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 食事を終えると、悠はそそくさと帰っていった。彼を見送って戻ってくると、陽介はまだ食卓に座っていた。 「ん、どうした? 片付けは俺がしとくから、シャワーでもしてきたら?」 「蘭。ちょっとそこに座れ」  陽介は、静かに言った。おとなしく席に着くと、彼はじっと蘭を見すえた。 「いよいよ結婚生活がスタートするわけだが、君はこれからどうしていくつもりだ? 新聞社は辞めたわけだし、俺の政治活動を手伝うわけでもないだろう。その辺りを、確認しておきたくてな」  蘭が聴講生として大学に籍を置いているのは、形だけだ。陽介は、すでにお見通しのようだった。 「俺としては、何か仕事を持ってほしいが。蘭みたいに有能な人間が、セクハラで辞めさせられたなんて、もったいない話だ。新しい職を紹介してやろうか?」  陽介は、心底蘭に同情している様子だ。嘘をついたことにはやや罪悪感を覚えたが、元々は陽介の父親のせいではないか、と蘭は思い直した。 「……別に、そんなことしてもらわなくていいよ」 「じゃあ何をして過ごすんだ? 暇を持て余して、浮気なんぞされたら困る」  陽介は、大真面目な顔をしている。蘭は呆れた。 「ったく、心配性だな……。浮気なんかしないけど、暇することもしないよ。ちゃんと、主夫業をこなすっての。ほら、レシピだってもらったし」 「俺に食事を作ってくれるのか?」  陽介は一瞬嬉しげな顔をしたが、すぐにまた眉をひそめた。 「家事だけをして過ごすのか? 正直、君が家でおとなしくしているタイプとは、とても思えないんだが」  企みを見抜かれたようで、蘭はひやりとした。 

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