本当に大丈夫なのかと心配する喜助が眩しすぎて自分がそこらへんの床に落ちているゴミレベルの誇りしか持ち合わせていない人間に思えて仕方がない。いやらしいこと思い出しては素直に昂ってしまう穢れた心を鎮めて、綺麗な喜助の話を聞くとしよう。 「その、わざわざ来てもらってありがとな。なんかようか？」 「いや別に大したようではないけれど……まだ君には感謝を伝えられていなくてね」 はて。喜助に感謝をされるほどの大義を行なった覚えはないけれど。そもそもの話いつもエロいことしかしてない俺を仲間だと言いながら、こういうピンチになっても見捨てず、いつも通り否いつも以上に気を引き締めてくれている喜助に対して俺は感謝をするべきだ。といってもそこはさすが喜助というか、まだ俺に感謝しようとしている。 「僕は梓に感謝しているよ、君がいたから頑張れた」 「そ、そんなふうに言われても……？」 「少し照れくさい気もするけど、なんというか今この異世界転移の状況が一番リーダーをしている感触がするよ」 うーん、確かに今まで元の世界にいた時もリーダーって感じはあったけど、それとはまた違う何かがあるよな。作業のようにこなしてないっていうんかな……どういえばいいんだろう。 「なんていうかその、元の世界にいた時の僕とは随分性格が違うと思っただろう？」 「えっと、そりゃまあ思うかな」 鋭い。さすが占星術師というか、やはり占星術師と言うべきか。倫理観云々を全て無くして容赦なく力を振るえばベルやホロケウさんみたいに人の心を読むことができるだけのことはある。もしそうなってしまいベルのように絶望と失望を重なるようなことがあったら……深く考えるのはよそう。ある意味俺より危ない状況にあるといっても過言じゃないから。 「自分でも不思議なんだ、なんであんなに何も感じなかったんだろうって……別に感情が無いとかそう言うんじゃないよ。ただ、あくまで全部が他人事で僕だけのけ者みたいな……とにかく寂しかった」 そうそれだ。俺が感じていた違和感の正体はそれだった。漸く喜助が足並みを揃えてくれたみたいな……とにかく元の世界で話した時よりもよりも目と顔が合ってる感触がする。 「今はあの……梓のこと考えるだけで頑張るぞって気分になれるんだ。ずいぶん前の話になるけど、グルーデンにいた時君が僕の天使だといったのは覚えてる？」 「あーそういやいってたな。その後なんやかんやあってすっかり忘れてたけど、そんな臭い台詞が似合うようになっちゃって……」 もちろんいい意味で、褒め言葉のつもりだ。好みによって良し悪しだけれど少なくとも俺はこっちの喜助の方が好きだ、こういうらしい台詞も言う人間によって本当にいい言葉になる。特に喜助みたいに正直で真面目で真っ直ぐな人間はちょっと痛いぐらいがいい、っというよりあってもその性格のおかげで多少の痛さは問題ではなくなる。それを究極まで極振りした人間を俺は知っている、咎目雄星だ、あそこまで行ったら面白いの部類に入りがちだけど。 しかし当の本人は恥ずかしいのかモジモジし始める。そんなに顔を赤くして、いつのもピュアの極みな性分とは正反対にエロくなっている……何冷静に分析してんだよ。やっぱしこの部屋は色々とまずいな。 「意識してみるとちょっと照れくさいけど、それでも今尚僕の天使は梓だから。絶対に守ってみせる、約束だ」 「お、おう……ありがとう」 そんな赤くてエロい顔でなにカッコいいこと言うてんねんと脳内でツッコミが入る。俺と同じぐらいの身長だし身体も俺と同じぐらいほっそりとしてるけど、日頃散歩なんかをしているのか俺よりも日に焼けている肌は、ただ色白なだけの俺とは違った種類の官能的なものを感じる。……だからこんなエロいこと考えるな俺！ 「えっと、話は変わるけれど……少しだけ休んだ方がいいのでは？」 さっきまでの順調な様子から一転、急に真面目な顔をされた。ひょっとして１人で発情してんのがバレた？ 「な、なんで……？」 「気の所為ならいいが、少し気分が悪そうだぞ。頬も赤い、ひょっとして熱があるんじゃ」 「いやいや大丈夫！　そんなもんじゃ無いから」 「失礼、少し熱を測るよ」 そう言いながら手を俺のでこに触れさせる。少し熱いのではと更に心配されるが、すまないそういう意味で熱いんじゃあないんだ。でも言えねえ発情してるから身体熱いんですとか言えねえ。 あー……こう近くで見ると喜助ってヒョロイだけじゃなくてちゃんと基本的な筋肉はついてるんだな、肉もちゃんとあるし凄えバランスいい体してる。仁みたいにめちゃくちゃ筋肉あった方が俺好みだけど、たまにはこういう年相応な美丈夫と悪くない……マジで一回喜助に殴られるべきだな。 「＿＿すまない少し席を開けよう、その……気がつかなかったよ」 必死に自分の煩悩と戦っている時にそんなこと言われたら、気付かれたのかと思うだろう。素っ頓狂な声が出ていると、喜助は顔を赤くしながら俺の下を指差した。 下半身、すっかり慣れてしまったスカートを履いたそこは、何やらもっこりしている。コレはそう勃起だ。…………マジに勃起だ。 「あの、その……」 「…………」 弁解の余地がない俺、顔を赤くしている喜助、そして勃起するチンコ。気が付けば後の快感ばかりを追うもんだから、随分とご無沙汰になってしまったそれは久々の出番だぜと張り切っている。 ……でも今回もネコになりそうだ。耐え切れなくなったのか後ろを向いて出て行こうとする喜助を見て、無意識に舌なめずりをした。