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「そうそう、今後のことなんだけれど」  もう気持ちが切り替わったのか、陽介はテキパキと告げた。 「式はどうする? 挙げるも挙げないも、蘭の判断に任せる」 「え……、でも、挙げないなんて選択肢はあるのか?」  陽介の立場でそんな真似ができるのかと思ったが、彼はけろりとしている。 「この世界でも、皆が皆盛大な式を挙げるわけじゃないぞ? 関係者が多いから、出席者の調整も大変だしな。全員に出席してもらうため、式を五回挙げた、なんて代議士もいる」 「ひえ……」  蘭は絶句した。 「それに、母は出席を拒むだろうしな。だから、したくなければ正直に言ってくれ。……まあ俺としては、綺麗な花嫁を自慢できないのは残念だがな」  蘭は、陽介を軽くこづいた。 「花嫁言うな……。でも、それならお言葉に甘えて、式はなしにしようかな」 「了解だ」  陽介は、あっさりうなずいた。 「でも、これは受け取ってくれ。急いで用意したんだ……」  陽介はいったん部屋を出ると、小箱を携えて戻ってきた。 「――本当に、行動が速いな」  蘭は、思わず言った。番になって、まだ三日だというのに。 「茶化さないで」  陽介が、おもむろに蓋を開ける。全女性の憧れと言っても過言ではない、爽やかなブルーの小箱だ。中には、燦然と輝くダイヤの指輪が収められていた。思わず、ため息が出てしまう。 「結婚指輪は、これから君の意見も聞きながら作らせようと思う。でもこれは、早く贈りたかったから」  陽介が、そっと指輪をはめてくれる。サイズはぴったりで、蘭は感心するというより呆れた。 「指のサイズまで把握してたのかよ……。でも嬉しい。ありがとうな」  珍しく、そんな素直な台詞がこぼれ落ちた。陽介は、一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに抱きしめてきた。ぎゅっと抱き返しながら、蘭はしみじみ思った。どんな形にせよ、自分はこの男と結婚するのだ、と。

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