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第107話
「今日のお前は酷く怯えていたようだが。……どうかしたのか」
マレウスは俺の腰を抱き身を寄せて来たが、俺は両腕を立てて身体を起こした。
「別になんでもねぇよ」
「なんでもなかったら、お前は行為の最中に涙を流さないだろう」
「そりゃ、涙が出るほど悦かったってことだろう」
「……そうなのか」
今日は俺が兄貴への想いに気付いてから10年だった。
今俺は兄貴へそんな想いを抱いてはいないが、初めての恋、初めての欲情を感じた感慨深い日だった。
「……」
「キングスカラー、僕はお前が愛おしい」
「俺なんて辞めておけよ」
「僕はお前を諦めることは出来ない」
「オマエは物好きなヤツだな」
俺のこのマレウスへの想いは何なのだろうか。
何故俺はコイツとの関係を経てないのだろう。
これはきっと恋じゃない。
「俺はオマエが気に食わない」
俺は誰も好きになれない。
俺は誰も好きになるのを許されない。
これはきっと恋じゃない。
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