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第137話 これは恥ずかしいやつ

「すいませんでした、斬首します」 「あ、梓殿、お気を確かに!」 城に入れてもらい、一息ついた俺が発した第一声がこれだ。罪悪感で斬首どころかギロチンにかけてもいいですというと、そんな惨殺器具は我が国にありませんと斜め上の言い返しを食らった。客室だろうか、めちゃくちゃ綺麗なthe和風ないい所、明日明後日で国を出て行く俺達には豪勢過ぎる気がしないでもない。そして今、クラスの連中は城探検に、仁はタマモと遊んでてこの部屋にはいない。詰まるところ俺と皇子様だけだ。 俺は全く警戒していない、完璧に油断していると言った事はないけど、皇子様は信頼できるかなと思っている。あの仁ですら皇子は大丈夫っぽいと言わしめるぐらいだから、多分いけるだろう。と言うより、ヒノマルの一般人や半分人外のタマモはともかくとして、異世界特典もない皇子様がなんで俺の魅了にかからないのかが不思議でならん。こういうのって聞いておいた方がいいよな、気がついてないならそれで充分だ。大事なのは強固な信頼を作る事だ。 「そ、それですか……私は小さな頃から武道魔術全てを叩き込まれました。雪降るこの地方での修行は決して楽なものではありませんでしたが、お陰で体も心も屈強になれました」 「えっと、つまり……」 「平たく申し上げますと、気合でなんとかねじ伏せたのです」 想像を遥かに超えるパワープレイしてた。流石は和の国、正統派な戦い方で感動を通り越してそんな事あるのかと混乱してしまう。まあ信頼できることには変わりはない、そのお陰でこうして俺は平気な顔して話が出来るわけだ。 「初めて梓殿を見た時は驚きました、流石は世界を救う勇者のお一人、何という魅力と魅了スキルをお持ちなのだろうと」 「す、すみません」 「いえいえ、褒めているのですよ。しかし私の部下はタマモを除いて一般人です、魅了により梓殿を傷付けるわけにはいかないと、ヒノマルに着くまで隣に居させていただきました」 なるほど。だから皇子様は真っ先に俺の隣に来たのか、それならそうと言ってくれればよかったのに。で、港で俺達を城に連れて行くための手筈をしていたら俺を見失って、そんであんな惨劇になったということらしい。この人皇子の鏡過ぎる、俺が弟を思い出してうつつを抜かしていたり油断して馬鹿やってる間にもそんな事を考えてくれていたのか。昼間だから酒飲んで、室内でタバコ吸うどこぞの強国の未婚王様も見習って欲しい。 それに比べて俺どうよ? あれだぞアレ。やっぱりここにいたら迷惑になるからさっさとコグダム都に向かった方がいいな。コグダム都はどうやって行くのか、どんな場所なのか、もう一つ聞きたいお肉は美味しいのか。お肉じゃなくても美味しい食べものはあるのか。しかし皇子様はなんというか、物凄くかっこいよく物思いに耽っている。日本語って難しいな、ありのままを伝えても伝わりにくいんだ。 「……しかし、やはり梓さんの魅了は耐え難いものがありますね」 ……嫌な予感がする。歴戦とまではいかないが経験はかなりあるこの俺はそこら辺詳しいんだ、めちゃくちゃ嫌な予感がする。後ずさろうとしていると、さっと手を掴まれた、流石武道を習ってるだけあって動きがいい。でもその凄さ今はいらない。 「その力により、今までクラーケンに襲われるだけではない、色々な苦労があったでしょう……なにせこんなに可愛いのですから」 顔がいい。顔面が東大レベル。魔王はハーバード大学だし、イカ野郎もその附属学校レベルにはいるからまだあいつらの方が上だけど、性格云々も全部ごちゃ混ぜにすれば1番はこの人だ。リーさん達とは違う和風イケメンっていうのかな、綺麗というより美しいが似合うその顔の良さがいい。今の俺には仁がいるからそういうのは間に合ってるのだけど…… 「お、俺、心に決めた人がいるんで……」 「そうでしょうね、梓殿は恋をしている顔です。しかし、この魅了の前ではそんなもの気にする事なくたくさん組み敷かれてきた事でしょう」 よくお分かりで。あの快感は今思い出しても、我ながらよくもまあ腰が粉砕しなかったなと感心するレベルで掘られてきた、輪姦も触手責めも食らった。……皇子様に襲われても気持ちよくなるかな、少なくとも優しくはしてくれそうだ。 「えっと、優しくして下さいね?」 流れに任せて目を固くつむったが、待ち構えていた快感が来る事はなかった。 「……すみません、なにを言ってるのですか?」 「へ?」 「私は梓殿にスキルを抑える修行を提案しようと思っていたのですが……」 これヤバいやつだ。俺多分一人で舞い上がって頭ん中で暴走してたやつだ。 「ごめんなさい、斬首します」 「何故ゆえに!?」 少し前に聞いたことあるような会話をもう一度してしまった。

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