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”
「――! 失礼しました……!」
悠がうろたえたように、部屋へ戻ろうとする。蘭は慌てて陽介の腕から逃れると、悠を呼び止めた。
「いいから……! ええと、陽介。悠は今日、手伝いに来てくれたんだ」
「お邪魔してます」
悠はぺこりと頭を下げたが、陽介はわずかに眉をひそめただけだった。蘭は、取りなすように彼に話しかけた。
「陽介、お前が空腹ならちょうどいい。今からデリバリーでも取っていいかな? 悠にも食べてってほしいし」
「ええ!? 蘭、そんな気を遣わなくていいよ。二人の邪魔をしちゃ悪いし」
悠は恐縮したが、蘭は陽介に再度ねだった。
「頼むよ。悠は、荷造りから荷ほどきまで助けてくれたんだ。いいだろ?」
「……ああ」
陽介は、不承不承といった様子でうなずいた。
「俺は何でもいい。君らで適当に頼め」
「ありがとう」
蘭はほっとした。遠慮しているのか、悠も希望を言おうとしない。仕方なく蘭は、適当にピザを何種類か注文した。
「じゃあ、食卓の準備でもしておくか。ええと、キッチン用品は、と……」
「あ、それなら僕が出すよ。収納したの、僕だし」
悠は、軽やかにキッチンへと駆け込んでいく。蘭は後を追おうとしたが、陽介に腕をつかまれた。
「蘭。ちょっと来い」
陽介は、強引な仕草で蘭を引っ張っていく。やがて連れてこられたのは、前回案内された衣装部屋だった。ドアを閉めると、陽介は蘭をぎろりと見すえた。
「……何だよ」
「何のために、セキュリティの厳しいマンションにしたと思っている?」
蘭は、きょとんとした。
「……は?」
「むやみに他人を部屋に入れるな、と言ってるんだ」
蘭は、カッとなった。
「他人? 悠は俺の友達だろ。それも、幼なじみの親友だ」
「あいつは信用ならないと言ったはずだ」
陽介の冷たい表情は、変わらなかった。
「蘭。君はもう少し立場をわきまえろ。俺と結婚した以上、もう君も一般人とはいえない。うちの父親には、SPが付いているくらいなんだぞ? そういう家に嫁いだんだから、身辺には警戒してしすぎることはない」
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