178 / 206

第176話 答え

「あ、そ、その……ベルトルトさんに繋がったぞ!」 嫌すぎる空気のなか、水晶に全力で祈りを捧げていた喜助がようやく声を上げた。その水晶玉には少しだけ寝起き感のあるベルトルトさんの姿が。 「……話は聞いたぞ。……巳陽梓や、こちらに来なさい」 すみません……今俺は、貴方が被っている水玉模様の可愛いナイトキャップで笑える気分じゃないのです。兎に角水晶の目の前に座った、魔術師そして召喚士である人に今の俺はどう見えているのだろう、呪いに汚染された可哀想な青年か、勇者に成り損ねた哀れな踊り子に見えるか。 どんな事を言われてもいいと腹を括り、目を合わせ続けた。未来なんて想像するだけで頭がクラクラしたけどそんなんいつものことだと虚勢をはる。しばらくしてようやく動きがあると思いきや……静かに涙を流し始めたもんだから、少しギョッとしてしまった。 「すまない……辛い目に合わせたな。その呪いはわしの手には負えない。命を対価にする覚悟じゃったが、命を賭しても焼け石に水じゃ」 そ、そんな……別に無理して解いてもらおうなんてのは毛頭ないし、命を賭けるだなんて勿体ない。まあだからって我が身が可愛いくないわけじゃないけど、そこまでしてもらうほど自分に価値を見出せていない。泣く必要なんてないんだ。元々俺が撒いた種を魔王が育てた結果こうなってしまったのだから、ちゃんと責任は取るつもりだ。 ベルトルトさん曰く、呪いというのはかけた人より強い魔力を持つものがあると解けるらしい……まあそんな人は存在しないのだけど。ここにいるチート集団の魔力を全部使っても10日以上かけてここまで丹念に込まれた闇の力を解くのは不可能に近い。 確かに魔王を殺せば間違いなくこの呪いは解ける、指輪も外れるようになる。……そして最後の手段が呪いの穴を埋める事だ、呪いってのはかける人の満ち足りない心や切なる願望で成り立つ、謂わば起源は《《満ち足りない心》》。だからこそ全ての呪いには1つだけ穴があり、それを見つければいくら伝説級の魔術師の呪いだとしても、魔力がゼロに近い人間でも解くことが可能らしい。しかし長年魔術に携わって来たベルトルトさんでも、その方法で呪いを解いた人間は見たことがないらしい。 「……大丈夫です、ちゃんと尻拭いはしますし誰にも迷惑はかけません」 キッパリと言い切る。正直怖くてたまらないし声も体も震えている、でも、ちゃんと乗り越えてみせる。 ……魔王は俺が殺す。 「へぇー勇敢だね、見直しちゃった」 全員いろんな顔をしていた。俺の言葉に慌てて拒否して自分が殺すとまで言ってくれる人もいれば、これは梓の問題だと選択を尊重してくれる人もいた。どうなるのかわからずに震える人間もいたし、別のこと考えてるのか宙を見ている呑気な奴もいる。まさに阿鼻叫喚バージョンの十人十色だ。 「だがどうする気だ? 無力化なら俺たちで頑張れば行けるかもしれない。だが……言い方は悪いが非力な梓じゃ弱った魔王にもトドメを刺すことは難しい……」 そうだ、総司に全部言われたけどそれが問題なんだ。魔王の耐久力がわからない今、ナイフで心臓ブッさすと言った古典的な手法が通用するのか怪しい。でも何よりも俺のためにクラスのみんなを人殺しにはしたくない。魔王が人かはさておいて、殺すのは違うだろうと思う、実際こんなことになるまで俺たちの目的はせいぜい別の世界に追い出したり、もうこんなことさせないと改心させるための退治だったのだから。 「……いいぜ。ならオレが首切ってやるよ」 答えが見つからずに沈黙していると、最後方から名乗りが上がった。仁だ。覚悟が決まった顔、……そんなものを見せられてもやらせるわけにはいかない。これは俺の責任だし、そんな理由で再び仁には誰かを傷つけるような事をしないでほしい。 「お、俺の問題だから……俺がやるよ。もう意味のない暴力は卒業したいだろ? 警察官になるんだから、そんなこと言っちゃダメ____」 「梓の問題はオレの問題だ。こちとら大好きで大好きで、結婚だって考えてる恋人人質に取られてんだぞ。どこが意味のない暴力なんだよ。あとオレが成りたいのはただの警察官じゃない、梓を守る警察官だ!」 食い気味に反論されてしまった。しかし言ってる事はカッコいい、間違ってる間違ってないは目を瞑ってかっこいいと思ってしまう。いつもの語感しかあっていない押韻はもちろんのこと、言葉間違えもない、ちゃんとかっこいい俺の彼氏だ。 「お前たち2人には辛い思いをさせてしまう……いざとなったら全責任をワシがおい、皆が見守る中公開処刑も考えておる」 重く捉えてくださるベルトルトさんを心配しつつも、とりあえず俺たちの答えは決まった。50日以内に魔王の城まで行って、全員で無力化させた後は俺と仁がトドメを刺す。 ……誰がなんと言おうと、これだけは守ってみせる。

ともだちにシェアしよう!