ヌいてあげてもいいけど」
「勇者様!?」
「そ、そんな恐れ多いです……」
そんなこと言って心綺麗なアピールしようとしているが、実際俺を見るその目は欲に染まりきっている。それがたまらなく嬉しい。俺を犯すことを考えながらも踏み切れないその姿を見ると、期待に応えてあげなくてはと言った斜め上の責任感が生じてくる。相変わらずエロいスイッチが入るとどうにもならないと己の心の中でため息をついた。
「そんなこと言うなよ、力足らずなこんな俺でも勇者なんだ。人を助ける事ぐらいはしてやりたいんだよ」
異世界中を本気で探し回っても俺しか納得しないような言い訳を作り出してしまった。当然それで納得できるような人間はここにはおらず、まだ遠慮されている。……ここまで焦らされたら余計に昂ってしまうと言うものだ。目の前にいるさっき俺が起こした男の人、おそらく俺より幾つか年上おそらく20代の可哀想な彼に首に、腕を絡ませた。
「え、……え!? 勇者様、いかがなさいました!? お、お辞めください!」
「うっせー黙って搾り取られてろ。心配すんな、こう見えて名器だと思ってる。こんな使用感のない童貞丸出しの弱々チンコなんてヒーヒー言わせてやるから」
恥も何もない。頭の中がチンコとセックスでいっぱいの俺は、こうやって誘った後の男の人の初々しい反応もご馳走だ。耳までタコのように赤くしたその姿に敵うものはいないと思う。実際に人混みを掻き分けてやってきた仁が俺を横抱きにするまで、俺は外の視線なんて眼中になかったからな。
「ふぇ? じん?」
「ちょっとオイタが過ぎるぜ。やっぱりいつ発情するかわからない梓を1人にすんのはダメだな、まあこれからはちゃんと見張りをつけるから安心しろ」
お姫様抱っこの体勢、最初は恥ずかしくって仕方がなかったそれも今となっては慣れ切ってしまった。もう大丈夫と言う安心感によってすやすやと眠ってしまいそうになる程には。クラクラとした意識の中で、仁がさっきの可哀想な被害者の男の人に話しかけているのが見えた。というよりそれが最後だった。
「おいそこの野郎、大丈夫か?」
「は、はい……貴方は勇者様のお一人で?」
「ああ。あとはこの俺、梓の彼氏である俺に任せとけや」
いきなりの告白に響めきが隠しきれない港街を再び割るように突き進んで行く仁、俺を抱いてるのにスピードが変わらん、どうなってんだよ。そのまま街を混乱に陥れてしまった(ほぼ絶対俺のせい)まま、全員で城まで逃げるように向かった。
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