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第163話 俺の彼氏と弟が修羅場すぎる

……やばい意識がなくなってたみたいだ。なんというか、久々にちゃんとしたセックスしたから身体が痛い。ちゃっかり中にも出されたってそれは俺が頼んだことだった。 「大丈夫か? ……羽原から話は聞いてる、レイプじゃないんだよな?」 「あ、仁……うん。レイプじゃない、ちゃんと俺が誘ったし中に出すのも俺の命令だ。ごめんな、俺ってばどうしようもない淫乱だからさ、また浮気した」 仁がいる。発情体質は俺の精神にまで多大な影響を及ぼす、どれくらい及ぼすのかと言うとちょっと筋トレする程度で後はインドアな陰キャの俺が、男好きなド淫乱に豹変するくらいには及ぼす。言い訳のつもりはない……いやごめん言い訳させて、我が身が可愛いからいくらでも弁解したい。元々浮気癖なんてないし一途なところもある、発情のせいで誰彼構わず掘られたがる淫乱になるだけだ。 今でも不思議だ、なんで仁は恋人がこんなんでも愛してくれるのだろうと考えてしまう、そして答えは出ない。いっそ一度でも他の男を誘うだなんて最低だと言ってくれさえすれば、罪悪感とか絶望感が出て身が引き締まると言うものだろうに。 「気にすんなよ、お前は悪くない。皇子さんが言ってたぜ、その体質を抑えるためのトレーニングを考えるって。一緒に頑張ろうな」 「あ、うん……ありがとう」 やっぱりこう言うやつだ。そんな風に許し続けるから何度も何度も浮気させるんだよ、間違っても俺がいえたことではないけどな。体を動かすのが辛くて上半身だけを起こしたら、そっと抱きしめられる。愛おしむ様に頭を撫でられてはなすがままに身を任せるしかない。 見てみると俺が寝る部屋、蓮くんか薫、もしくは両方が運んでくれたのだろう。晴雄は大丈夫かな、まだ蓮くんのままなんかな、許可が降りているらしいけどそれでも結構酷使させてしまったから謝りたい。ついでに射精出来ない射精不全だってことで悩んでたけどちゃんとたっぷり中に出せてたぞとも言いたい。男にとって大事なそれが機能したんだ、きっと安心するに違いない。 「そういやさ、お前の弟? の話なんだけど……」 「蓮くんに会ったのか? その……まだ晴雄に戻ってない?」 「おう。今は羽原と一緒に喜助やベルトルトさん達の取り違え受けてる」 「うん、取調べな」 なるほどつまりは無事クラス中に知れ渡ったのか。こう言ったことはいち早く報告するに限る、やましい事はあるけども元々は蓮くんのことで色々悩んでたこれに原因があるわけだし、それにベルトルトさんのことだ、手酷く扱われる事はないだろう。 無理するなと止めに入る声を無視して、体に鞭打ち部屋を出ようとする。弟の話だ、お兄ちゃんが話に出て何がいけない。むしろ撒いた種ぐらい解決させてくれ。すると何やら覚悟が決まった顔をし出した仁に肩をぐっと掴まれた。痛い。でもカッコいい、思えばベタ惚れ具合は引けを取らない。 「行くなよ梓……」 「な、なんで」 「こんな事言ったら傷付くかなって思って一応我慢しといたけど……限界だ、今すぐ言いたい」 よく聞くといい声だよな。凄んでたり乱暴な時にはわからない、優しい時だけに聞ける耳障りのいいこの声が好きだ。ついつい気を緩めてしまう、何されてもこの声があるだけでしょうがないなって言えるぐらいにはメロメロだ。どうしたんだと事実上の許可出しをすると、いつもとは打って変わって重そうなその口を開いた。 「蓮っつうの、お前の弟。アイツ……マジで可愛くない!」 「……ん? ごめん、言ってる意味がよくわからない」 怒ってるわけではない、いや自分の弟を可愛くないと言われて悲しさはあるけど、そもそももう蓮くんは可愛いなんて言われるような年頃ではないだろう。でも仁の可愛いの方向性は俺が今考えているそれとは少し違う気がして、どういう意味での可愛くないなんだ? 「アイツいきなり俺の事兄貴の彼氏か! って怒鳴ったと思えば急にオレの兄貴に手ェ出すんじゃあねえぞとか抜かしやがる」 「な、なるほど。それに関しては俺から何とか言っとくよ」 「それだけだと思ったか。その後もお前には兄貴を幸せにできないから別れろとか言ってきやがって」 「つまり……喧嘩したのか?」 「まあ、そんな所だな。結局あの後梓のいい所言い合ってネタが尽きたら負けの勝負を羽原審判にしてずっとやってたら……時雨達が来たからそこまでにしといとやった」 よかった。何がよかったのかというと殴り合いを始めとした武力行使が行われなかったことに関しての良かっただ。最近はかなり自重してくれているとはいえ、頭に血が昇ると口が悪くなったり最悪手が出る事も珍しくなかったのに、よくぞここまで成長したなと感動してしまう。やっぱりこの世界に来てから間違いなく仁は良い方向に進んでいるなと思う、もっと更生するためならいくらでも力を貸すつもりだ。 「おい待てよ、何抱きしめあってんだ。兄貴もそんなケダモノに近寄るな」 ……前方不注意ならぬ後方不注意。いつの間に開いていた襖から晴雄、ではなくその身体の蓮くんが入ってきた。背後にはクラスメイト達がゾロゾロと大所帯で来ている。抱きしめ合うってほどじゃないけど、仁に肩を抱かれているからまあ似たようなもんだ、恥ずかしい。 「アァ?」 「んだよ、筋肉ゴリラが」 今日ここで初めて見た、これがモノホンの修羅場なんだ。

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