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”
「抑制剤を……」
困惑した様子の白柳に、蘭はぎゅっとしがみついた。手は、にぎりしめたままだ。アルファは、アルファ用抑制剤を携帯している場合がある。それを出す隙を与えないためだ。
「待てないんです。もう、辛くて……」
上目遣いで見上げながら、さりげなく腰を押し付ける。まんざら嘘でもなかった。尻からは、すでにオメガ特有の分泌液が滴っている。躰の奥は、燃えさかるようだ。
「白柳先生、お願いです。指でいいから、慰めてもらえませんか? そうしたら、すぐ治まると思うから……」
「……」
白柳の瞳が揺れる。勝負あったな、と蘭は思った。アルファの体力をもってすれば、容易に蘭を突き飛ばせるはずだ。そうしないのは、欲望に抗えないからだろう。
「……ダメ、ですか? なら、自分で……」
蘭は白柳から離れると、元通り長椅子に横たわった。ベルトを外し、スラックスを膝辺りまで下げる。悩ましげに息を吐きながら、手を下着に潜り込ませた。
――これで、どうだ……?
こっそりと、白柳の様子を盗み見る。ところが白柳は、踵を返すではないか。ドアの方へと向かう彼を、蘭は愕然として見つめた。
――そんな馬鹿な。目の前に、発情したオメガがいるんだぞ? 据え膳を食わない気か……?
次なる手を、考えねば。蘭の頭は、フル回転し始めた。その時、カチャリという音が耳に飛び込んできた。見れば白柳は、ドアを施錠していた。やおら、こちらを振り返る。
「指でいいのか?」
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