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第3話
「明日、本屋で式場とか載ってるやつ買いに行こー」
「ナナト、ケイコさんのご両親にも挨拶に行かなければいけませんよ」
「あ、そっかぁ。やっぱりスーツ? うーん、手土産は何が良いかなぁ」
「さて……ケイコさんのご両親がお好きなもの……とかですかね? 」
目の前で延々と繰り返される未来の話。楽しそうにはしゃぐ双子に頭が痛くなる。
あれから片足には何故かクローゼットから出てきた、内側にふわふわのついた足枷がつけられた。
足枷からのびる鎖は台所にもお風呂にもトイレにも充分届く長さだ。
「ケイコさん」
急にヨゾラが名前を呼ぶ。ビクリと肩が揺れる。恐る恐るヨゾラの方を見る。
「はい……」
「ご両親の苦手な物とかお好きなものを教えてくださいませんか」
優しく問われたはずなのに、圧迫面接を受けているような気分だ。
「甘いものが好きで……苦手なものは特には……ないと……思います」
絞り出すような小声でなんとか答えると、ヨゾラは優しく微笑み、頷く。
「……だそうですよ、ナナト」
「なーる。じゃあ、駅前のケーキ屋で良くね? 」
怖い、怖い、怖い。
目の前の二人は全く私を見ていない。気分が悪い。
「どーしたの? 怖い顔して。しんどい? 」
ナナトが頭を優しく撫でる。
「少し休憩しましょうか。コーヒーでも淹れましょう」
ヨゾラが立ち上がって、台所へ向かう。ナナトは心配そうな顔でこちらを覗き込む。
「ほらぁ元気出して。ね? 」
今日は金曜日。土曜日に入っていたバイトはヨゾラ先輩が体調不良の私の代わりに行くと店長に連絡してしまっていた。
「三日間だけだよ。きちんとごはんだってあげるし、服だって明日買ってきてあげる」
優しい声でナナトは頭を撫で続ける。そのうちナナトの言葉が少しずつ心に沁みてくる。
ーー大丈夫。たった三日。何もされない。ただ一緒に暮らすだけ。
そう自分に言い聞かせる。
「……わかった。三日間だけ。日曜日の夜には開放して」
「もちろん。ありがと」
ナナトは嬉しそうな顔でぎゅっと抱きしめてくる。花が咲くような笑顔は随分と幼く見える。
「俺、ケイコさんに好きになってもらえるように頑張るよ。だからちゃんと俺の事見ててね」
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