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 蘭は今年、二十八になる。発情期が滅多に来ないとはいえ、それなりに男性関係は、これまであった。中には、アルファもいた。だが、目の前の白柳の男根は、これまで見たこともないほど大きかったのだ。太く長く、血管を浮き上がらせていきり立っている。蘭は、一瞬目的を忘れて、生唾を飲んだ。 「――あっ……」  油断した隙に、白柳は蘭の脚を大きく割り開いた。いきなり先端を押し当てられて、蘭は動揺した。  ――生でする気か……?  発情期のオメガとアルファが交われば、オメガは百パーセントに近い確率で妊娠する。だが本来は、発情誘発剤を使う予定だったから、その危険は想定していなかったのだ。誘発剤とは、単に『発情に近い状態を起こさせる』に過ぎないのである。 「どうした? これが欲しいんだろう?」  白柳が妖艶に微笑む。テレビや講演会での爽やかなイメージからは想像もできない、雄そのものの表情だった。悪くないな、などと思ってしまう。 「ん。早く……」  アフターピルを飲んでおくか、と頭の中で計算しながら、蘭は腰をくねらせた。次の瞬間、白柳は一気に貫いてきた。ずぶずぶと凶器が埋め込まれていく感覚に、蘭は思わずうめいた。これは、演技ではない。 「あっ……、いい、とっても……」 「――っ……、すごい締め付けだ……」  白柳も、軽く眉を寄せる。蘭は、腕を伸ばして、彼の首にすがりついた。うっとりした表情で、頬をすりつける。もっともっと、彼を煽らなければ。蘭なしではいられなくなるように……。 「動くぞ」  言い終わらないうちに、白柳は抽挿を始めた。深く浅く、リズミカルに突いてくる。 「ああっ……、んっ、んんっ……」  よほど経験豊富なのだろうか。白柳の動きは、実に巧みだった。一見傍若無人なのに、ポイントを的確に捉えて、擦り立ててくる。たまらなかった。ともすれば流されそうになるのを必死にこらえて、蘭は脚で彼の腰を挟みつけた。律動に合わせて、自分も腰を揺らす。その時、冷静な声が降ってきた。 「物足りないな」  ――え。

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