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第81話
「マレウス、おぬしは分かりやすい奴じゃの」
リリアと談話室で過ごしていた休日にそう僕に言った。
「……それは僕を単純と言いたいのか、リリア」
「欠点として言うならばそうだのう。じゃかな、わしはおぬしの長所として捉えておるよ」
リリアは笑顔だ。
「妖精族は子供っぽくワガママじゃろう。おぬしはわしの育て方が良かったからかの、執着心や独占欲があまりなかった。妖精族らしくない妖精族じゃと感じていた」
リリアはそう話していた最中にシルバーを呼び、『赤いインクが切れてしまっての。わしの代わりにセベクとサムのところで買ってきてくれぬじゃろうか』と遣いを頼んでいた。
シルバーとセベクは購買部に買い物をするため寮をあとにしてから、リリアは会話を再開させた。
「マレウスよ、おぬしわしに執着しておったな」
「なんのことだ」
「おぬしが情緒不安定になった頃、わしはシルバーを息子に育て始めた頃と重なるのじゃ。……まさか親離れできずにいたとは。わしに執着していると思わなかったの」
かっかっかとリリアは声に出して笑っていた。
「……だからなんだと言うのだ」
今更なんなのだ、そう僕は思っていた。
一瞬にしてリリアは真剣な表情で頭を下げていた。
「おぬしの側を離れるつもりなどないが、一瞬でも寂しい思いをさせて悪かった」
まさかリリアから謝罪されると思っていなかった僕は言葉に詰まってしまった。
「……っ」
「シルバーを殺めたくなったじゃろうし、それをおぬしはよく耐えてくれた。わしは感謝しているのじゃ」
リリアは動かない僕の手を握り微笑んでいた。
それは僕が幼い頃によく見ていたリリアの親の顔だった。
「っ……ふん、リリアなど居なくても僕は次期王としてやっていける」
「そうじゃな。じゃから、わしはマレウスとレオナの恋のキューピッドだのう。よう感謝せい」
どうやらリリアは僕とキングスカラーが相思相愛だと思っているらしかった。
「そのことだが、……僕はキングスカラーから良い返事を貰っていない」
するとリリアは間を入れてから僕の身体を揺すった。
「何故じゃ?毎晩のようにレオナはおぬしの部屋に通っておろう!!それとも……マレウスの魅力はわしが思っているよりないということかっ?!」
「口説いてもはぐらかされてしまう。身体の相性はとてもいいのだがな」
「王族同士がセフレなど、国際問題じゃ!!こうしてはおれぬ、マレウスさっさとレオナを口説いてこぬかっ」
そう言ってリリアは僕を寮から追い出した。
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