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 怒鳴った後で、蘭は我に返った。  ――何で俺が怒る必要がある?  愛人の立場なのは、承知の上ではないか。それにアルファは、何人でも番を作ることができる。陽介のような容姿・地位・財産と全てそろったアルファが、蘭以外に番を作ったとしても、何ら不思議ではない。 『おっと、これは爆弾発言ですね!? ちなみにお相手は、どんな方ですか?』  アナウンサーは、目をギラギラさせて食いついている。陽介は、微笑みながら答えた。 『詳しいことは申せませんが。とても綺麗な、オメガの人です。実は昨日も、結婚の準備に追われていました』  スタジオは、大興奮といった様子だ。蘭は、ますます不愉快になった。  ――昨日忙しいって言ってたのは、仕事だと思ってたのに。そのせいで、俺はほったらかしにされたのかよ……。  そもそも、結婚の予定があるなど、初耳だ。陽介の身辺は稲本に調査してもらったが、そんな情報は入ってこなかった。  ――稲本も、何やってんだよ。そんなだから、他紙に負けるんだよ。  むしゃくしゃした気分を抑えきれない蘭は、スマホを手に取った。半分八つ当たりなのはわかっていたが、稲本に電話をかける。だが彼は、なかなか出なかった。長いコール音の後、ようやく応答したのは、知らない声だった。 「……あれ? 稲本晃也の携帯ですよね?」  怪訝に思った蘭は、確認した。すると電話口からは、困惑したような男の声が返ってきた。 『はい。僕は、稲本の友人です。実はあいつ、昨夜泥酔しちゃいましてね。僕、アパートまで送ったんですけど……。今は、二日酔いで寝てます。あなたは? 伝言を伝えましょうか?』 「……いえ、結構です。ありがとうございました」  いまいち解せないが、蘭は電話を切った。稲本がつぶれるまで飲むなんて、珍しい。心配な気もしたが、こっちもそれどころではない。蘭は、もう一度画面上の陽介をにらみつけた。結婚相手にうつつを抜かしてもらっちゃ困る。こっちに、夢中になってもらわないといけないのだから……。

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