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3 毒食らわば皿まで

 翌朝蘭は、妙に早く目を覚ました。陽介との食事の約束が、気になっていたのだ。食事の後は、どうするつもりだろうか。陽介は、実家暮らしだ。ホテルへ行くか、この部屋に上がるかだろう。仮に向こうがその気でなくても、誘い込まなければいけない。  取りあえず、蘭は掃除機をかけ始めた。他に準備すべきことはあるだろうか。夜食でも用意すれば、気が利くと思われるのだろうが。蘭はあいにくの、料理下手である。オメガは家事能力に長けた者が多いが、それは将来、アルファと家庭を持つことを想定しているからだ。仕事一筋できた蘭は、家事は最低限しかできない。  ―― 仕方ない。つまみでも買っておくか……。  ふと思いついて、テレビをつける。すると、朝の情報番組に、今夜まさに会う予定の相手が出演していた。相変わらず爽やかな笑顔で、最近の時事問題について語っている。ベッドの中での雄そのものの彼とは、まるで別人だ。  聞くともなしに、蘭はぼんやり聞いていた。すると女性アナウンサーが、陽介に質問をした。何やら興奮した様子だ。 『今、生涯未婚率に関する話題も飛び出しましたが。ずばり白柳議員には、ご結婚のご予定などはおありでしょうか?』  蘭は、画面に映った陽介の顔を見つめた。すると彼は、にっこりして答えた。 『はい。実は、近々予定しています。何しろ、『運命の番』に出会ったものですから』 「――おい、何だと!?」  蘭は、思わずテレビ画面に向かって怒鳴っていた。

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